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穂乃花の山(2)

【山域】涸沢岳(3110m)、奥穂高岳(3190m)、※ジャンダルム(3163m)
【日時】平成23年9月24日
【天候】晴れ
【岳人】穂乃花(小4)、僕


2日目

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テント場の朝

穂高岳山荘(5:55)  凍えるような一夜を乗り切り、待望の朝を迎えた。白い雲が波のようにうねり、その中から眩しい太陽が強い光を放し顔を出してきた。朝の始まりだ。身支度を整え、いよいよ穂乃花大本命の奥穂高岳へと向かう。朝の稜線はかなり寒く防寒着は就寝時のまま、そして穂乃花のみヘルメット着用。山荘脇から登り始め、最初こそ鎖場が続いたが無難に通過。そこを越えれば、安全圏の岩稜地帯となる。振り返れば、穂高岳山荘やテント場、そこから稜線を登り切った先には昨日の涸沢岳。更に連なる稜線の先では、槍ヶ岳が穂先を天に突き上げている。視線を戻せば、険しく連なる稜線の先にジャンダルムが勇ましく聳え立っている。そのジャンの頂上には登山者の姿も。
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常念岳
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奥穂への登り
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出だしの鎖場を越えれば、後は安全地帯

奥穂高岳(6:36、6:51)  そして穂乃花、ついに念願の穂高の山頂に立つ。相変わらず込み合っている山頂の祠で記念撮影を済まし、広々とした山頂部の空いた場所に移動。笠が見える。黒部五郎や薬師が見える。槍や北穂も見える。雲に浮かぶ富士山までもが見える。そしてジャンダルムの姿が見えた。ここから望むジャンダルムは正に格別。日本のどんな山にも勝る風格を放し、何度見てもその威厳は群を抜いている。こんな機会はそうある訳でもない、穂乃花を山頂に残し一人ジャンダルムの往復に向かう事にした。
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奥穂高岳
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笠ヶ岳
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南鎌尾根から槍ヶ岳へ
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マウントフジ
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馬の背からジャンダルム  ※容易に踏み入れてはならない

ジャンダルム(8:01、8:09)  ※ジャンダルム詳細

奥穂高岳(8:47、9:02)  渋滞に巻き込まれ随分遅れたが、何とか無事奥穂まで戻って来れた。滑落事故にも遭遇し、何とも緊張感のある稜線歩きであった。奥穂の山頂で2時間も待たされた穂乃花であったが、人間ウォッチングをして過していたそうである。太陽は既に昇り切り、着込んだままの服装では明らかに暑苦しくなっている。奥穂の山頂に別れを告げ、テント場への下りにかかる。のんびり写真を撮りながら、多くの登山者に紛れ高度を落としていく。ようやくヘリが飛んで来た。旋回を繰り返し事故現場発見、要救助者を見つけた後の救助作業は実に早かった。滞空飛行で要救助者を引き上げ、瞬く間に空の彼方へと消えて行った。穂高岳山荘上部に密集していた多くのテントは、僕等のモンベルを含め既に数張しか残っていない。それにしても何だ、この大行列は。山荘から奥穂への登り口にかけ、目を疑う程の長蛇の列が出来ている。それは異様なまでに凄まじく、ゴ-ル目前で僕等の足も止まった。上を目指す登山者が絶え間なく鎖やハシゴを登って来る。途切れる事のないその登りの行列に、ついに下山者のしびれが切れた。真っ当な男性登山者の発言により、登る人5人、下る人5人、交互に狭いハシゴを通過する事になる。下り集団の尻尾にくっ付き、たいして時間をロスする事なく済んだから良かったが、これから登る人は大変だ。 
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上高地梓川と焼岳(右)
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ジャンダルムを背に
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穂高岳山荘へと下る
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常念岳と涸沢
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救助を終えたヘリ  ※ジャンダルムの上には多くの登山者が立っている
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奥穂登り口は凄い大渋滞

