塩見を経て蝙蝠へ~後編
【山域】三伏山(2615m)、本谷山(2658m)、塩見岳(3052m)、北俣岳(2920m)、蝙蝠岳(2865m)
【日時】平成23年10月29日
【天候】晴れ
【岳人】岳登(小6)、僕
・・前回の続き
蝙蝠岳(10:10、10:38) 広々とした蝙蝠の山頂に立つ。眺望が良い事は今更言うまでもない。標柱から少し離れて三角点がひっそりと鎮座、直ぐ裏に富士山も見える。山頂直下にはテント跡が見え、真っ先に飛騨山脈赤牛岳を思い出した。そう言えば、あの山も山頂直下にテント跡があった。小屋や付随したテント場のない奥深い長大尾根の場合、幕を張る場所に少なからず悩むところだ。充分山頂を満喫、長居も出来ないので帰路に向け発つとする。ハイマツを潜り、樹林帯を抜ける。振り返ると蝙蝠が徐々に遠ざかっていく。今日は朝から栗を食べながら歩いている。先日岳登と栗拾いしたものを、茹でて持込んでいるのだ。山栗は小粒だが甘く、退屈な林道歩きや辛い登りの気も紛れ、何かと都合が良い。

蝙蝠岳 ※後方は荒川、赤石岳方面

蝙蝠三角点

白峰南嶺

白峰三山 ※写真左下には蝙蝠山頂直下のテント跡

荒川三山

蝙蝠を背に

富士山に励まされ

北俣岳(右)、岩峰(中)、塩見岳(左)と順に目指す

大展望 ※仙丈、甲斐駒、間ノ、仙塩尾根の各ピ-ク

急峻な岩場 ※北俣岳~岩峰間
岩峰(12:15、12:30) この蝙蝠尾根を直進して、登り詰めた先が尾根の終点北俣岳。西に聳える塩見岳へは、左へ回り込む形となる。北俣岳からの眺望は特にいい。この先、急峻な岩場を越え、無名の岩峰へと立つ。休まず一気に塩見岳まで進んでおきたかったが、堪らずここで休憩。休憩後重い腰を上げ、何とか塩見東峰まで登り切る。そして西峰からの岩場を慎重に下り、塩見小屋へと到着した。

岩峰から蝙蝠岳への稜線

木曽山脈 ※左中央のピ-クに塩見小屋
塩見小屋(13:49、13:57) 小屋前の広場では敷物が干され、FMラジオの下、小屋番の女性が小屋の後片付けをしていた。休憩も程々に樹林帯へと下る。通常復路は下りで楽なものだが、考えが甘かった。お陰で蝙蝠山頂で見積もった下山スケジュ-ルも大幅に遅れている。行きに印象すら残らなかった本谷山までのこの区間、やけに長く感じ、ラジオから流れる笑い話にも心から笑えない。『次の川柳です。”苦労して育てた息子が、ニュ-ハ-フ。”』 一瞬頬の線が緩んだが、辛い現実は変わらない。前に進むしかないのだ。一旦コルまで下り、最後の長い登りには本当に参った。

樹林帯が長い

塩見岳を見上げる
本谷山(15:15、15:25) ようやく本谷山。今日の行程で一番辛かった。岳登との立場は既に逆転している。朝は暗くて見えなかったが、ここからも塩見岳を遠方に望む事が出来た。再び下り、そして登る。この無駄な登り返しが非常に辛い。折角苦労して下ったのに、又登らなければならない。何という苦行だ。

本谷山標柱
三伏山(16:09、16:24) そして三伏山。西の空は次第に夕暮れ色に染まってきた。日没前に林道まで下り切るという目標は既に絶望的。しかしここまで来れば、もう一切登りはない。後は下り一辺倒なのだ。休憩後、長らく楽しませてもらった稜線との悲しき別れ。赤石山脈(南ア)の山々をこんな具合に望むのも、今回でもう最後かもしれない。何だか名残惜しい。三伏峠の冬期小屋に立ち寄り、偵察がてら覗き見。大所帯のパ-ティ-が輪を囲み、楽しそうに食事を取っていた。僅かに残っている力を振り絞り、最後の下りに入る。眩しいまでの夕焼けは森を大きく包み込み、その中にいる僕は不思議な気分になってきた。何という美しい光景だ。何度も山を訪れている筈なのに、初めて見る光景だった。僕は思わず言葉を失い、夢中でシャッタ-を切った。森の中は直ぐに暗くなるだろう・・。その想いとは裏腹に、自然の明かりは遅くまで道を照らし僕等を後押ししてくれた。

