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静粛たる秩父岩(4)~山の神に見守られ、笠撤退


・・前回の続き


とても寒い夜だった。ありったけの衣服を着込み、靴下は2枚、軍手、毛糸帽、マフラ-もして床に就いた。しかし、寒いものは寒い。久々のテント設営も仇となり、フライシ-トにロ-プを張るのを忘れていた。その為、内側のテントにびっちり張り付き、もろに雫を受ける羽目に遭う。夜明け前、一人外に出た。槍穂の稜線は微かに浮かび上がり、誰かがライトを点け槍の穂先に向っているようにも見える。外に出しておいた昨夜飲みかけのコ-ラは、見事にシャ-ベットと化していた。僕は日の出を見ようと、先程から時間を気にしている。しかし次第に雲は下り、その期待は絶望的となった。ナナを揺すって起こし、温かい飲み物で冷えた体を温める。僕はコ-ヒ-とカフェオレ、ナナはポタ-ジュとコ-ンポタ-ジュ、各々2カップづつ飲んだ。
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朝食は温かい飲み物で軽く済ませた

二人でテントの外に出る。今日は結局、日の出は見れなかった。笠ヶ岳断念。この決断は僕の中では一応片付いているのだが、少し未練も残っている。折角ここまで来たのだから・・。しかしテント場から抜戸方面の稜線を見上げ、そこにあるのは一抹の不安だけだった。既に正規の登山道は分からない。適当に稜線に這い上がることは容易いが、標高はこの先2700m、2800m、2900mと上昇の一途を辿る。どこに落とし穴があるかは、行ってみないと分からない。それに最も危惧しているのは、抜戸分岐から杓子平への下りだった。あのカ-ル状の急斜面、最後の最後に何か罠がありそうで怖かった。いずれにせよ、戻るなら疲れのない今しかない。それが僕が出した答えだった。
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秩父岩とテント
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秩父平と抜戸への稜線
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下山開始  ※氷を割るのが好きらしい
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秩父岩

一番重かった水も半分以上減り、食料も減り、荷物は幾分軽くなってきた。ナナにも疲れは残っていないようで、又ここから新たな一日が始まる。景色を堪能しながらの縦走・・、これが今日せめてもの楽しみのはずだった。しかし槍穂の稜線には嫌な雲がかかり、期待する術は完全に消えた。雪の上には昨日僕等が付けた足跡がそのまま残り、それを追うように来た道を戻っていく。この縦走路は際どい箇所も多い。落ちたらヤバそうな箇所は娘と手をつないで歩き、それをも超える最重要箇所は手袋を外し素手で娘の手を強く握った。しかし結果的にアイゼンの出番もなく、雪が凍っていなかったことが幸いした。しかし、一切油断は出来ない。常に滑落の危険性は秘めている。
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緊迫の崖っぷち  ※↑画像クリックで拡大
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逆層スラブ
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大ノマ岳

何の楽しみもない今日の稜線にも、素晴らしい光景は残されていた。登山道の先頭を歩いていた僕、ふいに驚き立ち止まる。先程から、何やら鳴き声が聞こえるような気はしていた。僕の直ぐ目の前には、白雷鳥が1羽。その少し先には3羽が、動かずじっと立ち止まっている。そして右の草むらにも2羽。計6羽から成る雷鳥の団体さん。その内の1羽だけは、昨日見たのと同じ茶色混じりだった。とても可愛い。アヒルやガチョウに見えなくもないが、彼等雷鳥の存在は別格である。山では神の域に達し、厳しい山を守り抜いている。深い山中でも滅多にお目にかかれない、登山者にとっても特別な存在となっている。
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雷鳥の群れ  ※写真では3羽だが、この近辺に計6羽いた
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雷鳥こそが山の神
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僕等親子を見守ってくれている

危険地帯を無難にこなし、僕等の心にも若干ゆとりが出てきた。後は目の前に迫る最後の登りだけだ。大ノマ乗越から重厚な峰に取り付いた。気温は低いが、汗をかきながら最後の奮闘に耐える。そして僕等は再度、弓折の頂上に立った。今回は縦走路から少し離れ、三角点の場所まで向かうとする。昨日あれだけ景色が良かったこの大展望台に、今期待するものは何もない。
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凍り付いた池沼で遊ぶ
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大ノマ乗越                           木製階段        
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弓折岳三角点  ※奥が山頂標柱のある登山道

