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ウラギン(3)~鬼門、竹村新道


・・前回の続き


野口五郎の山頂で家族に電話(ガラケ-)をかけ、七倉山荘の電話番号を調べてもらう。その後直ぐに山荘に電話をし湯俣の状況を尋ねてみたが、ここでは分からないとの呆気ない回答。ならばと晴嵐荘の電話番号を教わり、そして今度は直接晴嵐荘(せいらんそう)に問い合わせの電話をかけた。その結果、問題なく渡渉出来るとのこと。一先ず安堵し、計画通り竹村新道へ下ることとする。その先で擦れ違ったトレラン男性に声を掛け、念の為湯俣の情報を探る。この男性とはそれを機に少し長話をしたが、どうやら昨夜22時に中房温泉を発ち、何と表銀座を越えてここ裏銀座まで来たのだと言う。先程の山田さん親子もそうだったが、前夜発が今ブ-ムなのか。表・裏銀座の日帰り周回は、僕の中では発想すらなかった。標準CTは30時間をゆうに超える上、登山口の中房と七倉をランでつなごうと思うと43㌔(△950m)ある。かなり辛そうだけど、是非数年のうちにチャレンジしたい。そしてこの男性に昨夕の揺れが地震であったことを聞き、それが槍ヶ岳で起きたことを知らされる。今日東鎌、西鎌の両尾根を通ってきたこの男性も遭難騒ぎに多少巻き込まれたようで、よくそんな中ここまで来れたなと感心した。
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野口五郎岳を背に分岐目掛けて下る
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湯俣の状況
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振り返ると分岐道標が  ※危うく水晶方面へと通り過ぎるとこだった

危うく竹村新道分岐をスル-するところだったが、ここは運も味方し無事左折。しかしこの竹村新道が、思いの外厄介なル-トだった。ここを通るのは2度目なのだが、さすがに10年以上も経つと苦労したことすら忘れている。竹村新道に入れば後は下るだけだと安易に考えるのは大間違いで、油断すると標高を落とすどころか命すら落としかねない。進めど高度は一向に下がらず、無情にも時間ばかりが過ぎてゆく。ふと、足下の安定しないガレ場に出た。鉄線が1本左手に張り付いていたので、これでも一応コ-スなのだろうと思った。しかし下り切った先、突如道筋が完全に消えた。数年前に生死を懸けたブロモ山(インドネシア)にも似たようなかなりヤバ気な状態。やはり、どう見てもこれはおかしい。ガレ場を登り返して戻るべきか迷ったが、周りを見渡すと左眼下に道らしきが薄く見えた。確証はなかったが、ここよりは絶対に安全だと意を決し、激藪の上に跨り強引に山腹へと下りる。やはりここが正規ル-トのようで、振り返って見るとトラロ-プがぶら下がっていた。今思えば、11年前もここで進退窮まっていた。その時は強引にその先も突破したが、重荷を背負っての子連れ山行。とにかく生きた心地がしなかったことを今頃になって思い出した。
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黒部五郎岳
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せっかくの裏銀座だったが、今日の槍は終始姿を見せず
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水晶方面へと続く縦走路
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又も迷い込んでしまったガレ場  ※一旦下り切った所で振り返って見上げる
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登山道に合流  ※左上の激藪地帯から強引に下りてきた
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油断ならぬ竹村新道  ※もう二度と来たくない

竹村新道は湯俣岳の登り返しにもかなり苦しめられる。下山路でこの登りは通常では有り得ない。度重なる緊張の連続と、このきつい登り返し。この二大要素を抱えているだけあり、竹村新道はどおりで喉が渇く訳だ。思うように減っていかない高度に嫌気を差しながらも、川の音が耳に届いた瞬間はとても嬉しかった。ただそこからも長く、最後まで一切気が抜けなかった。この竹村新道は、出来ることなら今後二度と使いたくない。やがて湯俣温泉へと無事下山。”無事”という表現はこの新道には欠かせない。晴嵐荘前の水道で2本のペットボトルを満タンにする。渡渉箇所を探り、靴を脱いで飛び石で無事対岸へ。腰まで浸かるという話も出ていただけに、最後の難関を終え安堵する。さぁここからはランナ-の見せ場だと意気込む予定だったが、竹村新道で精根尽き果ててしまい、肝心の脚が残っていない。足の爪は親指2本が逝ってしまった(もうじき確実に剥がれる)。走る力は残っていないが、せめてランニングポ-ズだけは所々見せる。そして早歩きを中心にしぶとく進んだ。
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湯俣岳(標高2379m)  ※登り返しが相当辛く、やはりこの区間は異様に喉が渇く
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山ぶどうで喉を潤す
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ようやく高瀬川が見えてきた
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晴嵐荘(15:49)
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水場
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心配していた渡渉は別段問題なし  ※靴を脱ぎ渡る
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林道終点にある湯俣温泉登山口

完全に暗くなる前には、最低でも高瀬ダムまでは着いておきたかった。当初計画では日が暮れる前に行程を終えるはずだったが、中々思うようにいかないものだ。高瀬ダム手前のトンネルからヘッドライトを頭に着けていたが、ダム以降完全に夜の部に突入。山田さん親子とはダム辺りで再会出来るかと思っていたが、その先も含め姿は見なかった。先程野口五郎直下で話し込んだトレラン男性とも会えるだろうかと期待したが、タフそうだったからとっくに先へ進んで行ったのだろう。つづら折りの舗装路を走って下る。そしてその後は4つのトンネルをゴ-ルまでの目安とし、走ったり歩いたりを繰り返す。途中何度かくたばり、洞門の腰掛けにしゃがみ込む。何とか最後の山ノ神トンネルが見えてきた。一番長いこのトンネルに少し身構えたが、普段走っている5㌔のトンネルに比べたら屁でもない。そして予定より1時間以上遅れ、ようやく七倉にゴ-ル。野口五郎まではさほど疲れは感じていなかったが、やはり竹村新道一つにやられてしまった。久々の長時間行動。もう山はいいやと、舗装路を力なく歩きながら自分に言い聞かせていた。しかし今となっては今年中に最低もう一度、もっと長い山行をしておこうと思っている。前にも言ったな、このセリフ。”挑戦”とはきっとそういうものなんだろう。
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竹村新道で精根尽き果て、せっかくのロ-ドも走れなかった
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高瀬ダム(18:02)
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最後の山ノ神トンネルを抜けたら
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ゴ-ルの七倉(19:19)  ※予定より1時間以上遅れた


七倉 1:02
岩小舎 2:09
鼻突八丁 2:35
天狗の庭 3:07
船窪小屋 3:29
船窪乗越 4:26
船窪岳(2459m) 5:25
不動岳(2595m) 7:05
南沢岳(2625m) 8:17
烏帽子小屋 9:08、9:18
野口五郎小屋 11:29、11:36
野口五郎岳(2924m) 11:50、12:04
竹村新道分岐 12:30
湯俣岳(2378m) 14:18 
湯俣温泉晴嵐荘 15:49、15:59
湯俣温泉登山口 17:10
高瀬ダム 18:02
七倉 19:19


令和3年9月20日 天候晴れ 僕


標準コ-スタイム:27時間45分(昭文社・山と高原地図)
所要時間:18時間17分
距離:40.5km (△4514、▽4540)

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