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本州縦断フットレース2021スペシャル(5)~絶体絶命の大ピンチ

2021年4月26日(月)   ※大会3日目
五城目(秋田)~由利本庄(秋田)

本日距離:71.9km 《総距離:219.0km》


試練は時として容赦なくやって来る。『お前なんぞ、さっさとやめちまえ。貴様如きスペシャルなんぞ100年早いわ!』。そう言わんばかりに突如立ちはだかった大きな壁。先程から嫌な予感はしていたが、徐々に痛みは増し、ついに僕の左膝裏が悲鳴を上げた。膝裏が痛んだことはこれまで一度もないので、原因も対処法も分からない。取り敢えず鎮痛剤を飲み、痛みに堪えながらビッコ歩きでしばらく進む。ドラッグストアでエア-サロンパスでも買おうかと思ったが、折角店を見つけても、まだ時間が早くオ-プンしていない。ロキソニンが効いてきたのか、やがて痛みは多少和らいでくれた。しかしこんな調子でさすがに下関まで行くことはまず不可能だろう。薬で誤魔化しながら進むにも限度がある。大会3日目にして早くも大ピンチ。意に反して片足を棺桶に突っ込んでしまい、中から死者が『さぁ君も早くこっちにおいでよあの世に来れば何も苦しまなくてもいいんだよ・・』と誘われているような、三途の川を連想させるような、言うなれば”絶体絶命の大ピンチ”に僕は陥っていた。

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潟上市
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三浦ストアのオバちゃん  ※自宅トイレを貸してくれた上、売り物のコ-ヒ-とパンをくれた
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毎日おにぎりだったので、粒あんの甘さがとても新鮮だった

先程商店でトイレを借りて以降、左膝裏に感じていた違和感は明らかな痛みへと変わり、やがて激痛へと変貌を遂げた。大清水交差点にて国道7号線へと入る頃には痛みもピ-クとなる。エア-サロンパスを買おうとコンビニに入るがどの店にも置いてない。長距離マラソンを行う上で、足の骨折以外の故障やケガは大概乗り越えられると常々思っている。しかし100㌔、200㌔くらいならともかく、実際まだ1400㌔も残っていると思うと、その考えは明らかに通用しない。大事を取ってここでリタイアする選択肢もあるが、そもそも僕はそんな小さな覚悟でこの舞台に挑んでいない。次など無く、あるのは今のみ。レ-ス後のことなど何も考えていないし、考えようとも思わない。今現在、僕の命はこの大会の為だけに存在する。一先ず薬が尽きるまでは進むしかないな、そう思い疫病神を追い払った。
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今日のゴ-ルは由利本荘、そして明日は酒田
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R7ゴ-ルは着実に近付いている

やがて秋田市内が近付いてくると、道路沿いに店が増えてきた。今日は先程貰ったパンしか食べていないので、気分転換も兼ねてすき家に入り腹ごしらえをする。その時の気分や状況により小まめに補給を摂っているので、朝食とか昼食とか三食区切りの感覚はない。先程から接骨院も探しているが、見かけた数軒はやっているのか否か分からないような繁盛の無さだった。そもそもこの症状は接骨院で治せるのか、あるいは整形外科なのか・・。いずれにしても、貴重な時間を割いて治療してもらったとしても、おそらく患部に電気をあてられ、湿布を貼ってハイお終い。無理をしないで下さい・・、これ以上続けることはお勧め出来ません・・、そんな在り来たりのアドバイスも聞きたくはない。結局は治療では何の解決にもならないだろうと、通院案は排除した。程なくドラッグストアを発見し、待望のエア-サロンパスを購入。しかしこれで治るとも到底思えない。
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すき家
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秋田名物 きりたんぽ  ※食べれなかったので写真だけでも

すき家での食事休憩がいい気晴らしになったのか、その後2時間は自分でも驚く程の快走だった。既に秋田市街に入ったことで車や歩行者が一気に増し、人の目があることでどうしても気合いが入ってしまう。”本州縦断ウォ-キング大会”などと思われたら嫌なので、市街地では極力走る。ゼッケンを付けて参加させてもらっている以上、これは選手の義務だろうとも思う。13:01、CP5の山王十字路交差点(179.7㌔)に到着。先程までの痛みが嘘だったかのように、気分良く走れている。今日はこのまま最後まで行けそうな気がしたが、やはりそれは勘違いで、その快走もそう長続きはしなかった。大会前から抱えている幾つかの故障箇所の一つ左足甲が突如痛み出した。対策として一回り大きい27cmのシュ-ズを履いているのだがそれも叶わず、靴の紐を更に緩め対処し、これ以上痛くならないことを祈った。秋田南バイパスを過ぎた辺りでこの旅初めての海が現れる。本州縦断フットレ-スに国道と海は欠かせない。これから長らく見続けるであろう日本海を前にして、自ずと気持ちも高ぶってきた。眠気も感じていたので、デイリ-での補給後、店の横壁の軒下でザックを枕に、脚を伸ばし5分間目をつむる。仮眠は5分もあれば充分で、その間脚を伸ばして休ませられることも大きい。
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CP5(秋田市街・山王十字路交差点、179.7㌔)
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左足甲まで痛み出した  ※これは大会前から抱えていた不安箇所
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ガラスの看板が綺麗
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ようやく日本海に出た

