FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

僕がみた世界

CIMG0793_convert_20140616164929.jpg

春の大型連休や夏休みに、多くの日本人が外国に旅行に行くニュ-スを見ます。行き先は人気の高い観光地がほとんどです。皆さんの中にも行った方がおみえになると思います。もちろん僕も『ハリ-ポッタ-』の舞台になったイギリスへ行ってみたいと思います。

でも、世界には楽しい国ばかりではありません。世界にはおいしい食べ物が食べたくても食べれない人、学校に行きたくても家事を手伝わなければならない人がたくさんいます。

僕は六歳の頃から、多くの国へ行っています。そのほとんどは、貧しい国です。五年生の時に行ったインド、六年生の時に行ったバングラデシュ。日本と比べると少し貧しい国です。そこで見たのが『難民』です。やぶれた服、土でドロドロになった靴、日本とは違う環境にとても驚きました。

インドのある村に行った時に家の中を案内してもらいました。家は土とわらで作られています。想像してみてください。そんな家で生活できますか。僕にはできないと思います。この体験から、世界にはとても貧しい暮らしをしている人がいるということがわかりました。

僕の家にはその貧しい生活をしている人達と撮った写真が、たくさん飾られています(ここで特大写真を掲げる、HPにも出ているインドの写真)。写真に写っている人を見てみると、みんな笑顔です。その時僕は『誰が見ても苦しくて、大変な生活をしているのに、どうしてこの人達は笑顔なんだろう?』と疑問に思いました。

一つ目は『こんな遠くまで、外国の人が来るなんて』と興味をもっている笑顔。もう一つは、歓迎の意味を込めた笑顔。でも、それだけではないということに気付きました。

僕は今まで、アメリカ、ベトナム、タイ、フィリピン、エジプト、ヨルダン、シリア、イスラエル、パレスチナ、インド、バングラデシュ、中国に行ってたくさんの人を見てきました。その中で見た人たちは、裕福ではないけれど、とても優しくて明るい人がたくさんいました。陽気な人や、ものすごくたくさんしゃべりかけてくる人もいました。そして笑顔をたくさん見せてくれました。よく考えてみるとその笑顔には、僕が考えていたよりももっと深い意味があるように感じました(写真を下ろす)。

僕達日本人はどうしても他の人と比べたがるし、毎日の生活に不満を言うことがあります。機嫌が悪くて人に冷たくすることもあります。でも、僕が見た人達は、誰かと比べることはせず、自分達の毎日の生活を精一杯生きているということに気付かされました。僕はこの世界に、そんな生活の差があってはいけないと思いました。

僕の将来の夢は、山岳救助隊員になることでした。でも、『難民』の人達に出会ってからこの人たちを助けるボランティアをしたいと思うようになりました。食料を運んだり生活の手助けなどをしたりする仕事です。

ではその夢を叶えるために、今僕にできることは何か?一つは、できるだけ多くの人に『難民』の人達の現状を、知ってもらうことです。この問題を人事にしないで深刻に受けとめてほしいです。二つ目は、自分たちが精一杯毎日を生きることです。このことを知ってもらいたかったから、父は多くの国に連れていってくれたのだと思います。だから僕は今の学校生活を精一杯生きて、明るくてゆうかんで、そして笑顔あふれる人になりたいと思います。

(以上、岳登の発表原文のまま)


岳登にとって必ずしや生涯記憶に残る、思い出深い一日となったことだろう。『柔道の初段合格』と『少年の主張コンク-ル』。年に数回しかない柔道の昇段審査と在籍する中学校代表として挑む少年の主張コンク-ル、これらが運悪く重なった。中体連までには黒帯を付けさせてやりたかったので、当初はコンク-ルを断わり昇段審査を選んでいた。しかし学校の代表に選ばれるなんて大変名誉なことだし、もう二度とないだろう。嫌がる岳登の意見は無視し、コンク-ル出場の意向を先生に伝えた。

初段に必要な点数は既に取っていたが、形(かた)と筆記の試験を通らなければ初段にはなれない。つまり、柔道を習う者の一つの目標でもある『黒帯』を着けることは許されない。コンク-ルを一応は選んだが、昇段審査の方も完全には諦めていなかった。念の為、前夜筆記試験のチェックをすると、勉強が全く進んでいないことに顔面蒼白。仕方なく深夜、翌朝とマンツ-マンで勉強を見てやり、何とか直前には筆記試験に挑めるレベルへと到達した。

昇段審査会の会場。受付の先生2人に事情を説明すると、快く融通を利かせてくれた。その一方が小学校の時の担任の先生だったことも大きかった。まだ受験者の試合が全て終わっていない中、二つある内の一つの畳を岳登の為だけに空けてくれた。仲のよい後輩が形の相手を務めてくれ、いよいよ審査が始まった。練習不足が響きかなり下手くそだったが、ここもお情けで通過させてもらえた。こういうものは何年経っても忘れないもので、僕も中学2年の冬に覚えた形の動きが今でも身についている。

