新市街を抜け、大砲のある展望広場からタンジェ港を見下ろす。
フランス広場を右に折れ、グラン・ソッコで一休み。
メディナ入口に位置するこの広場は、町のランドマ-クとなっている。
目抜き通りの展望広場
揚げパン何も考えず、メディナを少しさまよってみる。
ある店の軒先で足が止まった。
この店の売り物には全て値段表記がされているが、どれも驚く程安かった。
他の店で散々値切ったとしても、中々ここまでの金額にはならないだろう。
化石、鉱石が安いモロッコ通貨はほとんど残っていないが、こんないいチャンスは逃したくない。
嶺花に叱られるのは目に見えているが、飯抜きにしてでも石が欲しい。
食事は一瞬の満足で終わるが、石はここでしか買えないし、何より物としてずっと残っていく。
マラケシュで買ったことを悔やむ程、ここはとにかく安いのだ。
フェズのメディナでは鉱石の標本150DHを50DHに値切り、『ゴウ・ウェイ(あっち行け)!』と怒鳴られ、嫌な思いをしていた。
あのクソ野郎め~、標本は50DHもしないじゃないか。
アンモナイトも欲しいし、化石も欲しい。
デザ-トロ-ズも欲しいし、鉱石はもう一つくらいあってもいい。
迷った挙句、標本の中サイズを一つ買った。
嶺花は半分呆れているが、ここは親の権威を強引に通させてもらった。
すまんレイ、飯は諦めてくれ!
さて明日の予備金20DHにも手を付けてしまい、残り31DHとなってしまった。
この僅かな残金を、後々悔いを残さぬよう有効に使うしかない。
薄焼きロ-ル。
マラケシュやフェズで、朝食としてよく歩きながら食べていた。
これは、薄く伸ばしたパン生地をロ-ル状に巻いたもの。
ジャムやマ-ガリンを入れるとその分高くなるので、いつもシンプルなままで頼んでいる。
薄焼きロ-ル卵焼き系スイ-ツ、一つ1DHなり。
この町の屋台スイ-ツはどこも1DHと良心的で、僕等のような貧乏旅行者には大変嬉しい。
ポップコ-ン1DHは、モロッコでの最安値となる。
モロッコ各地を回ってきたが、中々この値段では食べられない。
嶺花のお気に入りなのだが、屋台は夕方以降しか現れない。
グラン・ソッコ
ポップコ-ン屋台カスバを目指して坂道を上り、迷路のような住宅街を奥へ奥へと進んで行く。
オレンジ色の灯りが路地を照らしているが、人影は少なく、たまにたむろする若者に出くわす。
あまり係りたくない人種だが、必ず声を掛けられる。
女性の一人歩きは気を付けた方がいい。
カスバの端にあるビュ-ポイントを目指しているが、その場所がよく分からない。
しかし一先ず博物館を目指したら、その先にビュ-ポイントがあった。
ここからはタンジェ港が見渡せ、遠くスペインの明かりが見えていたはずだったが、この日は確認出来なかった。
坂を下り、メディナをさまよい、何とかグラン・ソッコまで戻ってこれた。
ほとんど適当である。
夕方から嶺花に元気がないのが、今一番の悩みである。
食欲がなく、何も食べたくないという。
昨日肉を食べ過ぎたからかな・・とは本人の弁。
明日からのスペインに備え、ミカンとパンを買い溜めておく。
何せスペインは物価が高いので、満足のいく食生活は二人とも期待していない。
先程食べて美味しかった揚げパンが忘れられず、もう一度食べておく。
外は砂糖でまぶされ、中にはハチミツが入っている。
これがすごく美味い。
こうしてベンチで眺めるこの光景が、モロッコ最後の景色となるのだろうか。
何だか少し寂しくなってきた。
旅の終わりにセンチメンタルになるのは、きっと僕だけではないだろう。
港沿いの通りまで下がり、広場の屋台で最後のモロッコを味わうとする。
10DHのサンドイッチにはチキンの串焼きが3本も入り、野菜も多く、この値段では有り得ない。
これまでで一番美味しかった。
タンジェ港
チキン串焼きビュ-ポイントから海の向こうのユ-ラシア大陸を眺めていた時、ここはアフリカ大陸だったんだと改めて実感した。
僕と嶺花はこの数週間、そのアフリカ大陸を駆け巡ってきたのだ。
明日には僕等はもうこの大陸にはいない。
そう思うと、また切なくなってきた。
タンジェ・ホテルMagellan泊-100DHバス(フェズ~タンジェ70DH×2) パン(2.5DH) トイレ(嶺花1DH) トイレ(嶺花1DH) 宿代(100DH) 郵便局(エアメ-ル16.8DH) 揚げパン(2.5DH×2) 鉱石標本(35DH) 薄焼きロ-ル(3DH) 卵焼き系(1DH×2) ポップコ-ン(1DH) 明日用(ミカン1㌔3DH、パン2DH×2) 揚げパン(2.5DH) チキンサンド(10DH) 計326.8DH