白馬岳(1)~大雪渓を行く
第5子の四女ナナを誘い、遠路長野県白馬村へと向かった。道の駅白馬までは、自宅から車で2時間40分。そして前夜、ここで車中泊。ここへ来る途中、何度か大雨に見舞われた。一瞬不安が頭を過ったけど、今回は雨でも山に入ると決めていた。最近は近場の山で済ませていたので、こんなにも遠くに来たのは随分と久しぶりだ。と言っても、関東や関西から遥々やって来る登山者に比べれば断然恵まれている方だろう。娘の今年一番の挑戦として、昨年登れなかった笠ヶ岳へのリベンジを考えている。それを、笠新道からの日帰りで。今日はその予行練習、長い行程に慣れてもらうことが今回の狙いである。
翌朝起床後、登山口となる猿倉へと車を走らせた。猿倉までは20分で到着。バス停に停まった大型バスから登山者が続々と降りてくる。さすがメジャ-な山だな。今のところ雨は降っておらず、天気が崩れる心配は抱いていない。そして予定通り、5時登山開始。猿倉を発ち一旦山道を進み、やがて林道へと入る。白馬には少なくても3回以上は登っているが、この林道のことは記憶にない。しばらく林道を歩き、再び山道に入った。木道が現れ始めたら白馬尻小屋も近い。ここに限らず、小屋が近付くと人の気配を感じるものだ。

白馬岳登山口(猿倉荘)

鑓(やり)方面分岐 ※断然、白馬三山周回の方が楽しい

今日の目的は、笠日帰りに向けた予行練習
登山者を快く出迎えてくれる大岩は、今でも健在だった。この岩のことはよく覚えているし、白馬登山の思い出として占める割合は大きい。9年前岳登と白馬三山を縦走した時、初雪渓だった僕はここで軽アイゼンを購入した。それ以来、使用頻度こそ少ないものの、今でも大切に同じ物を使っている。小屋からは大雪渓や稜線が見渡せ、トイレや水場も使用出来る。ベンチに腰掛け、朝食におにぎりを頬張った。朝食は少し歩いてから食べた方が断然美味しく頂ける。これから目指す遥か彼方、雲行きが何だか怪しい。大所帯のツア-らしきパ-ティ-が2団体、休憩を終え今にも出発しそうであった。団体が発ち数分後、僕等も休憩を終えた。

白馬尻小屋

雲上へと続く雪の渓谷
白馬尻小屋まで来れば、大雪渓はそう遠くはない。早くも先行するツア-に追いついてしまった。おそらくガイドはこの団体の先頭を歩いているのだろう。そして最後尾にはヘルメットを被ったサブガイド・・。と思いきや、どうやらツア-客の一人のようだ。長い列を成し歩く団体は、最後尾にこそ経験豊富なリ-ダ-を置いてほしいものだ。そして常に後ろに気を配り、追い着いた後続者には率先して道を譲ってほしい。しかしこのツア-は他者に対する配慮が欠けていた。それが可能であったにも関わらず、結局雪渓に辿り着くまで延々と後続の列を伸ばし続けていた。

嫌な予感は的中し、ツア-の大渋滞につかまる
大雪渓入口でアイゼンの装着に戸惑うツア-一行。再び出遅れたら大変だと、アイゼンを2人分急いで装着し、団体より先にスタ-トを切った。さすがは大人気の白馬岳。山小屋が充実していれば、自ずと登山者も増えてくる。白馬大雪渓は、針ノ木雪渓や剱沢雪渓と並び日本三大雪渓の一つに称えられている。雪渓に連なる登山者の長い列は、白馬登山の風物詩ともなっている。斜度はそこそこ急だし、所々見られるクレバス(割れ目)や落石等、危険な要素も多い。万が一不遇に見舞われれば、人間の力ではとても太刀打ち出来ない。

ナナ、初雪渓

雪渓下部に連なる登山者の群れ

稜線が見えている分、やる気は出る

テン泊組が多い

クレバス注意
休憩抜きで一気に登り、団体とは既に大きな差をつけた。この辺りから、埼玉の男性との前後がしばらく続く。テントを担ぐ単独行のその男性に対し、今日のナナは荷物なしでの軽装登山。昨秋のテント行では、明らかに脚よりも肩に悲鳴を上げていた。ナナの笠ヶ岳日帰りを想定した場合、行程の長さから荷物はなしでもいいから、辛い登り下りにだけは打ち勝ってもらわなければならない。右手に所々岩肌が現れ始めた。延々とどこまでも続きそうな、長い長い雪渓歩き。雪渓から外れて休憩する登山者を横目に、雪渓終点目指し僕等はひたすら登り続けた。今日の気温はどこか不安定で、暑くなったり寒くなったりと一つに定まってくれない。冷たい風が心地良いと思っていたら、その直後、ドライヤ-のような熱風に切り替わる。上着を着たり脱いだりを繰り返し、体温調整に難儀する。

堪らず岩肌で休む登山者

脚が痛い(筋肉が疲れる)らしい
子供の登山は『飽き』こそが最大の敵。どこか冒険的な要素を含む真夏の雪渓歩きこそ、飽きが生じない要素であると当初見込んでいた。しかし雪渓歩きも意外と疲れるようで、後半明らかに口数が減ってきた。この曇り空では遠くの眺めは期待出来ないが、目の前の稜線はよく見えている。あそこまで上がれば・・。時間や標高を把握する術を持たない、子供の唯一の拠り所となっている。ナナの歩き方が何だかヘンになってきた。腰がフニャフニャと曲がっており、後ろから見てもやる気の無さが伝わってくる。やがて右手に多くの登山者が寛ぐ姿が見えてきた。どうやら、あそこが登山道への取付地点のようだ。

まだかな・・

でも結構来たな・・

ヨシついてこ!

やっぱダルいな・・

ようやく雪渓が終わった
登山道への取付地点で、他の登山者に混じって休憩とする。大岩から滴り落ちる水が、音を立てとても涼しげだった。ここでの休憩もそうだけど、白馬登山は何かと気を遣う場面が多い。石を落とさないよう、受けぬよう常に細心の注意を払っていなければならない。雪渓歩きの時は受ける側としての注意だが、登山道を歩く時、休む時は石を落とす側の注意となる。登山道で休むにしても、本当は呑気に休んでばかりもいられない。誰もが石を落とさぬよう心掛けてはいるだろうが、これだけの登山者が行き来していたら、偶発的に何が起こるか分からない。石は落ちてくるもんだ・・、そう思っていた方が事故は防げると思う。あまりにも安心しきっている登山者が多く見られ、余計にそう感じた。

雪渓を行く登山者(自分も含め)、

巨大地震が来たら間違いなく皆もろとも

登山道取り付き

道中、水には一切困らない

涼しげな夏の白馬

人間の存在なんて所詮米粒程度
白馬の大雪渓を終えると、その先にはご褒美のお花畑が待っている。ここを楽しみに登って来る登山者も多いだろうし、折角白馬岳に登って高山植物の写真を撮らないのも勿体ない気がする。様々な色彩の可憐な花々は、疲れた体と心を充分に癒してくれた。大雪渓とお花畑、これこそがこの白馬登山の醍醐味であり、この山をここまでメジャ-にした立役者だろう。稜線までは、もうそんなには遠くない。雪渓後半に疲れを見せていたナナは、いつしか元気になっている。

タカネナデシコ

シロウマアサツキ

ミヤマタンポポ

ミヤマキンポウゲ
つづく・・
翌朝起床後、登山口となる猿倉へと車を走らせた。猿倉までは20分で到着。バス停に停まった大型バスから登山者が続々と降りてくる。さすがメジャ-な山だな。今のところ雨は降っておらず、天気が崩れる心配は抱いていない。そして予定通り、5時登山開始。猿倉を発ち一旦山道を進み、やがて林道へと入る。白馬には少なくても3回以上は登っているが、この林道のことは記憶にない。しばらく林道を歩き、再び山道に入った。木道が現れ始めたら白馬尻小屋も近い。ここに限らず、小屋が近付くと人の気配を感じるものだ。

白馬岳登山口(猿倉荘)

鑓(やり)方面分岐 ※断然、白馬三山周回の方が楽しい

今日の目的は、笠日帰りに向けた予行練習
登山者を快く出迎えてくれる大岩は、今でも健在だった。この岩のことはよく覚えているし、白馬登山の思い出として占める割合は大きい。9年前岳登と白馬三山を縦走した時、初雪渓だった僕はここで軽アイゼンを購入した。それ以来、使用頻度こそ少ないものの、今でも大切に同じ物を使っている。小屋からは大雪渓や稜線が見渡せ、トイレや水場も使用出来る。ベンチに腰掛け、朝食におにぎりを頬張った。朝食は少し歩いてから食べた方が断然美味しく頂ける。これから目指す遥か彼方、雲行きが何だか怪しい。大所帯のツア-らしきパ-ティ-が2団体、休憩を終え今にも出発しそうであった。団体が発ち数分後、僕等も休憩を終えた。

白馬尻小屋

雲上へと続く雪の渓谷
白馬尻小屋まで来れば、大雪渓はそう遠くはない。早くも先行するツア-に追いついてしまった。おそらくガイドはこの団体の先頭を歩いているのだろう。そして最後尾にはヘルメットを被ったサブガイド・・。と思いきや、どうやらツア-客の一人のようだ。長い列を成し歩く団体は、最後尾にこそ経験豊富なリ-ダ-を置いてほしいものだ。そして常に後ろに気を配り、追い着いた後続者には率先して道を譲ってほしい。しかしこのツア-は他者に対する配慮が欠けていた。それが可能であったにも関わらず、結局雪渓に辿り着くまで延々と後続の列を伸ばし続けていた。