そして筆記試験。これは点数が確実に数字となって現れてくる、情け無用の実力勝負。ここまで多くの人の助けに運よく乗っかかってきたが、最後の関門だけは自分の力でクリアしなければならない。道場の隅の一画で、板敷きに問題を広げ運命の時が流れる。合格には60点以上必要なところ見事85点取得、これで岳登も晴れて有段者となった。マンツ-マンで勉強を見てくれたオヤジ、形の相手をしてくれた後輩、融通を利かせてくれた柔道の先生方に感謝してもらいたい。『オレ黒帯やぞ、すごいやろ!』。帰宅するなり、柔道を習っている紫帯の妹嶺花に偉そうに威張っていた。

よし、何とか午後のコンク-ルには間に合いそうだ。流れはいい、このまま最優秀賞取ってこい!そして県大会、その先の全国大会へと一緒に行こうぜ。一人勝手に妄想を膨らませ、担任の先生の待つコンク-ル会場へと急いだ。各校から選ばれた代表16人が一堂に集い、市少年の主張コンク-ルは盛大に開幕した。学校でも放課後先生と練習していたようだったが、家でも毎日親に聞いてもらうように先生に指導されていた。しかしそこは岳登、親の前で練習するような利口な子ではなく、結局一度も親の前では口を開かなかった。原稿は覚えている・・。あまり信憑性のないその言葉に期待し、全国への足がかりを正面特等席にて静かに見守った。

トップバッタ-は岳登。一番なんて、これは縁起がいいじゃないか。しかし予想外の光景に、思わず自分の目を疑った。第一声から、既に机に置いた原稿を見ている。おいガク、こっち向いて話せ・・。それは気持ちを込めた主張というより、単なる朗読、国語の授業で教科書を読んでいるようであった。結局顔を上げたのは2、3度だけで、下を向くにしろその角度が微妙だった。特大パネルを掲げる場面では、顔が隠れて逆に本人は嬉しかったことだろう。皆、こんなものなのか・・。岳登の発表しか見ていない会場の誰もが、きっとそう思っていたに違いない。

そして2人目、女子学生が颯爽と登壇。なんじゃコリャ!第一声からして度肝を抜かれた。それは僕だけではなく、会場の誰もが感じたことだろう。原稿を見ない、表情が豊か、それに身振り手振りを交え、声の強弱もつけ聴衆に訴えかけている。発表はかなり洗練され、岳登とは全く比にならない。これではまるで、単なるエキストラと主役演じる俳優ではないか。当コンク-ルの趣旨である『主張』とは、まさに演じること、朗読やナレ-ションではない。更にそれ以上に驚いたことは、この光景が最後まで続いたこと。原稿を見ていたのは結局は岳登だけで、原稿すら持ち込んでいない女子学生までいた(彼女も最優秀賞)。なんということだ・・、穴が有ったら入りたい。それは岳登とて同じようで、自身の発表以降、終始逃げたい気分だったようだ。最優秀賞の4人は大方の予想通り、皆スゴイ生徒達だ。その中でも男子学生の発表は群を抜いていた。会場全てが彼の世界に引きこまれ、僕も鳥肌が立っていた。

岳登が目立っていたのは発表者の代表を務めていた号令と、やけに均整の取れた体格くらい。逆に発表が後の方だったらどうだっただろうか。彼等彼女等に負けじと、原稿に頼らず、感情を込めて発表出来ただろうか・・。いや、まず無理だろう。これは練習以上に、完全に向き不向きの世界である。ここにいたほとんどの生徒は丸暗記を大前提に、人前に出ても物怖じしない稀な資質を持った選ばれし者ばかりである。珍しい体験(ネタ)を持つことだけで選ばれた岳登とは、根本的に質が違う。是非この作文を皆に聞かせてやりたかった・・。閉会後先生から頂いたこの言葉に、僕はかなり救われた。

初めて岳登の原稿を読んだ時、僕は嬉しかった。岳登と旅した6年間、その小さな目で何かを感じてくれていたことが僕は嬉しかった。この内容なら全国も夢ではないな・・。しかしこれは、主張コンク-ル。原稿を読むだけではなく、自分の思いを聴衆に伝えなければならない。岳登にその術はなかった。奨励賞を頂いたが、これは僕等の旅の証しとして大切に取っておく。午前中初段が取れたからよかったが、もし昇段審査を諦めていたら、今夜は敗北感だけに満たされていただろう。しかし当の岳登、敗北感よりも黒帯の達成感の方が勝っているようで、やけに表情は明るい。手巻き寿司の夕食で祝い、電気を消してのプロジェクタ-によるビデオ上映会。天井に大きく写し出せれた映像が柔道からコンク-ルに移るなり、岳登は早々に2階へと上がっていった。
スポンサーサイト



| 思い出 | 10:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://gakuto2164.blog85.fc2.com/tb.php/615-cf2a85dd

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT