白峰から仙塩尾根へ(3)
【山域】中白根山(3055m)、間ノ岳(3189m)、三峰岳(2999m)、安倍荒倉岳(2692m)、新蛇抜山(2667m)、北荒川岳(2697m)、北岳(3193m)、小太郎山(2725m)
【日時】平成23年7月25日
【天候】晴れ
【岳人】岳登(小6)、僕
3日目
北岳山荘(4:37) このテント場で迎える2日目の朝。昨夕から時折降っていた雨のせいあって、テントの内側は弱冠濡れている。起床後まず目覚めの一杯を飲み、荷造りをしてテント撤収。左後方に黒く浮かび上がった北岳の姿を一瞬目にしたが、結局この姿が見れたのはこの時だけだった。深いガス霧立ちこめる朝、小雨にも似た雫の中を山頂目掛け歩く。ここで出会った雷鳥達、こんな状況にはめっぽう強い。先の見えない岩稜を息を整え登る。ふとガスが切れ、誰かが興奮気味に叫んだ。振り返ってみると、そこには待望の景色が広がっていた。先程までいた北岳山荘から、昨日歩いた間ノ岳へと重厚な南アルプスの主稜線が連なっている。その右後方には塩見岳、左後方には農鳥岳が顔を出している。

雷鳥の群れ

北岳への登り

北岳山荘から間ノ岳へと延びる稜線 ※右後方は塩見岳
北岳(5:40、6:04) ようやく北岳に到着。ここは日本第2位の高さを誇る南アルプスの主峰。山頂は広く、既に多くの登山者で溢れていた。天候も幾分回復傾向にあり、眺望はここに来てようやく期待出来そうである。昨日から調子の悪いデジカメも、今の所撮影に支障はない。朝食のパンで空腹を満たし、反対の稜線へと下る。保育園児くらいの少女が父に励まされ、北岳山頂目指し頑張っている。足は動いていないように見えたが、果たして無事登れたのだろうか・・。肩の小屋の脇を抜け、正面に鳳凰三山を見据え、快適な稜線歩きを楽しんだ。

北岳

広い山頂部

鳳凰と雲

肩の小屋
小太郎尾根分岐(6:39、6:45) 分岐直下にメインザックを預け、いよいよ未知の稜線へと足を踏み入れる。人気の登山道から反れたこの小太郎尾根、寄り道する登山者はあまりいないだろう。しかし百高山でもある小太郎山は、僕等にとっては欠かせない重要な山となる。しっくりしない視界の中、見えない尾根を前へと進む。手ぶらで後ろを歩く岳登が何やら呟いた。『パパ、丸い虹が見えるよ・・』。慌ててその方角に目を寄せる。『ウォ~凄ェ~、でかしたぞガク。あれはブロッケンだ!』。これまで15年程山を歩いているが、ブロッケン現象を目にしたのはこれが初めて。今回のように、いつも気付かずその脇を通り過ぎていたのだろう。岳登がいなかったら間違いなく見落としていた。その後も快調に飛ばし、いよいよ最後のピ-ク、その登りに差し掛かる。急な岩場を四つん這いで一気に登り切った。”中々手強かったぞ、小太郎!”

小太郎尾根と偽小太郎(奥の岩峰)

岳登が見つけたブロッケン

僅か数秒の神秘的な光景
偽小太郎(7:17) 登り詰めた頂にはケルンがあるだけで、山頂標識はない。”いくら飛ばして来たとは言え、小太郎にはまだ早過ぎないか・・。それに分岐であれだけ立派な道標があったのに、山頂に標柱がないのもおかしいな・・”。尾根道も続いている事だし、更に奥へと進む事にした。痩せた尾根を慎重に通過。先の見えない状況の中、目の前に小高いピ-クが姿を現す。”いい加減あそこが山頂だろう・・”。先行して岳登を走らせること数分、山頂を確証した岳登の雄たけびが辺りに響き渡った。

偽小太郎の頂

痩せ尾根を行く ※小太郎はどこだ!
小太郎山(7:37、7:45) 山梨百名山でもあるこの小太郎山、三角点や山頂標識を抱えた緩やかな山頂であった。先程山頂と錯覚した前衛の岩峰とは対照的な山容である。白く輝く名峰甲斐駒ヶ岳の前にはアサヨ峰、そして連なる早川尾根は鳳凰三山へと延びていた。今日は帰りのバスが控えている為、最終バスにだけは乗り遅れないようにしなければならない。しかし尾根の往路に急いだ分、時間に余裕が出てきた。復路は時間をかけ、ゆっくりと最後の稜線を心行くまで楽しんだ。