弓折岳を越え、少し先の弓折乗越まで下る。ここは双六方面との分岐となり、双六方面へは辛そうな登りが始まる。さぁ、又登りだぞ!娘に嘘をつき、表情を伺った。娘は親の言葉を信じており、まだ登れる気力を示してくれた。ゴメンな、でもこれは嘘なんだ。いい嘘だから許してな、とナナに謝った。鏡平に向かう下り道、雪は次第に消え、少し寂しい気にもなってきた。こうして下っていると道中長く感じ、よくぞこんな坂を登って来たものだと互いに健闘を称え合う。鏡平山荘に到着。今日初めて見た登山者は、男性2人組。僕等もここで昼食とする。風が強く、湯の沸きは遅かった。ここから先は小池新道を下るだけだ。
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鏡平山荘にて昼食

雨が少しパラついてきた。本格的に降り出す前に、橋のない秩父沢だけは渡っておきたい。ナナの肩が痛み出してきたようで、肩を気にしながら歩いている。見上げる稜線は、つい数時間前まで僕等がいた場所だ。人間の歩く能力は凄いといつも感心させられる。青い単独行が後ろからハイペ-スで近付いてきた。昨日秩父沢で会った青年だ。予定通り三俣に泊まり、鷲羽岳に登ってきたそうである。対岸に見える道路より低い位置にきた。そして小池新道を終え、林道に出た。僕等はただ道を歩いているだけだが、こうして道を作った先人の苦労は相当なものだったのだろう。ここからの林道歩きが、僕はこの2日間で一番辛かった。何より肩が痛む。大きな石を見つけては、ザックを乗せ肩を休ませる。ナナはいつからか元気になっているようだ。こうして僕等の二日間は幕を閉じた。
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小池新道終盤
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奥丸山分岐
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左俣林道ゲ-ト


秩父平 7:44
大ノマ岳 8:40、8:53
大ノマ乗越 9:32
弓折岳 10:00、10:07
鏡平 10:45、11:46
秩父沢 13:18、13:32
わさび平小屋 14:35、14:44
新穂高 15:54


平成27年11月22日 天候曇り ナナ(小2)、僕

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静粛たる秩父岩(3)~月とテント


・・前回の続き


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槍穂高に見守られ
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黙々と突き進む

時間は予想外に押している。ナナの疲れはピ-クに来ているようだが、それも無理はない。こんな重い荷物を背負って、2600mの稜線まで這い上がってきたのだ。しかし、情けは無用。可哀そうだが、今は同情している場面ではない。刻々と迫りくる日没に向け、一刻も早く秩父平に着かないと大変なことになる。相変わらず眺望は素晴らしいのだが、この時の僕等には感傷に浸る余裕はなかった。今度こそ、あのピ-クが大ノマか・・。他にそれらしいピ-クがないだけに、これは間違いないだろう。
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槍ヶ岳~南岳
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大キレット~奥穂高岳
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今度こそ大ノマか

登山道は大ノマ岳山頂を右に巻いているが、そこから外れ、山頂に向け道筋を辿る。そして、大ノマ岳到着。本日2峰目だ。ナナはいつからか又シクシクと泣いている。今日何回目だろうか。娘にとっても、今日の山行はかなり修羅場のようだ。手袋を外してトウモロコシを食べる。美味しいはずが、あまり味も分からない。僕等の頭の中は、この先のゴ-ルだけで精一杯。秩父平・・、まだそこには少し時間がかかりそうだ。頑張って歩き抜くしか、僕等に選択肢は残されていない。目の前に秩父平の全貌が現れた。長閑な印象しかなかった秩父平が、雪崩の巣のような危険地帯に見えている。果たして僕等はこのまま秩父平に向かうべきなのだろうか。
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大ノマ岳(2662m)  ※標柱はないが、石が積んである
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秩父平がやばい  ※稜線右の雪のカ-ル出合
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来た道を振り返る
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黒部五郎岳(左端)、薬師岳(右奥)

