第13回佐渡島一周エコ・ジャ-ニ-208km(4)~ゴ-ルまで
・・前回の続き
長く辛かった夜が明け、大会2日目の朝を迎えた。せめて夜明け前に小木(152㌔)くらいは最低到達しておきたかったが、遠く及ばず。一人で走る小木の町。個人的にも何かと思い入れのある小木の町だが、通過はどことなく慎重になる。昨年ここで一緒になった奈良のIさんは、小木で16㌔程ロストしていたし、今回もまた小木で同じ距離をロストしたランナ-がいた。おそらく同じ場所で間違えたんだと思うが、実は僕も一つミスをしかけた。橋を渡り、150.9㌔地点。地図を見れば注意書き(注-7)がされており迷いようもないのだが、この時の僕は地図を全く見ていなかった。その為道路標識に従い、ここは国道方面へと直進する。しかしその道は細く、港方面から離れ内陸へと上っていった。いや待てよ、昨年こんな所通ったかな・・。直ぐに異変に気付く。歩いて交差点へと戻ると、やはりそこに左折看板が出ていた。危なかった。港沿いの広い道路を進み、やがてフェリ-乗り場が見えてきた。昨年立ち寄ったス-パ-は開店が8時半だった為、楽しみにしていたアイスは食べることが出来ず。小木の町中は折れ点が多く確かに分かり難かったが、偶然居合わせたベテランランナ-の完璧なコ-ス取りで事なきを得た。

『小木』と言えば、たらい舟

千石船展示館 ※正面扉が少し開いており、中が覘けるようになっている
そして今回初めて立ち寄った、宿根木(しゅくねぎ)集落。昨年は気付かずそのまま大回りしていたが、そもそもこれが正規のコ-スとなる。その上ショ-トカットも出来るし、若干観光気分も味わえるので、ここは確実に立ち寄った方がいい。宿根木は国選定の重要伝統的建造物群保存地区。江戸後期から明治初期に盛んであった北前船の寄港地として発展した町で、船大工が手がけた建物の面影が保全されている。女優・吉永小百合を採用したJR東日本のポスタ-撮影地としても有名なんだとか。この時僕は一体どこが見所なのか全く分からなかったが、こうして今知識を得たことで、来年は意識して通ってみたいと思う。

宿根木集落の三角家 ※ここが一番有名なスポットらしい

ボカ地区カミニ-ト(アルゼンチン) ※三角家を見て、僕は真っ先にここを思い出した
次に目指すのは、いよいよ160㌔の最終エイド。しばらく頑張って走り、9:05、ようやく第4エイドの深浦展望台(159.8㌔)に到着。ここでは確か缶ビ-ルがもらえた筈なのに、無い・・と言われてショックを受ける。その後休憩を終える頃になって運ばれてきたが、既に飲む気は失せていた。このエイドでチョイスしたカップラ-メンは先程の第3エイドでは選ばなかった、カップヌ-ドル・ナイス。名前からして、これが実に美味かった。濃厚な豚骨味で具材も多く、激辛シ-フ-ドとは雲泥の差だった。9:37、スタッフの拍手に見送られ、エイドを発つ。最終エイドということもありつい長居してしまったが、この後の50㌔に備えて充分な休息が出来た。

第4エイド 深浦展望台(159.8㌔)

このカップ麺は結構いける
前後に全くランナ-の気配のない中、海沿いの集落を駆け抜ける。昨日は前半小雨交じりの天候だったが、ランニングには絶好のコンディションだった。そして大会2日目の今日は、予報通り天気がいい。しかしそれは逆に困ったもので、真夏が戻ってきたかのような猛暑に急激に体力を奪われた。側溝を見つけては水を被ろうとするが、そもそも大概の側溝に水は流れていない。外で何かを洗っていた農家の方にお願いし、頭から水をかけてもらうと生き帰った気がした。素浜海岸辺りは心が折れそうな程、単調な道がただひたすら真っ直ぐに延びていた。ここでも睡魔に勝てず、堪らず草むらに横たわり、タイマ-をかけて5分睡眠。日中の仮眠は寒さに震えることもなく、暖かい太陽の下、5分間爆睡出来た。しかし5分の差は大きく、先程から前後していた女性の姿は、その後一切見かけなかった。

ゴ-ルも視界に入ってきたが、ここからが遠い

朱鷺(とき)発見! ※と一瞬興奮したが、ただのカカシだった

睡魔に勝てず、この後草むらで5分爆睡 ※日中は寒くないので仮眠に最適
トイレの外蛇口で水を頭から浴びていると、昨夜から度々見かけている昨年の同宿ランナ-が追い着いてきた。先程最終エイドでは少し仮眠を取ると言って横になっていたが、もう追い着かれてしまったようだ。確かにここまでの区間には、自分でも時間がかかり過ぎたと感じていた。彼は脚が痛いらしくもう走れないと言っていたが、とにかく歩くスピ-ドが速かった。その後の長い坂道の上りでは全くついていけなかったが、下りや平坦に入ればやはり走っている僕の方が速く、振り返っても次第に姿は見えなくなっていた。その後しばらくして再び現れた長い坂道を上り切り、倉谷の大わらじを通過。ここから海に至る区間が無駄に長く、かなり心が折れた。坂道を下り、ようやく海に出た。昨年食べたソフトクリ-ムを今年も食べたかったが、時間が勿体ないので敢え無くスル-。海沿いの道が、単調過ぎてこれまた辛い。遥か先が見えている分、走る気力は失せ、ここで多く歩いてしまったことに悔いが残る。確かに昨年もこの辺りからの10㌔が最も苦しんだ区間であった。

