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笹の子採り

6月初旬夜明け前の朝、梅雨の切れ間を狙って母を誘い穴場の笹山に向かった。この山は地元の人にも意外と知られていないようで、笹の子は至る所にウジャウジャと沸いていた。この山の笹の背丈は高く、笹薮の尖った葉に傷つけられる事もなければ、見通しが利く分、深追いして迷子(遭難)になる心配もない。 

『笹の子はどこかな・・』 目を忙しく周囲に張り巡らせ探してはいるが、目がこの山に順応してくるまで笹の子は容易に姿を見せてくれない。こういう場合、大抵足元に踏ん付けていたりする。意外と気付かないものでもある。しゃがみ込み、視線を笹の子の高さまで落とす。薮の地面を這うように澄まして見渡すと、学校のグラウンドに起立した生徒の如く、笹薮の子供達があちらこちらに立っているのが分かる。何事も相手と同じ目線に立つ事がまず第一のようだ。

山の中ではぐれてしまわないように時折互いに声を掛け、声の届く範囲で収穫に汗を流す。母にも少しずつ笹の子が見えてきたようで、発する声からも興奮している度合いが伺える。笹の根っこに足を取られ転倒したり、行く手を遮る笹枝に顔面を奇襲されたりしながらも、背負っているデイバックは確実に重量を増していく。一杯になってくると基地に戻り、縦走登山用のメインの大ザックに移し変え、再び収穫作業に励む。

50cm近く伸び上がった大きな笹の子もあるが、ここまで育つと、もはや子供とは言えない。”笹の子ではなくて、笹の青年? いや言い難いから違うな・・” 自ずと勝手な妄想も膨らんでくる。地面から顔を出したばかりで、土や落葉と同化して一見判別が利かない茶色く太い笹の子が最も狙い目となる。
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笹薮
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笹の子
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ニョキニョキと新芽が顔を出す初夏の笹山

収穫に夢中になっていたら、苦せず山頂まで登り切る事が出来た。山頂の枯木に腰を下ろし三角点を囲み、母が作ってきた自慢のおにぎりを頬張る。漬物は勿論この地方特産の赤かぶとなる。水筒の温かいお茶も何だか贅沢に感じた。母は前夜興奮してよく眠れなかったと白状していたが、実は僕も同じなんだ。一汗掻いた後の朝食はいつもより尚更美味い。その後再び一汗流し、満足のいく収穫を得て作業を終えた。

先程は薄い大気に覆われ霞んで何も見えなかった飛騨山脈の名峰は、薄っすらと雲の上に姿を現してくれた。黒部五郎岳、双六岳、笠ヶ岳、乗鞍岳・・。今頃になって顔を出してくれたのは、きっと山ノ神から母への気の利いたプレゼントだろう。『ここから見える大抵の山は孫達は登ったんだよ!』 そんな会話を交わしながらも、特に笠ヶ岳の雄姿に驚いていた。『あの山なら、天気が良かったらガクと来週日帰りするつもりだけど・・』 母と初めて交わす山談義だった。

帰り支度にかかり荷物をまとめていると、ザックの底から肝心な物が出てきた。危ない危ない、すっかり忘れるところだった。凍らせてザックの底に忍ばせておいたビ-ルを母に手渡し、山頂での至福の一時を楽しんでもらう。母は大変喜び、それを見ていた僕も嬉しくなってきた。私がまだ子供の頃の話、と切り出して母が話を始めた。母の祖父が竹の子採りに山に入り、崖から転落し川に流され命を落とした。その事故以来、母の父も山に入らず、竹の子採りは実家では御法度だったようだ。最近その暗黙の掟は時効を迎え、母の兄弟は山に山菜採りに行くようである。初めて聞く昔話だった。

他の親子と同じように普段は全く会話のない母と子だが、今回の笹の子採りや山行で久々に僅かながら話をした。来年は僕の賑やかな子供達を連れ親子三代で再来する事を三角点に約束し、慎重に山を降りた。母は車に戻ると、再び忙しそうに手足を動かし始めた。”一体なんだ、なんだ・・” 母は手に抱え切れない程のフキを抱え、終始大満足だった山菜採りは静かに幕を閉じた。
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至福の一杯
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65歳前にして初めての笹の子採り、登山、山頂で飲むビ-ル、北アの絶景・・
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母はたいそう喜んでくれた
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平日朝の収穫

今日は平日。母を家に送り届けると、僕は着替えを済ませ何事もなかったかのように事務所に向かった。笹の子は採ったら直ぐに茹で上げないといけない。味が格段に落ちるからだ。大量の笹の子は昼間のうちに母に茹でておいてもらい、最も面倒で手間のかかる皮剥き作業は、夜我が家のチビッ子達に任せる事にした。・・そして夜。台所には茹で上がった笹の子が無数にテ-ブルに広がっていた。3歳の四女には皮剥き作業はまだ難しいらしく、姉の剥いた笹の子をつまみ食いばかりしては喜んでいた。二女と三女は皮入れ用のバケツを各々脇に置き、互いに激しく競い合っている。

食べる専門の長男岳登、難しい盛りの中学生の長女、お疲れ気味の妻にもこの笹の子料理は大好評。沢山採ってきたはずなのに大家族なので直ぐになくなってしまう。笹の子がとても美味い事は言うまでもないが、僕は今回の笹の子採りでそれ以上の大切な何かを収穫した気がする。
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笹の子御飯(写真左下)と笹の子料理  ※写真右中央はフキの煮付け
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笹の子味噌汁
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茹でた笹の子はマヨネ-ズや醤油をつけて
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味噌和え
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醤油漬け
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梅と鰹節風味  ※御飯の上にのせて食べると美味い
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笹の子の丸焼き



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