深い緊張に包まれた、日暮れ目前の静かなる稜線。娘も必死に頑張っている。荷物が重いだの、脚が疲れたとかは今はどうでもいい。出くわした本日2羽目の雷鳥が、山の神と重なって見えた。行く手左は断崖絶壁。落ちたら、まず助からないだろう。娘の手を強く握り、慎重に通過した。その後も緩やかなアップダウンを繰り返し、這い松帯を抜けていく。そこに平地があったが、ここからの眺望はない。ナナはかなり遅れているが、時折大声を掛け、その存在を確認。僕との差は開くばかり。先行する僕がまず秩父平に到着した。先程案じた程、危なさは感じない。雪上での幕営は避けられそうもないが、少しでも風除けになり、眺望のよい場所を探す。まだ歩いている娘が心配になり、大声で叫ぶ。返事はない。まさか誤った方角へ進んだのではないだろうな。何度も叫んでみるが、返答はない。心配になり少し下りると、娘の帽子が見えてホッとした。良かった、生きていた。お~い、ここだぞ!僕が思う以上に距離は離れていたようだが、僕の足跡は見失っていなかった。
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本日2羽目の雷鳥
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茶色混じり
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緊張した崩落地  ※這い松の際を進む、滑ったらアウト
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秩父平にて振り返る  ※ナナの姿が見えないが大丈夫か
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帽子が見えた

娘に協力してもらい、急いで幕営にかかる。久々のことで、手際は悪かった。寝床も準備し、テントに入る頃には辺りは闇に包まれた。この場所で景色を楽しみながら宴会をするのが一つの目的であったが、今日は叶わなかった。菓子、鯖缶、桃缶をつまみ、コ-ラとウィスキ-で無事を祝う。景色はないけど、とても楽しい。辛かった分だけ、達成感は一入だ。僕は1本目のフラスコを飲みきり、2本目の瓶に手を付けた。狭いテントの室内、静寂な夜が更けていく。僕は夕食作りを始めた。味噌ラ-メンにソ-セ-ジを入れたもの。冷えた握り飯も汁に入れ、締めは雑炊とした。ナナはいつしか目を閉じている。今日は相当疲れたんだろうな。僕の中で、笠ヶ岳に向かう選択肢はほぼ消えかけていた。この子を絶対に無事帰らせることしか、僕の頭にはなかった。
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秩父平にて幕営完了  ※ぎりぎり日没に間に合った
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宴会は楽しいな                        ウィスキ-とハ-モニカ
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夕食を食べると                         直ぐに目を閉じた
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月と                                テント

穂乃花との秩父平


2日目につづく・・


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静粛たる秩父岩(2)~雷鳥ウォ-ク


・・前回の続き


本日一番の難所、稜線への登り上げを無事成し遂げたナナ。ここから先は多少のアップダウンはあるものの、景色を楽しみながら本来の山旅が味わえる。今日出会った登山者は全てここから右の双六、三俣方向へと進み、笠への稜線は完全に僕等二人の貸し切りとなった。雪は乗越手前から現れ始め、稜線は初冬の装いとなっている。ここから少し足を延ばした弓折岳山頂までは、足跡が付いていた。登山道には弓折岳を示しているであろう古びた標柱(表記なし)が立っているが、本来の山頂は登山道から少し離れた三角点となる。この山頂付近からの眺めは抜群で、平地も多く、余程ここにテントを張ろうかと思った程だ。
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弓折乗越
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双六岳(中央)、鷲羽岳(右奥)
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弓折岳(2588m)

