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あの時の足跡

これは僕が走り始めて何年か経った頃の話である。
僕は毎朝近所の峠を走っているが、大雨が降ろうと大雪が積もっていようと大概は走っている。
そしてある冬の朝、ふと記憶にない奇妙な足跡を見つけた。

車すら滅多に通らないこの峠、それも冬の寒い朝に走る者など僕以外いるはずがない。
常識から考えれば、それは真っ当な考えではあった。
どう考えたって、何度考えたって自分の足跡としか思えない。
しかしその奇妙さは、日に日に増していくことになる。

そこである日、僕は試してみることにした。
普段は絶対に走らない道路脇だけを走り、あえて車道には足跡を付けなかった。
そして翌朝、峠前後の雪面の状況を伺う。
やはり、何かがおかしい・・。

何故、道路中央に足跡があるんだ・・。
それにこの雪は昨晩降り積もったばかりの新雪のはず。
僕以外の誰かが、夜明け前にこの峠を走っているとでもいうのか。
絶対に有り得ない・・。

そして、それからどれくらい経っただろうか、
僕と瀧さんの出会いをきっかけに、国府ウルトラ(ただの飲み会)なるものが発足した。
皆さんそれぞれ面識があったようだが、走歴の浅い僕は当然初めて見る方ばかり。
そこでたまたま僕の隣に座っていた青年と瞬時にして意気投合。
つながりは、互いに元バックパッカ-だったこと。
そしてあの足跡の正体は実は彼だった、という衝撃の事実もその時に判明した。

その後も何かにつけてメンバ-は集い、日付が変わるまで語らい、浴びる程酒を飲んだ。
そんな中、足跡の彼は日本一過酷な山岳レ-スを目指していると知る。
僕もずっと気になっていた大会だが、こんな近くに本気でそれを目指していた人がいたなんて・・。
彼には再度驚かされた。

2年毎に開催されるこの大会は、厳しい予選の末に抽選という理不尽な要素が待っている。
そしてこの年彼は難なく予選を突破し、運良く抽選も通った。
そして迎えた、2018年の夏。
僕は仲間とともに彼の完走を願い、山にも応援に行った。
しかし彼は僕らの予想に反し、いつしか大会の主役へと躍り出てしまった。
そしてそのまま、彼は誰よりも先に太平洋に飛び込むことに。

確かにあの足跡を最初に目にした時、これはなんかヤバいな・・と思ったことを覚えている。
今年の冬も、僕は毎朝峠の雪道に自分の足跡を付けている。
そしてたまに彼の足跡を見つけると、何だか無性に嬉しくなってしまう。
こんなクソ寒い雪の中、あいつも頑張ってるんだ・・。
彼の足跡を見る度に、僕の脳裏にはあの夏のシ-ンが蘇ってくる。

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| 国府ウルトラ | 22:55 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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