人面岩
ようやく町に入った。歩道は段差があって走り難いので、自ずと車線の白線上を走ることになる。車もそれなりに通るので、あまりフラフラ走りもしてられない。先程までの単調な道とは違い景色は変わりゆくが、頑張って走ったつもりでも、思った程進んでいない状況に心がめげた。道を間違えてやしないかと心配になり、道路沿いに家を構えるご婦人に訊いてみた。『このまま行くと商店街ですか?』。2階で洗濯物を干していたご婦人は僕の言っていることが理解出来ず、旦那さんを呼んでくれた。なんか歩いている人が道を尋ねてるんだけど・・。ご夫婦で外まで出て来てくれ、僕のゼッケンを見て一言。佐渡を歩いて一周しているんですか・・。確かにゼッケンには『佐渡一周エコジャ-ニ-ウルトラ遠足208km』と書いてあり、旦那さんには『遠足』と言う文字が目に留まったのだろう。しかしここは大事なとこなので、それをきっぱり否定しておく。『いや、歩いてるんではなく、徹夜で走ってるんです!』。ご夫婦のビックリした様子が印象に残る。再び睡魔にも襲われ、堪らず車道脇にうずくまり5分睡眠を取ったりと奮闘はその後も続いた。

町中のス-パ-で待望のガリガリ君
河原田本町に入り、そのまま町中の道路を真っ直ぐ進めば近いようだが、ここは海岸沿いのル-トに出た方が走り易くて断然いい。距離は少し延びてしまうが、何せ町中は歩道は走り難いし、車線は危ないし、とにかくストレスが溜まる。海岸沿いに出れば、トイレはあるし、景色は素晴らしいし、とにかく気分がいい。消費期限の過ぎた(これでもエイド提供物)パサパサおにぎりをボロボロ落として食べながら、何とか海岸沿いを走り切った。ここまで来れば、ゴ-ルは現実味を帯びてくる。24枚あった地図も、いよいよ最後の1枚となった。

走れるなら断然海岸沿いがベスト

ここまで来れば後少し
つい先程まで苦しめられていた対岸を横目に、相川火力発電所を順調に通過。坂道を上り切った辺りでヘッドライト点灯。既に残り5㌔を切っており完走は間近だが、時間との闘いが始まっている。地名を頼りに残りの㌔数を伺っているが、同じ地名看板が幾度と現れるのには心底参った。折角新たな集落に入り、ようやく後何㌔かと喜んでいても、その後しばらくして再び同じ地名看板が現れ騙された気分になる。ラスト約2㌔にて下りに差し掛かった頃、僕は一気にペ-スを上げた。今回もまた目標とは程遠い結果に終わった。当初目標『32時間切り』として挑んだが、それが『せめて34時間くらいで』に変わり、それも叶わず『最低36時間くらいは切っておきたい』に順次下方修正。しかしそれも叶わず、『最悪36時間台くらいは是が非でも』と半ば自棄になっていた。どこにそんな力が残っていたのか、最後の2㌔で先行者2人を抜かし、何とか根性で36時間台だけはクリアした。

相川火力発電所 ※陽よ暮れないで
昨年は3人でゴ-ルしたが、今年は1人でのゴ-ル(18:54)。ゴ-ルを意識してからのホテルめおとが遠かった。階段を駆け足で上り、拍手に迎えられてロビ-にてゴ-ルチェック。完走証用に写真を撮ってもらう。早速同階の部屋へと移るが、5人中既に2人がゴ-ルしていた。階下の浴場へと向い、ここで昨年の反省を活かす。昨年はここで湯舟に浸かったが為、その後1週間生死を彷徨うことになった。今回はシャワ-だけで軽く済ませ、その上、入浴前後には水分を十分に摂っておいた。甲斐あって入浴後に脱力感はなく、立ちくらみも起きなかった。ロビ-へと戻り、ゴ-ル後提供のハヤシライスとソ-セ-ジス-プを頂く。例年と同じメニュ-だが、これが凄く美味しい。ビ-ルも1缶貰え、外で飲みながら、家族にゴ-ルの電話を入れておく。そして部屋に戻ると部屋のランナ-は皆揃っており、20時半に僕らの部屋は消灯となった。

ゴ-ル後のハヤシライスとス-プは最高!
つづく・・
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| 2018 | 22:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