進む先に、これから目指す笠ヶ岳が見えてきた。稜線の最奥に構える大笠は、遠そうに見えるが意外とそうでもない。心配した雪はそれ程でもなく、場所によってあるくらい。ガスもない、視界は良好。頑張って稜線まで登り上げた僕等への、ご褒美のような桃源郷。朝方の林道歩きの時点で一度は行こうか迷った奥丸山は、既に僕等の眼下にある。ここに来た選択は正しかったようだ。一気に標高を落とし、大ノマ乗越のコルに出た。駐車場まで下がるの・・。不安そうに訊いてきたナナが愛おしい。子供は何も分からず、ただ親を信じてついてきている。だから親は子の力量を見極め、最適な判断を示さなければならない。ここは風の通り道、平地はあるが幕営には適さない。
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笠へと続く稜線
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乗鞍岳(右奥)と焼岳(その左下)  ※眼下を流れるのは左俣谷
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南岳、大キレット、穂高連峰  ※手前の尾根右に奥丸山
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先は長い  ※最奥が笠ヶ岳
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これぞ縦走の醍醐味
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大ノマ乗越(最低部コル)

ナナに疲れが出てきたようだ。歩くペ-スが急激に遅くなってきた。大ノマの山頂はどこだったかなと、娘を後ろに残し一人目の前のピ-クへと急いだ。この付近雪が地面に張り付き、登山道は分かりづらい。斜面を這い上がりピ-クに立ったが、這い松に覆われどうも山頂ではないようだ。ザックを置いていた箇所まで戻り、遅れて到着したナナと合流。そして、そこからが凄かった。
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この景色、娘の目にはどう映っているのだろう

槍穂の眺望もさることながら、初めて目にした白雷鳥。これまで20年近く山に登ってきて、茶色の雷鳥は数多く見ているが、白い雷鳥は僕にとっても初めて。冬は山に入らないのでそれも当然だが、思わぬ遭遇に僕の方が興奮した。雷鳥は大変人なつっこく、ある程度の距離(2~3m)は必要だが、決して自分から逃げ去ろうとはしない。人間との出会いを楽しんでいるかのような、愛らしい仕草、立ち振る舞いに二人とも引き込まれていった。雷鳥は僕等親子を先導するかのように、不明瞭な稜線を案内してくれる。雷鳥の後ろを娘が歩く。娘が立ち止まると雷鳥も立ち止まる。そして娘が動き出すと雷鳥も動き出す。まるで、後続を気にしながら先導してくれる、頼れるリ-ダ-のように。そして、その光景がしばらく続く。これぞまさしく雷鳥ウォ-ク、夢のような一時だった。
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雷鳥(冬毛)  ※岐阜県、長野県、富山県の県鳥
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夏は褐色、冬は純白と季節で毛の色が変わる  ※北アに2000羽(日本に3000羽)生息
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雷鳥が道先案内人
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人なつっこくて愛らしい

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つづく・・

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静粛たる秩父岩(1)~絶景、槍穂高連峰

先日の燕の余韻が僕の心に深く残り、どうしても今年もう一度稜線に上がりたいと思っていた。今年は本当に冬が遅く、運が良ければまだ稜線に上がれそうだ。・・ということで、ナナを初めてのテント行に連れ出した。行く先は飛騨の名峰、笠ヶ岳。飛騨山脈(北ア)の名峰は、そのほとんどが稜線を境に長野県とその雄姿を分け合っている。しかしこの笠ヶ岳に至っては、完全に飛騨(岐阜県高山市)の中に納まっている。少々きついがここは娘に頑張ってもらい、急登で有名な笠新道を登り切ってもらうとするか。本当は鏡平、弓折岳回りの方が眺望が勝り俄然お勧めなのだが、秩父沢が渡れるか心配だったので敢え無くこの案はボツ。山の季節は既に冬。一晩で状況が一変する危険性を、この時期の山は秘めている。登山届を自宅と入山口に出し、誰もいない(結局いた)静寂の山域へと足を踏み入れた。静まり返ったこの時期の山が、僕は一番好きなんだ。
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あれ、話が違うぞ