夕日に染まる三伏山 ※塩見岳は既に遥か彼方

三伏峠冬期小屋

茜色
豊口山間のコル(17:26、17:33) コルの直前まで何とかライトに頼らず歩行が出来た。神秘的な夕焼けに高揚し僕の体力も既に回復、駆け下りるように一気にここまで下ってきた。ここからが用心だ。この鳥倉ル-トのコルよりも下部、裾野が広く、視界がないと誤って別方向に下っていきそうである。足場が悪いと思ったら念入りに足元を確かめ、慎重にル-トを取る。そして林道の看板が目に入った時には、思わずガッツポ-ズが出た。

豊口山間のコル
鳥倉登山口(18:03、18:08) ザックから残りの栗を全て取り出し、岳登が剥いてくれた甘い実を味わいながら林道を歩く。空には満天の星、スタ-ト時に見上げていたものと同じ星空だ。

鳥倉登山口
鳥倉林道ゲ-ト(18:43) 早ければ17時、遅くても20時とゴ-ル時刻を予想していただけに、まずまずの到着時刻だろう。二人共、余力は弱冠残っている。明日は朝から柔道の大会だ。小1から習っている岳登の小学校生活最後の大会となる。僕が山ばかり連れ出している為練習は週一しか出られず、大事な大会前日には3時間睡眠で17時間も歩かされている。まぁ柔道は弱くたって、何事も続ける事が大切だ。子供の頃の僕だってたいして強くなかった。だけど柔道を続けた甲斐あって、大人になり窃盗逃亡犯(高山市)と強盗犯(ペナン)を投げ飛ばし捕まえる事が出来た。おいガク、明日は悔いを残さぬよう思う存分戦ってこい!

鳥倉林道ゲ-ト駐車場
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【日時】平成23年10月29日
【天候】晴れ
【岳人】岳登(小6)、僕
・・前回の続き
蝙蝠岳(10:10、10:38) 広々とした蝙蝠の山頂に立つ。眺望が良い事は今更言うまでもない。標柱から少し離れて三角点がひっそりと鎮座、直ぐ裏に富士山も見える。山頂直下にはテント跡が見え、真っ先に飛騨山脈赤牛岳を思い出した。そう言えば、あの山も山頂直下にテント跡があった。小屋や付随したテント場のない奥深い長大尾根の場合、幕を張る場所に少なからず悩むところだ。充分山頂を満喫、長居も出来ないので帰路に向け発つとする。ハイマツを潜り、樹林帯を抜ける。振り返ると蝙蝠が徐々に遠ざかっていく。今日は朝から栗を食べながら歩いている。先日岳登と栗拾いしたものを、茹でて持込んでいるのだ。山栗は小粒だが甘く、退屈な林道歩きや辛い登りの気も紛れ、何かと都合が良い。

蝙蝠岳 ※後方は荒川、赤石岳方面

蝙蝠三角点

白峰南嶺

白峰三山 ※写真左下には蝙蝠山頂直下のテント跡

荒川三山

蝙蝠を背に

富士山に励まされ

北俣岳(右)、岩峰(中)、塩見岳(左)と順に目指す

大展望 ※仙丈、甲斐駒、間ノ、仙塩尾根の各ピ-ク

急峻な岩場 ※北俣岳~岩峰間
岩峰(12:15、12:30) この蝙蝠尾根を直進して、登り詰めた先が尾根の終点北俣岳。西に聳える塩見岳へは、左へ回り込む形となる。北俣岳からの眺望は特にいい。この先、急峻な岩場を越え、無名の岩峰へと立つ。休まず一気に塩見岳まで進んでおきたかったが、堪らずここで休憩。休憩後重い腰を上げ、何とか塩見東峰まで登り切る。そして西峰からの岩場を慎重に下り、塩見小屋へと到着した。

