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遠い剣ヶ峰~トラバ-スで進退窮まる

1週間後に控えた、第7回飛騨高山ウルトラマラソン。最後の追い込みにと、近場で無難な3000mを目指した。自宅から平湯峠までは車で30分強、その気になれば毎朝でも通える雲上の楽園。片道14.4㌔延々と続く辛い上り坂、標高差は実に1018m。ここは日本を代表する山岳道路、乗鞍スカイライン。今日来た目的としては、上りで坂に慣れ(野辺山で散々慣れたけど)、下りでもう一度筋肉を潰す。その為だけにやって来た。
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平湯峠(標高1684m)  ※ゲ-トで恒例の呼び止め

スカイラインのゲ-トがある平湯峠を8時半にスタ-ト。地元のウルトラ仲間を誘ったが、一人はTJARの選考会に向け山に籠ると断られ、もう一人は翌日50㌔の大会があるらしく又も断られる。皆100㌔の1週間前だというのによくやるなと、その変人ぶりが嬉しくもあった。今日は俺も頑張るぞ!と気合いを入れ直し、躍起になって急坂に向かう。ここ数年毎年必ず来ているが、だいたい畳平までは1時間56分~2時間。TJARを目指すその友人は畳平まで休まず一気に上ると言うから俄に信じられない。僕もその言葉を意識して、行けるとこまで行こうと心に決めた。
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夫婦松展望駐車場
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望岳台にて  ※奥穂高岳(左)、前穂高岳(右)、焼岳(中左)、アカンダナ山(手前)

ランナ-にとってはかなりマイナ-な(知る人ぞ知る)この山岳道路だが、自転車乗りにとっては有名な聖地。ランナ-の姿はこれまで1、2人しか見たことはないが、自転車の姿はいつだって多い。大きな息を立てながら、時折自転車を追い越し、快調に上り上げていく。毎朝峠ばかり走っているので、上り坂は嫌いではない。一度追い越されたスピ-ド系の自転車乗りに等間隔で必死に食らいつき、やがて捉えて、一気に抜き返す。脱帽です・・。追い越し際に言われたその言葉と驚きの表情が、その先の僕の励みになった。さすがに一気に畳平までは無理だったが、例年よりは頑張った感はある。
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65分で高度655mアップ  ※ここで最初の休憩
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畳平も近い

時間がまだ早い為か、出会う自転車の数は少ない。辛いだけのこの鬼坂の中、少しでも励みが欲しい心境だった。時折後ろから追い越していくバスの存在も、僕らランナ-にとっては充分な励みになる。これは僕に走力が無いだけだからかもしれないが、僕にとっては『自転車乗りの驚きのリアクション(えっ!マジ。走っとる人がおるゾ)=尊敬の眼差し(あの人、かなりスゲ~)=奮闘材料=走る励み』となっている。標高2702mの畳平。一切水の得られない雲上で、僕はいつもトイレの手洗い水で空になった水筒を満たしている。しかし不運にもこの時期蛇口は閉ざされ、手洗い用の水は外のタンクにあった。今一微妙な水だったが、一応この水で水筒を満タンにしておく。しかし飲まない方が賢明な感が漂っていたので、結局最後まで飲まなかった。
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観光客で賑わう畳平(標高2702m)
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乗鞍コロナ観測所

初夏とは思えない程肌寒い中、ノ-スリ-ブと短パンという場違いな格好で、一人砂利道を走る。異質な眼差しを目一杯浴びながら、コロナとの分岐で左へと入る。しかしそこで待っていたのは、いきなりのトラバ-ス(雪斜面の横断)。今年は雪が少ないと目論んでいただけに、これは全くの想定外。以前この時期に来て雪で撤退した時の反省を踏まえ、今日は軽アイゼンを持参している。ガスで霞む最奥の剣ヶ峰までは、途切れなく雪が続いているようだ。このくらいの斜面ならまだ楽勝だろうと舐めてかかり、底がすり減った古びた運動シュ-ズのまま、トラバ-スを突き進む。しかし見た目以上に難易度は高く、一度でも滑ったものなら左斜面への滑落は必至で、ケガは免れない。絶対に避けたいのは、軽装での事故。

