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飛騨に残された最後の秘境~ニコイ

雨の切れ間の3連休中日、かねてから気になっていた場所を目指し、飛騨市北部の宮川町へと車を走らせた。本日目指す場所は2つ。幻のニコイ大滝、廃橋、廃坑、謎の大鍾乳洞を抱える、飛騨に残された最後の秘境ニコイ。その後更に車を走らせ、終点池ヶ原湿原にある丸山を登るという計画を立てた。登山、山行というよりは冒険、探検に近い、かなりスリリングな一日となった。



【山域】ニコイ高原(ニコイ大滝、ニコイ大鍾乳洞、池ヶ原湿原)
【日時】平成23年9月18日
【天候】晴れ
【岳人】嶺花(小2)、穂乃花(小4)、僕


種蔵集落で築いた素敵な思い出を胸に抱え、池ヶ原湿原、ニコイ方面目掛け更に林道を上って行く。当初この林道の状態が非常に心配ではあったが、全面舗装済で幅員もそこそこある。普段未舗装の悪路に随分苦しめられている僕としては、充分爽快で快適なドライブとなった。誰も通らない静かな林道、落ち栗を拾いニコイへの登り口を探る。
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そしてあっさりニコイ大滝への入口を発見、予め収拾しておいた情報とも合致。このニコイ一帯は30年以上前に観光開発が進められたが、当時開発許可が下りず中断されたままとなっている。その時に造られた橋やトンネルは今も尚残っているが、長年に渡り放置され崩壊の危険も高い。落差130mのニコイ大滝は安全管理の面から案内が一切存在せず、不遇にも闇に葬られ、幻の滝と呼ばれている。更に大滝の奥にはトンネル、そして大鍾乳洞と謎のカテゴリ-が続く。カ-ブの空地に車を停め、ヘルメットに軍手、長靴姿に身支度を整える。この井出達からして、もはやいつもの山行とは明らかに違う。ザックの中にはヘッドライトは欠かせない。辺りを見渡し、適当に目星を付けた草薮を掻き分け森へと突入。藪漕ぎは直ぐに終焉を迎え、明瞭な歩行道が現れた。飛騨の藪山を歩く事が多い僕等でなくても、これは実に分かり易い道と言える。ただし斜面側が落ち込んでいる箇所では、転倒して滑落しないよう細心の注意が必要となる。
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ニコイ大滝入口  ※この先は大変危険、進むなら全て自己責任で
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意外と踏み均されている歩行道  ※崖への滑落注意

駐車地から栗を拾いながら歩き始める事10分弱、この場所が正しい事を意味する桟橋が姿を見せた。痩せた崖際を安全に通行出来るように設けられた構造物で、今でも充分機能は果たしている。しかし修復や手入れの程は不明であり、手摺や崖側の通行は避けた方がいい。桟橋を過ぎると、直ぐに滝見橋。橋の上からニコイ大滝の全容を眺めるビュ-ポイントだ。しかしこの立派な大橋も管理の度合いはかなり低く、歩く度にギシギシ響く唸り声が不安を一層引き立たせている。橋の上でのんびり滝見見物する余裕はなく、橋を怒らせないよう忍び足でそそくさと渡り切った方が無難だ。
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桟橋  ※崩壊注意、手摺は信用してはならない
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滝見橋  ※廃橋と化し30年強、崩壊に充分注意
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幻のニコイ大滝(落差130m)  ※橋の崩壊が怖くて、鑑賞に浸る余裕はない