小太郎山 ※後方に甲斐駒ヶ岳

歩いてきた稜線と聳える北岳

霞む冨士山

甲斐駒ヶ岳(奥)、アサヨ峰から早川尾根(中)、小太郎山と小太郎尾根(手前)
小太郎尾根分岐(9:13、9:32)
白根御池小屋(10:20、10:50) 快調に駆け下り、白根御池小屋まで下ってきた。この小屋は水が豊富で、ここで早めの昼食を取る事にする。そしていよいよ最後の行程、広河原を目指す。ここまで一気に高度を落としてきたのに、この小屋の先、下ったり登ったり山腹を巻いてばかり。一体どこに向かっているんだ・・。不安になり地図の等高線を確認、登山道は確かにしばらく左に並行していた。やがて道標が現れ、そこから一気に下降。鬱憤を晴らすかのようにみるみる高度を下げ、ついに見覚えのある広河原山荘が見えてきた。

白根御池小屋
広河原(12:20) 野呂川に架かる吊橋を渡る頃、小雨がパラパラ落ち始めた。急いで橋を渡り切り、林道の舗装路は全速力で駆け抜ける。間一髪、雨の餌食を免れた。アルペンプラザに入った矢先、大振りの雨が激しい音を立て一気に降り始めた。正に間一髪、急いでよかった。

雨だ、急げ!

広河原
バスを2台乗り継いで仙流荘の駐車場まで戻って来た。高遠温泉さくらの湯で3日分の汗を流す。湯上りに体重を測ると、初めて60kgを切っていた。そしていよいよ楽しみにしていた信濃路。超特大のカツ丼をスプ-ンで豪快に喉の奥に掻き込む。二人とも腹ペコだったので、今日は全部平らげてやろうと意気込んだ。岳登はその言葉通り、凄い勢いで米3合あるジャンボソ-スカツ丼を半分平らげた。しかしそこまで。僕はジャンボカツ丼を3/4平らげ、ここで限界。何度挑んでも、やはり信濃路は手強かった。カウンタ-の隣りで苦しそうに顔をゆがめている岳登が最後に言った。『このカツ丼を食べるのは山よりきつい!』 アッパレ信濃路、近いうちに又来ます。

今回も持ち帰りは3パック
2日目へ
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【日時】平成23年7月25日
【天候】晴れ
【岳人】岳登(小6)、僕
3日目
北岳山荘(4:37) このテント場で迎える2日目の朝。昨夕から時折降っていた雨のせいあって、テントの内側は弱冠濡れている。起床後まず目覚めの一杯を飲み、荷造りをしてテント撤収。左後方に黒く浮かび上がった北岳の姿を一瞬目にしたが、結局この姿が見れたのはこの時だけだった。深いガス霧立ちこめる朝、小雨にも似た雫の中を山頂目掛け歩く。ここで出会った雷鳥達、こんな状況にはめっぽう強い。先の見えない岩稜を息を整え登る。ふとガスが切れ、誰かが興奮気味に叫んだ。振り返ってみると、そこには待望の景色が広がっていた。先程までいた北岳山荘から、昨日歩いた間ノ岳へと重厚な南アルプスの主稜線が連なっている。その右後方には塩見岳、左後方には農鳥岳が顔を出している。

雷鳥の群れ

北岳への登り

北岳山荘から間ノ岳へと延びる稜線 ※右後方は塩見岳
北岳(5:40、6:04) ようやく北岳に到着。ここは日本第2位の高さを誇る南アルプスの主峰。山頂は広く、既に多くの登山者で溢れていた。天候も幾分回復傾向にあり、眺望はここに来てようやく期待出来そうである。昨日から調子の悪いデジカメも、今の所撮影に支障はない。朝食のパンで空腹を満たし、反対の稜線へと下る。保育園児くらいの少女が父に励まされ、北岳山頂目指し頑張っている。足は動いていないように見えたが、果たして無事登れたのだろうか・・。肩の小屋の脇を抜け、正面に鳳凰三山を見据え、快適な稜線歩きを楽しんだ。

