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白山白川郷(3)~稜線の果てに

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泥まみれのトレイルランナ-


・・前回の続き


込み合う白山(御前峰)に別れを告げ、僕らはここから北の果てへと足を延ばす。ここから先は僕も未踏の地であり、不安半分、ワクワク感半分といったところか。一旦火口湖目指し、足下の不安定なガレ場を下る。幾つかある火口湖は古い噴火によって出来たものだが、”お池巡り”として観光の要素ともなっている。この辺りまでなら、御前峰から足を延ばす登山者も少なからずはいるようだ。問題はそれ以降の進路で、複雑に入り組んだ別の支線に進んでしまわぬよう、僕も細心の注意を払う。そして最後の池を過ぎたところで、ふと道標が現れた。聞き慣れない登山道の他に、通行止(室堂で知った)を意識していた『岩間道』の文字が見える。しかし僕らの進むべく『中宮道』の文字はなく、本当にこちらでいいのかと一瞬焦るも、その更に先に分岐道標があるものと信じ、一先ず岩間道方面へ。
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御前峰
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翠ヶ池(みどりがいけ)
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血ノ池
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道標  ※ここに『中宮道』の表記も欲しかった

僕が思った通り、先程の道標から2分で次の道標が現れた。今度こそ『中宮温泉』の文字が出てきて、迷いは消えた。今回の縦走路で、この辺りだけが唯一心配だった。一気に斜面を駆け下りる。右手には剣ヶ峰が尖がって見え、先程御前峰から眺めていた山容とはまるで別の山に見えることに驚く。なるほど・・、これが『剣ヶ峰』の由来か。この尾根を歩かないと、おそらく一生お目にかかることのない迫力の光景だった。本日同行してくれた僕以外の3人は皆トレイルランナ-でもあり、70㌔級のレ-スも今年2本控えている。そんなトレイル大好きなメンバ-は、水を得た魚のように突如元気になった。反対方向から歩いてきた単独行の男性と擦れ違う。この時間帯、荷物からしても、稜線のどこかで宿泊してきたのだろう。中々魅力的な稜線だし、きっと縦走する登山者も多いのだろうな・・。この時僕はそう思ったが、この日この縦走路で出会った登山者は結局この男性1人だけだった。荒れた登山道が想像させるように、利用する登山者は極稀なのだと感じた。
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道標  ※『中宮温泉』へは下りないが、一先ずその方向へ
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見るからに剣ヶ峰(左)
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一気に下る

ふと、残雪に出くわした。涼しげな雪を求め、少しコ-スを外れる。今日は最高気温が35度まで上がる予報で、”残暑”ならぬ真夏日の再来に汗ばかり出る。帽子を持ってこなかったことを、僕は若干後悔しつつあった。雪は表面だけでなく中の方まで黒ずんでいたが、顔を濡らすと最高に心地良かった。波ちゃんとタッちゃんが雪の斜面を登り、上から滑り下りてきた。底の摩り減ったシュ-ズはよく滑り、まるで童心に返ったかのように無邪気に遊ぶ姿は、今日の山行を象徴するシ-ンでもあった。
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残雪



やはり縦走は楽しいな。まだ見ぬ稜線に心が踊っていた。目の前に連なる緑色主体の尾根は、岩でごつごつした北アの稜線とは明らかに雰囲気が違う。標高の差もあるだろうが、槍穂が男性的なら、やはり白山は女性的なんだろう。御嶽や乗鞍、それに槍穂高くらいは容易に特定出来たが、後はよく分からない。ただ、目の前で一際アピ-ルする三方崩山の姿はこの縦走中、常に視界に入っていた。ここまで休まず歩いてきたので、地獄覘の道標でしばし休憩とする。皆体力は底無しにあるし、出だしのロ-ドのように頑張り過ぎる傾向にある為、疲れているのかどうなのか判断しにくい。それに自分から休みたいと言わない為、仲間に休憩を告げるタイミングが難しい。”地獄覘”という名前通り、確かにここからは”地獄尾根”の全容が望めた。印象としては、西鎌尾根北の”硫黄尾根”にも良く似ている。小狭い平地に座り、おにぎりを食す。僕は今日、大きめのおにぎりを6個持ってきている。おりぎりは最初は重く嵩張るが、腹持ちはいいし、食べればその分荷物も軽くなる。やはり日本人には、おにぎりしかないだろう。タッちゃんは昨晩のどら焼き効果により荷物の軽量化には成功したようだが、やはりエネルギ-源が足りてないようだった。
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僕ら以外誰もいない
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緑の尾根がどこまでも延びている
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池塘
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木道の先に三方崩山
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北弥陀ヶ原
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地獄尾根

この北部稜線は利用する登山者がほとんどいない為か、登山道は結構荒れ放題だった。登山道は大方草で覆われ、酷いところになると、足下(地面)の状況が全く分からない。安易に過信して足を置いたものなら、落とし穴にはまり、右斜面に転げ落ちる場面も度々あった。先ず先頭の僕が代表して転び、後続にその注意を促す。しかし後続のタッちゃんも同じように転ぶ。親切に警告をして注意を促しても、地面が見えていない以上、結局はどこに気を付ければいいのか分からないのだ。そして続くほっしゃん、波ちゃんも律儀にも大概同じ結末を辿る。地面が見えている場面でも、横幅は狭く、その上横に傾斜がついたり草木が生えたりしていて、横幅は二の腕を振って進める程は設けられていない。僕は左足裏を痛めている為、踏ん張りが効かず、足裏が痛くて悲惨だった。それに輪をかけたようなアップダウンの繰り返しにも皆うんざりしていた。
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ロ-プ場
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連なるピ-ク  ※度重なる登り返しにうんざり
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三方崩山
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三俣峠