岩峰から蝙蝠岳への稜線

木曽山脈 ※左中央のピ-クに塩見小屋
塩見小屋(13:49、13:57) 小屋前の広場では敷物が干され、FMラジオの下、小屋番の女性が小屋の後片付けをしていた。休憩も程々に樹林帯へと下る。通常復路は下りで楽なものだが、考えが甘かった。お陰で蝙蝠山頂で見積もった下山スケジュ-ルも大幅に遅れている。行きに印象すら残らなかった本谷山までのこの区間、やけに長く感じ、ラジオから流れる笑い話にも心から笑えない。『次の川柳です。”苦労して育てた息子が、ニュ-ハ-フ。”』 一瞬頬の線が緩んだが、辛い現実は変わらない。前に進むしかないのだ。一旦コルまで下り、最後の長い登りには本当に参った。

樹林帯が長い

塩見岳を見上げる
本谷山(15:15、15:25) ようやく本谷山。今日の行程で一番辛かった。岳登との立場は既に逆転している。朝は暗くて見えなかったが、ここからも塩見岳を遠方に望む事が出来た。再び下り、そして登る。この無駄な登り返しが非常に辛い。折角苦労して下ったのに、又登らなければならない。何という苦行だ。

本谷山標柱
三伏山(16:09、16:24) そして三伏山。西の空は次第に夕暮れ色に染まってきた。日没前に林道まで下り切るという目標は既に絶望的。しかしここまで来れば、もう一切登りはない。後は下り一辺倒なのだ。休憩後、長らく楽しませてもらった稜線との悲しき別れ。赤石山脈(南ア)の山々をこんな具合に望むのも、今回でもう最後かもしれない。何だか名残惜しい。三伏峠の冬期小屋に立ち寄り、偵察がてら覗き見。大所帯のパ-ティ-が輪を囲み、楽しそうに食事を取っていた。僅かに残っている力を振り絞り、最後の下りに入る。眩しいまでの夕焼けは森を大きく包み込み、その中にいる僕は不思議な気分になってきた。何という美しい光景だ。何度も山を訪れている筈なのに、初めて見る光景だった。僕は思わず言葉を失い、夢中でシャッタ-を切った。森の中は直ぐに暗くなるだろう・・。その想いとは裏腹に、自然の明かりは遅くまで道を照らし僕等を後押ししてくれた。

夕日に染まる三伏山 ※塩見岳は既に遥か彼方

三伏峠冬期小屋

茜色
豊口山間のコル(17:26、17:33) コルの直前まで何とかライトに頼らず歩行が出来た。神秘的な夕焼けに高揚し僕の体力も既に回復、駆け下りるように一気にここまで下ってきた。ここからが用心だ。この鳥倉ル-トのコルよりも下部、裾野が広く、視界がないと誤って別方向に下っていきそうである。足場が悪いと思ったら念入りに足元を確かめ、慎重にル-トを取る。そして林道の看板が目に入った時には、思わずガッツポ-ズが出た。

豊口山間のコル
鳥倉登山口(18:03、18:08) ザックから残りの栗を全て取り出し、岳登が剥いてくれた甘い実を味わいながら林道を歩く。空には満天の星、スタ-ト時に見上げていたものと同じ星空だ。

鳥倉登山口
鳥倉林道ゲ-ト(18:43) 早ければ17時、遅くても20時とゴ-ル時刻を予想していただけに、まずまずの到着時刻だろう。二人共、余力は弱冠残っている。明日は朝から柔道の大会だ。小1から習っている岳登の小学校生活最後の大会となる。僕が山ばかり連れ出している為練習は週一しか出られず、大事な大会前日には3時間睡眠で17時間も歩かされている。まぁ柔道は弱くたって、何事も続ける事が大切だ。子供の頃の僕だってたいして強くなかった。だけど柔道を続けた甲斐あって、大人になり窃盗逃亡犯(高山市)と強盗犯(ペナン)を投げ飛ばし捕まえる事が出来た。おいガク、明日は悔いを残さぬよう思う存分戦ってこい!

鳥倉林道ゲ-ト駐車場
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| '11山行記録 | 08:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