海に並行した街道を進みかけた頃、僕の行く手に、車を止めてこちらを伺う女性がいた。やがて距離が詰まると、『フットレ-スの選手の方ですか?』との第一声。どうやらこの女性は前を行く武井選手のサポ-タ-らしく、一つ後ろ(と言っても、30㌔後方)の僕のことを気にかけてくれたらしい。この時僕はちょうどスマホから音楽を流し、気合いを入れたところだった。人間辛い状態の中に長らくいると、思わぬ人の優しさを前に、通常では有り得ない仕草を起こしてしまう。この時僕は彼女と当然初対面だったのだが、励ましの言葉を掛けられ、彼女がアミノゼリ-を差し出してくれた瞬間、不覚にも面と向かって泣いてしまった。幸いサングラスをしていたお蔭で涙は見られなかったと思うが、鼻や口元は明らかに泣いていたから完全にバレていただろう。武井君と一緒に今日は私の家に泊まって下さい・・。そこまで言ってくれ、その一言もとても嬉しかった。
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由利本荘24㌔(16:22)  ※まだまだ遠いなと思っていたら、その後2分で由利本荘市
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由利本荘市(16:24)  ※結局この差は、市役所位置と市境の違い

18時、道の駅岩城を通過。ここから今日の宿まではまだ20㌔近くある。右手に夕陽を眺めながら気持ちは幾分ハイにはなっているが、何せ脚が思い通りに動かない。日が暮れる前にどれだけでも進んでおきたかったが、全く走れなかった。やがて反対方向から一人の若者がテクテクとこちらに向かって歩いてきた。徒歩で日本を一周しているという24歳のその青年は、毎日45㌔歩き、道の駅で寝袋泊をしながら進んでいると言う。こうして選手に声を掛けられたのは、僕で7人目だとも言っていた。やがて日が暮れ、夜の部に突入。日没は18時半頃だが、その後30分以上はヘッドライト無しでも充分過ごせる。何もない海沿いの街道、歩道を進む僕のヘッドライトの明かりだけが暗闇の中で輝いていた。夜になると気も沈み、残りの距離が日中以上に長く感じるようになってくる。まだかまだか・・と思うが、一向に距離は縮まってくれない。日没以降は寒さも増し、今夜もフル防寒で過ごすことになった。
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線路に並行した海沿いの道を進む
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夕焼け
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日本一周中の若者  ※僕の長女と同い年
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日没

本日のゴ-ルを射程圏内に収め、その手前のすき家で遅い晩飯を取る。今日も中々大変だったが、一先ずは最初の3日間を何とか終えることが出来た。初日のスタ-ト時刻が5時や6時ならまだ良かったが、10時スタ-トだった為、初日の夜間走始め寝不足になることは必至で、最初の3日間が最大の壁かなと大会前から思っていた。明日(62㌔)、明後日(61㌔)は距離も短いので、調子を戻しながら、ここまで無理のあった一日のサイクルを何とか立て直したい。ホテルの大浴場で体重を計ると驚きの63.5kg。毎日これだけ動いているのに何故か3kg以上増えていた。脚は痛いが、食べれるうちはまだまだ進める。頑張れ、俺!
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遠かったぞル-トイン
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部屋に入れば全てがリセットされる(22:20)


ホテルル-トイン由利本荘(由利本荘市)泊


すき家(チ-ズ牛丼並ランチ650円) ドラッグストア(エア-サロンパス968円) デイリ-(シュ-クリ-ム118円、ホットコ-ヒ-100円) ファミマ(ファミチキ180円) ロ-ソン(おにぎりシ-チキンマヨネ-ズ96円、鶏五目おにぎり104円) すき家(ねぎ玉牛丼大盛り610円) 宿(朝食バイキング付き5800円)  計8626円
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| 本州縦断レ-ス2021 | 17:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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