進む方向のトラバ-ス末端は下りになっており、その数mが怖くて進めない。後ろから登山者夫婦が迫っていたが、堪らず狭い足場に腰を下ろし、慌てて軽アイゼンを装着。片足だけで済まそうとしたが、やはり厳しかった。再度腰を下ろし、もう片方も装着。何とか一つ目のトラバ-スを終え、一先ず難所は越えた(装備さえあれば難所ではない)。この先こんな箇所が剣ヶ峰まで終始続くと思うと、既に進む気は失せていた。登頂が目的ではないので、そのへんの諦めは早い。しかしトラバ-スの戻りでも結構びびり(元々が高所恐怖症な為)、軽アイゼンをしているとはいえ、杖無しではバランスが取れず危うかった。
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2つ目のトラバ-スに向かう登山者夫婦  ※冬山装備
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堪らず最初のトラバ-スで引き返す別の夫婦  ※軽装備では妥当な判断
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軽アイゼンを持参したが役に立たず  ※ストックがないとバランスが取れない
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遠い剣ヶ峰  ※以前の撤退ではノ-アイゼンで直下の大雪渓まで行けたのに

何とか無事トラバ-スを戻り切り、安堵して剣ヶ峰を見返す。以前のこの時期は肩の小屋までは楽に行けたし、そこで木の杖を手にしたこともあり、ノ-アイゼンで剣ヶ峰手前の蚕玉岳直下の大雪渓まで行けていた。意気消沈しての帰り道、せめて富士見岳にでも登ろうかと目を向けるが、大行列が行く手を拒み、あっさり断念。ならばと空いていそうな大黒岳を目指すことにした。今日は天気はいいが、雲が多く、残念ながら期待していた北アルプスの眺望はない。高所の夏はもうしばらく先のようで、群生地にコマクサの姿もなかった。大黒岳の先にある心地良いなだらかな平地、運が良ければここには最高の展望が待っていることを僕は知っている。やがてスカイラインに降り立ち、残念な楽園を後にした。
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富士見岳に登りたかったが、大行列を見て断念
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ならば大黒岳へ
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鶴ヶ池と恵比須岳(左)、魔王岳
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大黒岳(標高2772m)
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雪渓スキ-
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大黒岳から望む剣ヶ峰(左奥)
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大黒岳取り付きにてスカイラインに合流

今日の目的は辛い上り以上に、下りに重きを置いていた。自分なりに目一杯飛ばし、来週の100㌔に備え、今一度下りの筋肉を壊しておきたかった。来週は40㌔の高山スキ-場から、長い長い下りが待っている。その下りで脚が逝ってしまわないよう、下りに耐え得る筋肉をこの直前期に鍛えておく必要があった。自転車にとってはスカイラインの下りは流しでも、ランナ-にとっては上り以上の試練となってくる。しかしこの道路の下りは、辛いなりにもいいこともある。それは続々と上って来る自転車乗りの存在だ。擦れ違いざまの驚きの表情や言葉(時に拍手)は、疲れた脚、折れそうな心をもう一度奮い立たせてくれる。バスの存在もしかり。途中谷水で全身を冷やし、喉を潤す。脚休めがてら望岳台にも立ち寄るが、相変わらず眺望は乏しい。腕時計が示す標高を励みに、一気にゴ-ルを目指す。・・そして、ようやくゴ-ル。ゲ-トのおじさんに迎えられ、『是非また来て下さい』と言葉を頂く。きっと近いうちに又来ると思う。剣ヶ峰とコマクサ、北アの眺望、それに休まず畳平まで・・。今日得られなかった課題は多い。
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試練は尚も続く
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スカイラインの貴重な谷水


平成30年6月2日(土) 天候晴れ、僕


平湯峠(1684m) 8:30
夫婦松展望駐車場 8:51
望岳台 8:59
標高2325m 9:35、9:42
畳平(2702m) 10:25、10:36
コロナ分岐付近(※撤退) 10:47、11:01
大黒岳(2772m) 11:15、11:31
スカイライン取り付き 11:38
谷水 12:20
望岳台 12:34
平湯峠 12:56



過去の乗鞍ランニング↓ ※新しい順に

各々のスタイルで乗鞍へ
絶景ラン、そして剣ヶ峰撤退
残雪賑わう乗鞍岳
絶景!乗鞍のスカイランニング

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