安房山の激薮
【山域】安房山(2219m)
【日時】平成23年7月2日
【天候】曇り
【岳人】岳登(小6)、僕
安房峠(8:00) 朝2時起床。笠ヶ岳と緑ノ笠の日帰りに向けて準備をするが、岳登の腹の具合が芳しくない。眉間にしわを寄せた、見覚えのあるしかめっ面。過去に2度、この顔を見るなり早々と登山中断、撤退へと追い込まれている。本日の笠ヶ岳は飽きらめて、再度車内に敷いた布団に横たわる。数時間後、朝の強い陽射しに誘われ起床。岳登の顔つきも幾分良くなっている。明日登る予定だった安房山を、まず今日登っておく事にした。硫黄臭漂う平湯の温泉街から安房峠へと細い山道を車で上っていく。安房峠着。この先は長野県松本市となり、少し下った先には焼岳の中ノ湯登山口がある。廃墟と化した安房峠の茶屋の脇に車を停め、登り口をキョロキョロ探す。峠の端、高山市の看板脇に排気塔へと続く踏み跡を見つけた。

登山口は安房峠の高山市側

安房トンネルの排気塔
排気塔まで登ると、そこは幕営に適した広場となっていた。目を凝らし周囲を見渡し、広場奥の左端に踏み跡を発見。慎重に辿って行くと、ロ-プやハシゴ等の工作物が出てきた。まずは、ここまでは順調。何せこの安房山、登山地図や看板がある筈もない完全な薮山である。勘を頼りに、五感の全てを研ぎ澄ませ、慎重に足を進める。すぐに深い薮に捕まった。背丈程の笹薮が行く手を拒み、前方の視界を遮る。おまけに昨夜の雨で笹の葉は濡れており、僕の綿生地のズボンはたちまちズブ濡れになってしまった。樹木と樹木の間から目指す山頂が姿を現した。・・遠い。あの頂まで深い薮を掻き分けて進んだはいいが、果たして無事峠まで戻って来られるだろうか・・。自信はない。

崩れ地の急登

ロ-プやハシゴ

山頂はまだ先 ※行ったはいいが無事戻って来られるか、かなりビビっていた

薮は背丈より高く、昨日の雨で濡れている

倒木で自立する笹の子
帰りは余程慎重に道を選ばなければ、この深い笹山で迷子になってしまう。ほんの時折、木に目印の赤布が巻かれているが、完全に周りの薮の威圧感に負け存在感はかなり薄い。不安が大半を占める中、前へ進んだのには僅かながらの自信もあったからだろう。薮はかなり深く何が何だか分からないが、足元には意外に明瞭な踏み跡が続いている。突き出す足に意識の全てを集中し、前へ前へと進んで行く。その足先の感覚に自信が持てなくなった時、撤退して引き返せばいい。そして何とか薮山を登り切った。下山の際に降り口を間違えないよう、ストックを木に垂らし帰りの目印とする。山頂を探し目の前のピ-クに登ってみるが、違うようだ。池沼を越え、更に連なる尾根づたいに薮を漕ぎ進んで行く。

ロ-プも深い笹に覆われている

登り切った先の平地は右へ進む ※降り口に注意が必要
安房山(9:30) そして、ようやく山頂に到着。そこには堂々と三角点が鎮座し、背後には山頂プレ-トが掲げられていた。それにしてもこの三角点、山頂では度々目にする訳ではあるが、地図をよく見ると有り得ない様な深い山の頂にある事がある。安房山のように極稀に登られている山ならまだいいが、確実に誰も登らないような場所に設置されている事が地図から伺える。これら三角点を設置測量した人は明治時代の陸地測量部だろうか。本当に凄いとしか言いようがない。

三角点

山頂プレ-ト
安房山中継所(9:33、10:30) 驚く事に山頂から少し進んだ先には立派な建物が建っていた。国土交通省松本砂防工事事務所の風力発電関連の施設のようで、安房山中継所とある。明瞭な踏み跡や時折目にしていた赤布は、この施設へ向かう為の作業路だったのだろう。しかしここ数年登られていないのか、はたまた充分道に慣れているからなのか、笹の刈り込みは全くされていない。中継所と名乗るだけあって、峠では全く入らなかった携帯電話やラジオの入りは良い。周囲を散策し、束の間のリラックス。

こんな厳しい山頂の先には、信じ難い程立派な建物が

安房山中継所

ズボンと靴はベタベタ
そして、いよいよ下山にかかる。足元の錯覚を最高潮に高ぶらせ、慎重に慎重に足を前に出す。何箇所か足が止まった箇所があったが、少しでも違和感を覚えたら直ぐに下るのをやめ、確実な所でゆっくり進むべき道を考える。焼岳がようやく顔を出してくれた。朝方青空が覗いていたが直ぐに曇り空に包まれ、今日の眺望はこの時だけ。見覚えのある要所を確実に通過し、難無く排気塔まで戻る事が出来た。

ようやく顔を出した焼岳

笹薮は困難極まる程深いが

足元は意外にしっかりしている ※同じ場所で撮影
安房峠(11:30) 短い行程ではあったが、中々手強い山であった。『今度は5月に笹の子採りにでも再度登ってみようかな・・』 そんな事は断じて思えない、非常に激しい薮山だった。行かない方が無難である。

