ジャンダルム
めでたく穂乃花、無事奥穂高岳への登頂を果たす。広い山頂で目の前に聳えるジャンダルムをぼんやり眺めながら、僕はふと思った。”中々こんな機会がある訳でもないし、今度岳登とジャンダルムの日帰りもいいかもな・・”。思いつきの山行の下見も兼ね、奥穂山頂に穂乃花を残し一人ジャンダルム(以下ジャン)を往復してくる事にした。これまでジャンの肩には3回行った事がある。西穂から槍へテントを担いで縦走したのが一度、奥穂から往復でジャンの肩まで足を延ばしたのが2度。しかしその頂に登れるという発想はなく、肩からテッペンを眺め一人喜んでいた。

奥穂から西穂へと延びる岩稜尾根 ※手前に馬の背、後方に聳えるのが奥穂の前衛ジャンダルム
万が一に備え穂乃花の手の甲に行き先を刻み、ヘルメットを拝借し、急峻な尾根へと向かった。まずは難所”馬の背”の登場だ。両側に鋭く切り立った岩盤に身を寄せ、岩だけを頼りに下らなければならない。だが岩は非常に安定しており、足の置場、手の掴み所を誤らない限り、無難にクリアする事が出来る。奥穂からジャン、西穂へと縦走する場合、出だしにこの馬の背がある事は何かと都合が良い。まずここで腰が引けるようだったら、縦走を諦め奥穂へと引き返せばいい。この先西穂までは、このレベルの難所が延々と続くのである。

馬の背の下り ※ここで腰が引けたら、先へ進んではならない

激しいアップダウン

難所の連続

狭い通路で停滞
何やら渋滞に捕まったようだ。急峻かつ狭い尾根を歩いているのだから仕方もない。狭い通路上、岩肌にガッチリ身を預け長らく停滞。視線を後方に移すと、今下ってきたばかりの岩峰が荒々しく切り立っていた。そこには数名の登山者が張り付き、こちら側から眺めるとまるでロッククライミングのようである。だがここは見た目ほど怖くもなく、注意しなければならないのは上からの落石となる。しかしこの渋滞には参ったな。帰りは皆と方向を逆にするから、もっと動けなくなりそうだ。奥穂で待つ穂乃花の事が心配で引き返そうとも思ったが、結局先へ進む事にした。

岩峰を一気に降下 ※落石には充分注意

ジャンダルムさん、アンタ格好良過ぎ
何とかジャンの肩まで取り付いた。前後の登山者がいなく、どこから登るのか定かではない。見上げると山頂に向けロ-プが垂れ下がっているが、岩には×と印されている。取り合えず西穂に向けて進み、ジャンを巻く事にした。そして巻き終えると、そこはジャンへの分岐であった。”ジャン”の文字もあり、鎖もあった。この稜線を行き交う登山者が数名荷を下ろし、束の間の休息を取っている。ジャンへの登りは弱冠拍子抜けし、危なげなく山頂まで登り切った。

ジャンの肩 ※直登は×、従って左に巻く

ジャンを巻き終えた頃、分岐の目印あり
ついに念願のジャンダルム登頂。山頂はそこそこ広い。いつもは息子や娘が主人公なので、脇役の僕は山頂では滅多に写真に収まらない。だがここだけは記念写真を撮っておきたい気分だった。眺望は当然良く、飛騨山脈南部は一通り望む事が出来る。西穂へと続く縦走路も良く見えるが、高所恐怖症の僕としてはあまり好んで歩こうとは思わない。奥穂方面に目を移すと、先程通りかかった”ロバの耳”の滑落現場も一目瞭然である。50m滑落した要救助者は、今も危険な場所でヘリの到着を待っている。『ヘリはまだか、何とか生き延びてくれ・・』。それにしてもあのロバの耳の登り、僕が通過した時には優秀な先行者の判断で一人一人登っていたから落石の恐れはなかったが、写真を見ると何人も同時に登りにかかっている。実際登ってみて、確かに石は落ちる。同時に登るのはあまりにも無謀だ。登り下りと2度通ったが、最も注意を要する難所ではないだろうか。手足の長さが大人より短い小学生の岳登が、果たして越えられるか疑問が残った。

ジャンダルム ※後方は笠ヶ岳

山頂の天使

意外と広い山頂部

飛騨山脈の大パノラマ

西穂、焼岳へと続く縦走路

奥穂(写真奥)から歩んできた縦走路全貌

ロバの耳で滑落事故発生 ※山腹には救助を待つ要救助者
心配していた奥穂への戻り道、渋滞はかなり解消し、急いで穂乃花の待つ奥穂へと足を進める。それにしてもあの滑落現場。新たな登山者が通りかかる度に、滑落した要救助者に対し助け舟を出している。『お~い、大丈夫ですか!救助は呼びましたか・・』。長らく現場付近で一部始終を見ていて、”死にそうな時に、毎度毎度応答するのも辛いだろうな・・”と感じた。これだけの人数がこんな危険極まりない所を歩いていれば、事故が起きても何ら不思議ではない。皆自己責任の下、命を張ってこの稜線を歩いているのだ。

再び馬の背
無事ジャンダルムから帰還し、奥穂高岳で待つ穂乃花と合流。まさかこんなに時間がかかるとは思いもしなかった。『スマン穂乃花、遅くなってしまって!』
翌日の朝刊を見て衝撃は続いた。僕がジャンダルムに登ったこの日、前穂高岳北尾根で滑落事故が2件相次ぎ発生。それぞれ重傷と死亡の重大事故となった。僕が目撃したロバの耳の要救助者は2時間後にヘリにて救助され、右膝の骨折で済んだようだ。そして小池新道弓折岳周辺では、道迷いの遭難事故が発生。1時間半後に無事救助されたようだ。どうも下山時、上空がやけに賑やかだったのは、これらが原因のようだ。山は怖い。一つのミスが命取りとなる。油断せず、無理をせず、思い込まず、常に謙虚でなければならない。改めてそう感じた。