そして何とか無事橋を渡り切ると、いよいよニコイトンネルの登場となる。ここからはヘッドライトを装着。一同入口で躊躇うが、ここを越えなければ謎の鍾乳洞の実態を暴くことも出来ない。意を決して、暗闇のトンネルに足を踏み入れる。ヘッドライトで明かりを照らしているが、坑内はかなり暗く、一寸先は闇である。先行を行く突撃部隊の娘二人は恐怖に怯え、珍しく仲良くがっちり手を繋いでいる。事前に仕入れた先人の情報通り、長いコンクリ-ト製の階段が現れた。前を照らし、足元を確認しながら慎重に進む。突如コウモリが襲って来た。坑内に棲んでいる事は重々承知していたが、やはり不気味だ。気を取り直し、前を向き進む。またもや凄まじいコウモリの奇襲を受けた。そうか分かったぞ、暗闇に浮かぶ光に反応しているんだな・・。『オイお前ら良く聞けよ、頭を下げて低い姿勢で歩いた方がいいぞ!』。前を行く娘達に指示を出し、更に先へ進む。天井から不気味な水が、ポトポト垂れ落ちてきた。相変わらず低く構えた僕等の上を、コウモリがビュンビュン風と音を鳴らし羽ばたいている。穂乃花は張り詰めていた肝を失くし、今にも泣き出しそうになってきた。長い登り階段を終え、やがて2つ目の短い階段の登場。ここまで全て先人の情報通りだ。そしてその短い階段の先には、ようやく外の明かりが見えた。終に不気味なコウモリトンネルを抜けたのである。
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ニコイトンネル入口  ※この先、ヘルメットとヘッドライト必須
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穂乃花の顔がかなり引きつっている。コウモリの嫌いな末子のナナは連れて来なくて大正解だったが、穂乃花は来なければよかったと悔やんでいた。出口に架かるコンクリ-ト製の橋に荷物と腰を下ろし、昼食のおにぎりで腹ごしらえ。この橋でさえも崩壊の恐れがあり、満更リラックスも出来ない。昼食を終え、一人滝の頭を見に川を下るが、危なそうなので途中で引き返す。
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ニコイトンネル出口
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大滝の頭
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鍾乳洞入口へ移動

ここからが謎の舞台となる。先人の情報もなく、真意の程が未だに不明となってくる。”火気厳禁”とされた鉄製の扉の中を、恐る恐る覗き込む。入口には何やらガラクタがあり、その先は一際高くなっており四つん這いでなければ入れそうもない。これは先程のトンネルにも増して、かなり不気味だ。念の為、娘達は入口に待機させ、恐る恐る匍匐全身で先へと進む。直進の穴は直ぐに途切れ、左側上部に狭い穴が確認出来た。穴の先を確かめようと、中を覗き込む。不意にコウモリの奇襲を受け、悲鳴と共に思わず体勢を崩した。いつ何が起こるか分からないので、ヘルメットの装着は絶対条件となる。ここまで来て引き下がる訳にもいかない。周りを確認し、『やはりあの穴しかないな・・』との結論に至る。コウモリを刺激しないよう低姿勢で左上部へと這い上がり、穴の中を覗き込む。穴はその先、続いていないようだ。内心ホッとし、岩場を慎重に下りる。次の瞬間、岩の天井にぶら下がるコウモリ数匹と目が合った。一瞬心臓が止まるかと思ったが、ここで大声を出し彼等を刺激してはならない。鳥肌をさらし、何とか娘達の待つ入口へと戻った。この洞窟の奥にはかなり凄い鍾乳洞があるのだろうが、入口が崩れ塞がっている・・。僕はそう自分に言い聞かせた。
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ニコイ大鍾乳洞入口  ※この先、更に危険
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鍾乳洞は這うほど狭い上、コウモリが多くかなり恐ろしい
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再びニコイトンネル。今度は動画でなく、写真を撮りながら坑内を進んだ。やはり何度通っても怖いものは怖い。一度通っているだけに距離感覚はつかめたが、コウモリには容易に慣れる事は出来ない。トンネル出口から歩く事5分、ようやくトンネル入口の明かりが見えてきた。次の瞬間、入口付近の信じ難い光景が目に留まる。無数のコウモリが無意味に旋回し、僕等の通行を妨げ威嚇しているのだ。三人共かなり怖気づいたが、あの場所へ向かうしかない。運良くコウモリは明るい外へと羽ばたき、何とかトンネルを抜けた。想像以上に恐ろしかったニコイトンネル、下手なお化け屋敷よりも余程怖い。今回こうして飛騨の奥そこに踏み込んだ訳だが、公にされていない事に僕も納得である。決して、安易に行くべきではない。
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トンネル出口の古看板  ※トンネル延長134m、高低差30m
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トンネル出口から振り返る大鍾乳洞入口
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暗闇、飛び回るコウモリ、天井から垂れ落ちる水・・、トンネル内部に不安要素は多い

※以下写真3点はフラッシュ撮影、実際は1m先が見えない状況が終始続く
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顔を上げると光目掛けコウモリが次々と突進してくる  ※コウモリの奇襲覚悟
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廃坑と化したトンネル内部  ※崩落注意
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長い急階段  ※スリップ転倒注意
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コウモリの大群がトンネル入口を塞ぐ  ※通過にはかなり勇気がいる
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駐車地


つづく・・



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