嫌な予感は的中し、ツア-の大渋滞につかまる
大雪渓入口でアイゼンの装着に戸惑うツア-一行。再び出遅れたら大変だと、アイゼンを2人分急いで装着し、団体より先にスタ-トを切った。さすがは大人気の白馬岳。山小屋が充実していれば、自ずと登山者も増えてくる。白馬大雪渓は、針ノ木雪渓や剱沢雪渓と並び日本三大雪渓の一つに称えられている。雪渓に連なる登山者の長い列は、白馬登山の風物詩ともなっている。斜度はそこそこ急だし、所々見られるクレバス(割れ目)や落石等、危険な要素も多い。万が一不遇に見舞われれば、人間の力ではとても太刀打ち出来ない。

ナナ、初雪渓

雪渓下部に連なる登山者の群れ

稜線が見えている分、やる気は出る

テン泊組が多い

クレバス注意
休憩抜きで一気に登り、団体とは既に大きな差をつけた。この辺りから、埼玉の男性との前後がしばらく続く。テントを担ぐ単独行のその男性に対し、今日のナナは荷物なしでの軽装登山。昨秋のテント行では、明らかに脚よりも肩に悲鳴を上げていた。ナナの笠ヶ岳日帰りを想定した場合、行程の長さから荷物はなしでもいいから、辛い登り下りにだけは打ち勝ってもらわなければならない。右手に所々岩肌が現れ始めた。延々とどこまでも続きそうな、長い長い雪渓歩き。雪渓から外れて休憩する登山者を横目に、雪渓終点目指し僕等はひたすら登り続けた。今日の気温はどこか不安定で、暑くなったり寒くなったりと一つに定まってくれない。冷たい風が心地良いと思っていたら、その直後、ドライヤ-のような熱風に切り替わる。上着を着たり脱いだりを繰り返し、体温調整に難儀する。

堪らず岩肌で休む登山者

脚が痛い(筋肉が疲れる)らしい
子供の登山は『飽き』こそが最大の敵。どこか冒険的な要素を含む真夏の雪渓歩きこそ、飽きが生じない要素であると当初見込んでいた。しかし雪渓歩きも意外と疲れるようで、後半明らかに口数が減ってきた。この曇り空では遠くの眺めは期待出来ないが、目の前の稜線はよく見えている。あそこまで上がれば・・。時間や標高を把握する術を持たない、子供の唯一の拠り所となっている。ナナの歩き方が何だかヘンになってきた。腰がフニャフニャと曲がっており、後ろから見てもやる気の無さが伝わってくる。やがて右手に多くの登山者が寛ぐ姿が見えてきた。どうやら、あそこが登山道への取付地点のようだ。

まだかな・・

でも結構来たな・・

ヨシついてこ!

やっぱダルいな・・

ようやく雪渓が終わった
登山道への取付地点で、他の登山者に混じって休憩とする。大岩から滴り落ちる水が、音を立てとても涼しげだった。ここでの休憩もそうだけど、白馬登山は何かと気を遣う場面が多い。石を落とさないよう、受けぬよう常に細心の注意を払っていなければならない。雪渓歩きの時は受ける側としての注意だが、登山道を歩く時、休む時は石を落とす側の注意となる。登山道で休むにしても、本当は呑気に休んでばかりもいられない。誰もが石を落とさぬよう心掛けてはいるだろうが、これだけの登山者が行き来していたら、偶発的に何が起こるか分からない。石は落ちてくるもんだ・・、そう思っていた方が事故は防げると思う。あまりにも安心しきっている登山者が多く見られ、余計にそう感じた。

雪渓を行く登山者(自分も含め)、

巨大地震が来たら間違いなく皆もろとも

登山道取り付き

道中、水には一切困らない

涼しげな夏の白馬

人間の存在なんて所詮米粒程度
白馬の大雪渓を終えると、その先にはご褒美のお花畑が待っている。ここを楽しみに登って来る登山者も多いだろうし、折角白馬岳に登って高山植物の写真を撮らないのも勿体ない気がする。様々な色彩の可憐な花々は、疲れた体と心を充分に癒してくれた。大雪渓とお花畑、これこそがこの白馬登山の醍醐味であり、この山をここまでメジャ-にした立役者だろう。稜線までは、もうそんなには遠くない。雪渓後半に疲れを見せていたナナは、いつしか元気になっている。

タカネナデシコ

シロウマアサツキ

ミヤマタンポポ

ミヤマキンポウゲ
つづく・・
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| '16山行記録 | 11:20 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