ジャンダルムを背に穂乃花
穂乃花の山(1)
穂乃花の山(2)
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奥穂から西穂へと延びる岩稜尾根 ※手前に馬の背、後方に聳えるのが奥穂の前衛ジャンダルム
万が一に備え穂乃花の手の甲に行き先を刻み、ヘルメットを拝借し、急峻な尾根へと向かった。まずは難所”馬の背”の登場だ。両側に鋭く切り立った岩盤に身を寄せ、岩だけを頼りに下らなければならない。だが岩は非常に安定しており、足の置場、手の掴み所を誤らない限り、無難にクリアする事が出来る。奥穂からジャン、西穂へと縦走する場合、出だしにこの馬の背がある事は何かと都合が良い。まずここで腰が引けるようだったら、縦走を諦め奥穂へと引き返せばいい。この先西穂までは、このレベルの難所が延々と続くのである。

馬の背の下り ※ここで腰が引けたら、先へ進んではならない

激しいアップダウン

難所の連続

狭い通路で停滞
何やら渋滞に捕まったようだ。急峻かつ狭い尾根を歩いているのだから仕方もない。狭い通路上、岩肌にガッチリ身を預け長らく停滞。視線を後方に移すと、今下ってきたばかりの岩峰が荒々しく切り立っていた。そこには数名の登山者が張り付き、こちら側から眺めるとまるでロッククライミングのようである。だがここは見た目ほど怖くもなく、注意しなければならないのは上からの落石となる。しかしこの渋滞には参ったな。帰りは皆と方向を逆にするから、もっと動けなくなりそうだ。奥穂で待つ穂乃花の事が心配で引き返そうとも思ったが、結局先へ進む事にした。

岩峰を一気に降下 ※落石には充分注意

ジャンダルムさん、アンタ格好良過ぎ
何とかジャンの肩まで取り付いた。前後の登山者がいなく、どこから登るのか定かではない。見上げると山頂に向けロ-プが垂れ下がっているが、岩には×と印されている。取り合えず西穂に向けて進み、ジャンを巻く事にした。そして巻き終えると、そこはジャンへの分岐であった。”ジャン”の文字もあり、鎖もあった。この稜線を行き交う登山者が数名荷を下ろし、束の間の休息を取っている。ジャンへの登りは弱冠拍子抜けし、危なげなく山頂まで登り切った。

ジャンの肩 ※直登は×、従って左に巻く

ジャンを巻き終えた頃、分岐の目印あり
ついに念願のジャンダルム登頂。山頂はそこそこ広い。いつもは息子や娘が主人公なので、脇役の僕は山頂では滅多に写真に収まらない。だがここだけは記念写真を撮っておきたい気分だった。眺望は当然良く、飛騨山脈南部は一通り望む事が出来る。西穂へと続く縦走路も良く見えるが、高所恐怖症の僕としてはあまり好んで歩こうとは思わない。奥穂方面に目を移すと、先程通りかかった”ロバの耳”の滑落現場も一目瞭然である。50m滑落した要救助者は、今も危険な場所でヘリの到着を待っている。『ヘリはまだか、何とか生き延びてくれ・・』。それにしてもあのロバの耳の登り、僕が通過した時には優秀な先行者の判断で一人一人登っていたから落石の恐れはなかったが、写真を見ると何人も同時に登りにかかっている。実際登ってみて、確かに石は落ちる。同時に登るのはあまりにも無謀だ。登り下りと2度通ったが、最も注意を要する難所ではないだろうか。手足の長さが大人より短い小学生の岳登が、果たして越えられるか疑問が残った。

ジャンダルム ※後方は笠ヶ岳

山頂の天使

意外と広い山頂部

飛騨山脈の大パノラマ

西穂、焼岳へと続く縦走路

奥穂(写真奥)から歩んできた縦走路全貌

ロバの耳で滑落事故発生 ※山腹には救助を待つ要救助者
心配していた奥穂への戻り道、渋滞はかなり解消し、急いで穂乃花の待つ奥穂へと足を進める。それにしてもあの滑落現場。新たな登山者が通りかかる度に、滑落した要救助者に対し助け舟を出している。『お~い、大丈夫ですか!救助は呼びましたか・・』。長らく現場付近で一部始終を見ていて、”死にそうな時に、毎度毎度応答するのも辛いだろうな・・”と感じた。これだけの人数がこんな危険極まりない所を歩いていれば、事故が起きても何ら不思議ではない。皆自己責任の下、命を張ってこの稜線を歩いているのだ。

再び馬の背
無事ジャンダルムから帰還し、奥穂高岳で待つ穂乃花と合流。まさかこんなに時間がかかるとは思いもしなかった。『スマン穂乃花、遅くなってしまって!』
翌日の朝刊を見て衝撃は続いた。僕がジャンダルムに登ったこの日、前穂高岳北尾根で滑落事故が2件相次ぎ発生。それぞれ重傷と死亡の重大事故となった。僕が目撃したロバの耳の要救助者は2時間後にヘリにて救助され、右膝の骨折で済んだようだ。そして小池新道弓折岳周辺では、道迷いの遭難事故が発生。1時間半後に無事救助されたようだ。どうも下山時、上空がやけに賑やかだったのは、これらが原因のようだ。山は怖い。一つのミスが命取りとなる。油断せず、無理をせず、思い込まず、常に謙虚でなければならない。改めてそう感じた。

ジャンダルムを背に穂乃花
穂乃花の山(1)
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| '11山行記録 | 08:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