穂高岳山荘(9:51、10:47)  ようやくテント場へと戻り、テント撤収。ジャンダルムに立ち寄っていた為、時間が大幅に遅れている。山荘で穂乃花の記念に手ぬぐいを買う。登り口の激しい渋滞は全く解消されていない。『ラ~ク!』。ふと辺りを脅かす大声が走った。その一部始終を、穂乃花と共に山荘前で眺めていた。落石は登り口の登山者の列に落下、運悪く列に並ぶ若い女性登山者の一人に直撃した。落石を受けた女性登山者は体勢を崩し、斜面を転げ落ちる。人が転げ落ちる瞬間は初めて目撃したのだが、実に恐ろしい光景だった。山荘前の小さな斜面であった事、その滑落ぶりが実に落ち着いていて見事であった事が幸いし、たいした事故にはならなかった。しかし本当に恐ろしいのはそれからだった。女性が立ち上がったのも束の間、続けて『ラ~ク!』の大声が立て続けに2回響いた。今度は2度共行列には落下せず、運良く人身事故は免れた。これだけ人がいては危険だ。いつも岳登等に言っているが、例え自分が落ちても石だけは絶対に落とすな・・。落石は本当に怖い。
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残された僕等のテント  ※右後方は笠ヶ岳
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前穂ではこの日2件の死傷事故 ※その他ロバの耳で滑落1件、小池新道で遭難1件と事故が相次いだ
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長い行列はいつまで続くのか
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笠ヶ岳を前に長い下りにかかる
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笠ヶ岳の麓には背の低い中崎山(中央左)

標高2720m(11:54、12:08)  昨日登りに苦しんでいた石コロ地帯での下り。今日は視界が良く、目の前の笠ヶ岳を眺めながらの下山となった。登りで分かりづらかったペンキマ-クも、下りでは幾分目に見えている。しかしル-トを反れると、堆積した不安定な石コロは不気味な唸り声を斜面一帯に響き渡らせてくる。山荘で落石事故の現場を見ているだけに、僕等も加害者にならぬよう神経を最大限に尖らせて下った。体の小さな穂乃花には、不安定なこの斜面の下山は相当難儀のようである。

標高2515m岩屋(13:10、13:27)  斜面脇の岩屋に腰を下ろし、昼食とする。この斜面一帯は常に落石の恐れがあり、息を抜く場所もよく考えていなければならない。 
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長い下りを終え

荷継沢(14:14)  ようやく石コロ斜面の長い下りを終え、荷継沢対岸から樹林帯へと入る。中年ペアが僕等の腰を下ろすル-トから少し下、荷継沢の横断に入った。『ル-トはこっちですよ!』。聞こえていないのだろうか、軽く無視。しばらく様子を伺う。どのように対岸の登山道へと取り付くのか・・と心配していたが、やはり登山道に気付いていないようだ。『沢は下りませんよ!そっちは違いますよ!』。何度も大声を張り上げるが、全て完全無視。”アレッ外国人だっけ・・、だけどさっきダラ話が聞こえていたな・・”。結局後続の単独行に声を掛けられ、何とか登り返し対岸の登山道へと取り付いていた。どうも納得がいかなかったので、男性を一言二言問い詰める。水も流れていないこんな静かな沢で、僕の大声が聞こえなかったそうである。登山中のくだらない私語は、判断を誤りに導く。なるべく慎んだ方がいい。
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荷継沢は横断  ※耳のない男女の中年ペアには参った、そこまで遭難したいのか
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帰路は特に緊張が走る  ※左下は崖、道幅も狭い
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難所も後少しの辛抱だ

重太郎橋(15:12、15:30)  荷継沢から連続したこのコ-ス最大の難所は、やはり下りの方が危なく感じた。穂乃花も疲れてきた頃であり、一度でも転倒すれば滑落、重大事故と負の連鎖は続く。大声を張り上げ、穂乃花に密着。無事最大の難所をクリアした。単独で往復したジャンダルムよりも、かなりの神経を使った。    
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連結ハシゴを下り、無事難所クリア

白出小屋(16:33、16:48)  穂乃花の疲れもピ-クに達し、静かな泣き声や鼻水を垂らしようやく林道まで下り切った。何だかとても長く感じる最後の森歩きだった。昨日出会った子連れ一行の原付、自転車は既にない。明るい内にゴ-ル出来るかは、微妙な時間帯となってきた。遅れを取り戻すべく、ここからは手を繋いで歩く。
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白出小屋

穂高平小屋(17:24、17:32)  穂高平からは夕日に染まる穂高の稜線が美しく輝いて見えた。今さっきまであのコルにいたんだ・・、そう想うと感慨も一入だった。僕等の願い虚しく、その後右俣林道は再び暗闇に包まれる。ヘッドライトを早めに装着、穂乃花は最後まで頑張って歩き切った。
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穂高平  ※左から蒲田富士、涸沢岳、穂高山荘コル、奥穂高岳
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日が暮れた

新穂高駐車場(18:36)  凄いね穂乃花。我が子ながら大変頑張ったと思う。こんな小さな体のどこにそんなパワ-が秘められているのだろう・・。又一つ僕等二人のかけがえのない大きな思い出が一つ増えた。 
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新穂高駐車場


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