閉ざされた峠の茶屋に時代の流れを感じた
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【日時】平成23年7月2日
【天候】曇り
【岳人】岳登(小6)、僕
安房峠(8:00) 朝2時起床。笠ヶ岳と緑ノ笠の日帰りに向けて準備をするが、岳登の腹の具合が芳しくない。眉間にしわを寄せた、見覚えのあるしかめっ面。過去に2度、この顔を見るなり早々と登山中断、撤退へと追い込まれている。本日の笠ヶ岳は飽きらめて、再度車内に敷いた布団に横たわる。数時間後、朝の強い陽射しに誘われ起床。岳登の顔つきも幾分良くなっている。明日登る予定だった安房山を、まず今日登っておく事にした。硫黄臭漂う平湯の温泉街から安房峠へと細い山道を車で上っていく。安房峠着。この先は長野県松本市となり、少し下った先には焼岳の中ノ湯登山口がある。廃墟と化した安房峠の茶屋の脇に車を停め、登り口をキョロキョロ探す。峠の端、高山市の看板脇に排気塔へと続く踏み跡を見つけた。

登山口は安房峠の高山市側

安房トンネルの排気塔
排気塔まで登ると、そこは幕営に適した広場となっていた。目を凝らし周囲を見渡し、広場奥の左端に踏み跡を発見。慎重に辿って行くと、ロ-プやハシゴ等の工作物が出てきた。まずは、ここまでは順調。何せこの安房山、登山地図や看板がある筈もない完全な薮山である。勘を頼りに、五感の全てを研ぎ澄ませ、慎重に足を進める。すぐに深い薮に捕まった。背丈程の笹薮が行く手を拒み、前方の視界を遮る。おまけに昨夜の雨で笹の葉は濡れており、僕の綿生地のズボンはたちまちズブ濡れになってしまった。樹木と樹木の間から目指す山頂が姿を現した。・・遠い。あの頂まで深い薮を掻き分けて進んだはいいが、果たして無事峠まで戻って来られるだろうか・・。自信はない。

崩れ地の急登

ロ-プやハシゴ

山頂はまだ先 ※行ったはいいが無事戻って来られるか、かなりビビっていた

薮は背丈より高く、昨日の雨で濡れている

倒木で自立する笹の子
帰りは余程慎重に道を選ばなければ、この深い笹山で迷子になってしまう。ほんの時折、木に目印の赤布が巻かれているが、完全に周りの薮の威圧感に負け存在感はかなり薄い。不安が大半を占める中、前へ進んだのには僅かながらの自信もあったからだろう。薮はかなり深く何が何だか分からないが、足元には意外に明瞭な踏み跡が続いている。突き出す足に意識の全てを集中し、前へ前へと進んで行く。その足先の感覚に自信が持てなくなった時、撤退して引き返せばいい。そして何とか薮山を登り切った。下山の際に降り口を間違えないよう、ストックを木に垂らし帰りの目印とする。山頂を探し目の前のピ-クに登ってみるが、違うようだ。池沼を越え、更に連なる尾根づたいに薮を漕ぎ進んで行く。

ロ-プも深い笹に覆われている

登り切った先の平地は右へ進む ※降り口に注意が必要
安房山(9:30) そして、ようやく山頂に到着。そこには堂々と三角点が鎮座し、背後には山頂プレ-トが掲げられていた。それにしてもこの三角点、山頂では度々目にする訳ではあるが、地図をよく見ると有り得ない様な深い山の頂にある事がある。安房山のように極稀に登られている山ならまだいいが、確実に誰も登らないような場所に設置されている事が地図から伺える。これら三角点を設置測量した人は明治時代の陸地測量部だろうか。本当に凄いとしか言いようがない。

三角点

山頂プレ-ト
安房山中継所(9:33、10:30) 驚く事に山頂から少し進んだ先には立派な建物が建っていた。国土交通省松本砂防工事事務所の風力発電関連の施設のようで、安房山中継所とある。明瞭な踏み跡や時折目にしていた赤布は、この施設へ向かう為の作業路だったのだろう。しかしここ数年登られていないのか、はたまた充分道に慣れているからなのか、笹の刈り込みは全くされていない。中継所と名乗るだけあって、峠では全く入らなかった携帯電話やラジオの入りは良い。周囲を散策し、束の間のリラックス。

こんな厳しい山頂の先には、信じ難い程立派な建物が

安房山中継所

ズボンと靴はベタベタ
そして、いよいよ下山にかかる。足元の錯覚を最高潮に高ぶらせ、慎重に慎重に足を前に出す。何箇所か足が止まった箇所があったが、少しでも違和感を覚えたら直ぐに下るのをやめ、確実な所でゆっくり進むべき道を考える。焼岳がようやく顔を出してくれた。朝方青空が覗いていたが直ぐに曇り空に包まれ、今日の眺望はこの時だけ。見覚えのある要所を確実に通過し、難無く排気塔まで戻る事が出来た。

ようやく顔を出した焼岳

笹薮は困難極まる程深いが

足元は意外にしっかりしている ※同じ場所で撮影
安房峠(11:30) 短い行程ではあったが、中々手強い山であった。『今度は5月に笹の子採りにでも再度登ってみようかな・・』 そんな事は断じて思えない、非常に激しい薮山だった。行かない方が無難である。

閉ざされた峠の茶屋に時代の流れを感じた
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| '11山行記録 | 08:08 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