そして、ようやくゴマ平避難小屋に到着。ここまでが異様に長く感じた。池巡り分岐からCT4時間半のところ、2時間半以上もかかってしまう。仲間は皆、当初走れそうな稜線だと期待していたようだが、結局走れるような場所はほとんどなく、”スカイトレイル”と言うよりも”藪漕ぎ”に限りなく近い。大白川からの入山以来、僕がずっと先頭を進んでいる。ペ-ス的に内心タッちゃん辺りに不満があったかもしれないが、僕のペ-スはだいたいCT5割なので、全体を通せば丁度良いだろう。ゴマ平到着後、道標を2方向から機械的に(無意識に)撮影。50m離れた所に水場があるらしく、無駄足はきついがここは僕だけ行ってくる。次の水場はCT1時間先の、シンノ谷。皆ここゴマ平の水場はパスし、次のシンノ谷に賭けていた。水をたらふく飲み、胸のペットボトルも満タンにしておく。ザックの中の750mlボトルは手つかずのままだ。小屋脇の道標に軽く目を合わせ、地べたに座る仲間の元へと戻る。波ちゃんとほっしゃんは各々地図を広げ見入っていた。
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ゴマ平避難小屋の道標
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同じ道標の別面
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水飲場  ※小屋から50m

重い腰を上げ、ゴマ平避難小屋を発つ。ここは迷わず、道なりに直進。ここから次の水場であるシンノ谷まではCT1時間。走れないながらもそれなりに早足で下っているし、30分もあれば到着するだろうと目論んでいた。しかし目標の30分を過ぎても谷は現れず、40分経っても、50分経っても一向にシンノ谷は現れなかった。おかしいな、そんなに俺ら遅いかな・・。もしかして先程それらしき場所があったが、まさかあそこだったのではないだろうな。しかしどう考えてもあれは鉄橋ではなく単なる木道だし、それに全く水気がなかった。そしてついにCTの1時間を経過した。標準コ-スタイム(CT)を作った人が余程健脚だったというのか。しかしそんなはずはない、きっと知らぬ間に通り過ぎたんだろう。それならそうで早く次の目的地が出て来てくれと願い、同時に先程水を満タンにしなかった仲間に水切れの心配が及び始めた。そしてゴマ平から1時間と4分が経った時、突如目の前に小屋が現れた。はて、こんな所に小屋などあっただろうか?標柱から剥がれ落ちたプレ-トには『シナノキ平避難小屋』と書いてある。何だそれは、まさか道を逸れたのではないだろうな?メンバ-の誰かが地図で確認すると、正に嫌な予感は的中。僕らは予定していない中宮温泉へと下っていた。
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白山白川郷ホワイトロ-ド  ※そもそもこの位置関係(道の見え方)が宜しくない

さてと、よわったぞ。さすがにCT3時間の坂道を登り返す気力はないし、仮に頑張って登ったとしても、まだその先は長い。ただ下山場所が変わってくるだけで別に遭難している訳ではない、よしこのまま行こう、アハハ・・。仮に水が切れたとしても後1時間半もあれば下山出来るさ。普段鍛えている皆なら、何ら問題はないだろう。それより重要なことはその後のことだ。果たしてホワイトロ-ドは走れるのだろうか?いや、あそこは確か走れないはずだ。仮に通行させてもらえたとしても、今からあの激坂に挑むにはかなりの覚悟が必要だ。じゃあ、バスは?タクシ-は?そもそもそんな大金は誰も持ち合わせていない(タッちゃんだけ1万円持っていた)。ちょうど今日白山白川郷ウルトラマラソンに出ている友人がいるから迎えにきてもらおうか?もうリタイヤしている頃だろうから早速連絡を取ってみよう。オイオイ誰だ、勝手にリタイヤを決めつける無礼な奴は。いずれにせよホワイトロ-ドが閉まるのが17時頃だとすれば、その数時間前には下山しておかないと話は少々厄介になる。一先ず、急いで下ろう。
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まさかの『シナノキ平避難小屋』に笑うしかない、アハハ・・

足下の見えない中、真新しい熊の糞に怯えながら、藪斜面に恐る恐る足を置く。注意はしているものの足をすくわれ、2度大転倒。ここまでも何度も転んで既に泥だらけだが、この2度の転倒は厳しかった。ふいの転倒は防御も出来ず、無防備に地面に叩きつけられる。その際2度とも右肩を脱臼し、特に2度目の転倒は外れた肩を入れるのに苦労した。脱臼はここ数年していなかった気もするが、久々のことで痛みはしばらく尾を引いた。波ちゃんはヘッドスライディングもしたようで、まるで腕白坊主のように脚の傷が更に増えていた。渇水覚悟の水場は辛うじて水が得られ、メンバ-皆生き返る。少し間の開いた後ろ3人の賑やかな声を聞きながら、僕は下山後の取るべき行動について考えていた。ル-トミスは僕の思い込みが最も大きな要因だが、各自が単独行のつもりで意識していれば防げたミスでもある(これは教訓)。しかし自分で蒔いた種をどうにかして片付けなければ、仲間に対して示しがつかない。岳登流に言えば、『これも旅だな!』の一言で済ませられるが、それは今こうして無事どうにかなったからだろう。結局、今回の山行は『山旅』なんだ。道中起こるアクシデントを含めた全てを楽しんでこそ、旅は完結する。僕はポジティブにそう開き直った。
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渇水寸前の水場で仲間復活
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まるで藪漕ぎ
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道標は倒壊
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一先ず無事下山
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中宮道登山口


つづく・・



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