北岳

広い山頂部

鳳凰と雲

肩の小屋
小太郎尾根分岐(6:39、6:45) 分岐直下にメインザックを預け、いよいよ未知の稜線へと足を踏み入れる。人気の登山道から反れたこの小太郎尾根、寄り道する登山者はあまりいないだろう。しかし百高山でもある小太郎山は、僕等にとっては欠かせない重要な山となる。しっくりしない視界の中、見えない尾根を前へと進む。手ぶらで後ろを歩く岳登が何やら呟いた。『パパ、丸い虹が見えるよ・・』。慌ててその方角に目を寄せる。『ウォ~凄ェ~、でかしたぞガク。あれはブロッケンだ!』。これまで15年程山を歩いているが、ブロッケン現象を目にしたのはこれが初めて。今回のように、いつも気付かずその脇を通り過ぎていたのだろう。岳登がいなかったら間違いなく見落としていた。その後も快調に飛ばし、いよいよ最後のピ-ク、その登りに差し掛かる。急な岩場を四つん這いで一気に登り切った。”中々手強かったぞ、小太郎!”

小太郎尾根と偽小太郎(奥の岩峰)

岳登が見つけたブロッケン

僅か数秒の神秘的な光景
偽小太郎(7:17) 登り詰めた頂にはケルンがあるだけで、山頂標識はない。”いくら飛ばして来たとは言え、小太郎にはまだ早過ぎないか・・。それに分岐であれだけ立派な道標があったのに、山頂に標柱がないのもおかしいな・・”。尾根道も続いている事だし、更に奥へと進む事にした。痩せた尾根を慎重に通過。先の見えない状況の中、目の前に小高いピ-クが姿を現す。”いい加減あそこが山頂だろう・・”。先行して岳登を走らせること数分、山頂を確証した岳登の雄たけびが辺りに響き渡った。

偽小太郎の頂

痩せ尾根を行く ※小太郎はどこだ!
小太郎山(7:37、7:45) 山梨百名山でもあるこの小太郎山、三角点や山頂標識を抱えた緩やかな山頂であった。先程山頂と錯覚した前衛の岩峰とは対照的な山容である。白く輝く名峰甲斐駒ヶ岳の前にはアサヨ峰、そして連なる早川尾根は鳳凰三山へと延びていた。今日は帰りのバスが控えている為、最終バスにだけは乗り遅れないようにしなければならない。しかし尾根の往路に急いだ分、時間に余裕が出てきた。復路は時間をかけ、ゆっくりと最後の稜線を心行くまで楽しんだ。

小太郎山 ※後方に甲斐駒ヶ岳

歩いてきた稜線と聳える北岳

霞む冨士山

甲斐駒ヶ岳(奥)、アサヨ峰から早川尾根(中)、小太郎山と小太郎尾根(手前)
小太郎尾根分岐(9:13、9:32)
白根御池小屋(10:20、10:50) 快調に駆け下り、白根御池小屋まで下ってきた。この小屋は水が豊富で、ここで早めの昼食を取る事にする。そしていよいよ最後の行程、広河原を目指す。ここまで一気に高度を落としてきたのに、この小屋の先、下ったり登ったり山腹を巻いてばかり。一体どこに向かっているんだ・・。不安になり地図の等高線を確認、登山道は確かにしばらく左に並行していた。やがて道標が現れ、そこから一気に下降。鬱憤を晴らすかのようにみるみる高度を下げ、ついに見覚えのある広河原山荘が見えてきた。

白根御池小屋
広河原(12:20) 野呂川に架かる吊橋を渡る頃、小雨がパラパラ落ち始めた。急いで橋を渡り切り、林道の舗装路は全速力で駆け抜ける。間一髪、雨の餌食を免れた。アルペンプラザに入った矢先、大振りの雨が激しい音を立て一気に降り始めた。正に間一髪、急いでよかった。

雨だ、急げ!

広河原
バスを2台乗り継いで仙流荘の駐車場まで戻って来た。高遠温泉さくらの湯で3日分の汗を流す。湯上りに体重を測ると、初めて60kgを切っていた。そしていよいよ楽しみにしていた信濃路。超特大のカツ丼をスプ-ンで豪快に喉の奥に掻き込む。二人とも腹ペコだったので、今日は全部平らげてやろうと意気込んだ。岳登はその言葉通り、凄い勢いで米3合あるジャンボソ-スカツ丼を半分平らげた。しかしそこまで。僕はジャンボカツ丼を3/4平らげ、ここで限界。何度挑んでも、やはり信濃路は手強かった。カウンタ-の隣りで苦しそうに顔をゆがめている岳登が最後に言った。『このカツ丼を食べるのは山よりきつい!』 アッパレ信濃路、近いうちに又来ます。

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| '11山行記録 | 08:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