晩秋の笠ヶ岳(1)~小3ナナ日帰りに挑む



やったね、笠ヶ岳登頂だ!
10/21金曜日の夜、慌ただしく仕事を切り上げ、急いで帰宅する。しかし今日夕方行われるはずだったナナのソロバン教室の級検定が、急遽明日に延期されたのだと聞かされる。テンションがた落ちの僕、ナナはこれで山が中止になったと一人喜んでいた。しかし、そんな訳はない。後は出発するだけの状況にいたが、ソロバンは大事だし、検定料も勿体ない。仕方なく登山を一日延期。そうして突如空いた土曜日は、嶺花の中学校新人戦(柔道)の応援に行くことになった。わざわざ行った甲斐あって、個人戦1年生女子の部で見事決勝に進出。午前中の団体戦(他校との混成チ-ムで参加)も含め、ここまで一度も負けていない。しかし団体で負かした相手に惜しくも有効を一つ取られ、個人戦は準優勝に終わった。部員一人で練習もままならないが、何とか成果が出て良かった。そして夕方、僕とナナは山へと向かう。前夜、栃尾温泉荒神の湯にて車中泊。宴会の用意はしてきたが、明日に備え、直ぐに寝に入った。
・・翌日、0時半起床。1時に娘を起こし、すぐさま新穂高へと車を走らせる。そして予定通り1時半、星空の下登山を開始した。長い行程に備え、今回もナナの荷物は免除している。昨年の重荷に比べれば楽勝のはずだったが、出だしからナナの調子が宜しくない。胸の辺りに手を当て、気持ち悪いと言い出してきた。それに見るからに元気がない。しばらく様子見の状態が続く。今日は万を期して挑んでいるだけに、この状況には厳しいものがある。何とか騙し騙し笠新道入口までは行き、最終判断は笠新道に入る前に下そうと思っていた。しかしいつしか体調は戻り、先程までの懸念もすっかり忘れていた。

左俣林道ゲ-ト

笠新道入口 ※水は出ていたが、ここは当てにしない方が無難
ここ笠新道からは、長くて急な上りが待っている。しかし年々体の大きくなっている育ち盛りの娘は、驚く程すいすいと駆け上がっていった。誰だって根を上げてもおかしくはないし、愚痴の一つや二つ出るのが普通だろう。しかしそんな状況下においても、黙々とただ前だけを向いていた。皮肉にもこの笠新道、岩場が多いだけに、登りとしてはアスレチック感覚もあって不思議と飽きないようだ。取りあえず標高1700mくらいまで休まずに進もうと決めていたが、ナナの好調もあり、一気に1920m看板まで進むことが出来た。眼下には麓の明かりが少しだけ見える。先程から槍の肩、大キレットと、登山者の動く明かりが見えている。あの穂先を目指す明かりは、槍山頂での日の出に合わせてのものだろう。双六方面へと左俣林道を直進する明かりもあった。これら同じ山域で同じ闇との闘いに挑む登山者らとは、自ずと仲間意識が生まれてきた。

標高1700m看板(3:34)

標高1800m看板(3:45)

標高1920m看板(4:03)

標高2100m看板(4:44)

私この道、好き系
秋も深まったこの時期、夜が明けるのは本当に遅い。明かり一つない暗闇の山中に身を置いている訳だが、見た目程怖さは感じていない。それはラジオの影響が大きい。熊対策も兼ねて、気晴らし目的が主で深い山で僕は大概ラジオを付けている。深夜の番組なのか朝の番組なのか微妙な時間帯ではあるが、闇にラジオは欠かせない。今日のプロトレックは、標高にして100m程の誤差がある。だが標高看板の存在から、既に誤差修正は頭の中で出来ている。そして、ようやく杓子平に到着。長くて辛い笠新道、一先ずここが目指したゴ-ルの一つであった。目の前には笠ヶ岳がドカ~ン!・・のはずが、期待した笠は深い雲に覆われていた。ここでヘッドライトをザックにしまい、目の前に聳える抜戸の稜線を目指す。近そうで遠いけど、目標が見えている分、頑張り甲斐はある。

県境尾根(槍穂稜線)に朝の気配

ようやく杓子平 ※ここでヘッドライト撤収

あの稜線を目指せ

今日の水はタンク2つで計3.5㍑

辺り一面が雲海

まるで神様になった気分

稜線近し
そして7時前、抜戸の稜線に出た。さすがに稜線は寒く、慌てて防寒対策を施す。藪に身を寄せ風を避けての休憩中、笠方面からの下山者がやって来た。この日初めて会う登山者は、昨夜笠のキャンプ地にテントを張ったそうな。外国の僻地で日本人と出会う時のように自ずと話も弾み、しばし単独行青年との話を楽しんだ。最奥の笠ヶ岳へと続く一本道。迫り来る様は、実に圧巻である。左手に日本を代表する槍穂高連峰、右手には黒部の奥深い秘境の山域を従えながら、切り立った抜戸岩を通過する。この稜線上、他にも2組の登山者と擦れ違った。

ついに笠ヶ岳(最奥)を捉えたぞ

薬師(右奥)方面も良好

抜戸岩

槍ヶ岳 ※夜明け前、肩に登山者の明かりが見えていた
笠ヶ岳山荘が見えてくると、往路の終わりも近い。左手斜面下に広がる播隆平、その向こうにはポッコリした緑ノ笠が印象に残る。深い這い松で覆われた、緑ノ笠。無駄足となるが一度くらいは行ってみた方がいい。キャンプ地を通過し、前週閉館となった山荘にて小休憩。山頂へと連なる石の歩行路は、登頂者を迎えるウイニングロ-ドのようだ。この石畳にしろ、縦走路にしろ、笠新道にしろ、道を付けてくれた先人の苦労の上に、僕等はそこを歩かせてもらっている。その昔、山は神の領域であった。修行僧が高峰への道を切り開いたことが、近代登山史の幕開けとなった。登る目的に多少の違いはあれど、厳しさに挑む姿勢は変わらない。山頂標柱なんて所詮持って20年、山荘なんて所詮50年、人間なんて所詮90年・・。だけどここから眺める飛騨の壮大な山並みは、この先何百年何千年も決して変わることはないだろう。

山荘が見えたぞ

焼岳(左)と緑ノ笠(手前)はこう見ると似ている

ガンバレ、あと一息

最高の後押し

閉ざされた笠ヶ岳山荘 ※山歩きはこの時期が一番いい

笠ヶ岳(標高2898m)
つづく・・
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| '16山行記録 | 21:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