新穂高の登山口は、自宅から車で1時間。まるで近所を散策するかのようなこの手軽さは、飛騨人の特権だ。朝3時半自宅を出て、新穂高を5時過ぎに歩き始めた。僕自身も久々のテント行、4年前に岳登(当時小6)と南嶺を歩いた時以来となる。ナナは初めての1泊行で、初めて担ぐ重荷に出だしから相当苦しんでいた。小2には明らかに重いだろうと僕も分かっており、重みのある食料や水類は全て僕のザックに詰め込んでいる。しかしそれでもまだ充分重いらしく、最初の林道歩き1時間(上り勾配)で早くも泣きが入った。そうかナナは上半身が弱いのか・・。この先の事を色々と考えながら歩き、笠新道入口に着いた。水はチョロチョロ出ているが、以前涸れていたような記憶もあり、笠新道に入る場合ここは当てにしない方がいい。
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左俣林道ゲ-ト
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笠新道入口(水場あり)  ※泣きが入り直登断念、一先ず鏡平を目指すことに

笠新道はまず無理だろう・・。出だしの登りを見て、諦めは直ぐについた。それなら、①奥丸山を経て槍平でテント泊、そして次の日右俣で帰る。②秩父沢が渡れるか確信はないが鏡平でテント泊、軽身で弓折岳を往復するのもいい。③鏡平の時点で余力があれば何とか秩父平まで行き笠ヶ岳を目指す、当初理想の案だ。1年の営業を終え閑散としたわさび平小屋を通過。まだどうするか決めかねていたが、小池新道と奥丸山への分岐で僕はそのまま直進した。ここからは、小池新道。ここに来てナナはようやく重荷に慣れてきたようで、見るからに快調そのもの。さすがはナナ、恐るべし小学生。1時間半が呆気ないほど順調に過ぎ、秩父沢に到着。上部小屋の営業終了とともに橋は外されているが、飛び石でも充分に越えられそうだ。子供のナナでも足を濡らさず、無事渡渉クリア。安堵したとこで、腰を下ろしての休憩タイム。ここで単独行の男性が続けて3名。皆、三俣まで向かうそうだ。
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わさび平小屋(クロ-ズ)  ※水場は撤去されてないが、谷水は豊富
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青空に期待
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稜線も近い
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秩父沢の橋は撤去されたが、飛び石でクリア      ココは、チボ岩 
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槍ヶ岳                              穂高連峰

ここからは高度計との睨めっこが続いた。あと200m(↑)の辛抱だ・・。あと100mで休憩だぞ・・。あと50m、もう少しで小屋だ・・。鏡平は確か2300mくらいだったかなと、まずはその標高を念頭に娘を励ます。時間や距離感のない子供には、親のこうした助言が少なからず心の支えになってくる。目の前には稜線が広がり、娘の指標となっている。若干ガスが出てきたが、流れは速く、眺望は目まぐるしく変わっていた。名の付いたポイントを幾つか越え、シシウドガ原のベンチで少し休憩。ナナのここまでの頑張りを見る限り、僕の中では既に秩父平行きで固まっている。稜線が目の前に迫ってきた。最後の登りにも耐え、ついに鏡平に到着した。
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イタドリガ原                           泣いているのかい
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シシウドガ原                          熊の踊り場
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さぁ、頑張れ

鏡池からの眺望は飛騨随一と言っても過言ではない。しかし8月に来た時は今一だっただけに、今日の眺望はどうかなと不安もあった。しかし池の向こうに広がる絶景を見て、思わず絶叫した。久々に見た気がするぞ、こんな槍穂高。先程シシウドガ原で話した清見のご夫妻も、この景色に感激のようだ。互いに贅沢な情景を分かち合い、至福の時が流れていく。ただし、池に逆さ槍穂が映っていないのが残念だった。営業を終えた、鏡平山荘。二つ目の池に架かる橋は、上部が取り除かれていた。一瞬ドキッと焦ったが、よく見ると母体はそのまま残されている。その基礎部分を選んで歩き、何とか対岸へ渡り切った。
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鏡池  ※飛騨随一の絶景地、学校登山は絶対ここにすべき(持論)
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槍ヶ岳(左)、大喰岳、中岳(右)
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鏡平山荘(クロ-ズ)  ※橋の上部は外されているが、基礎部分が歩ける

よし、あと1時間で稜線だ。8月にトレランで来た時は軽く走って通過したが、今日の重荷はやけに堪える。一歩一歩ゆっくり前に進み、時折登山道脇の岩に荷物を載せ、肩を休め一呼吸。振り返れば、槍ヶ岳。なんて様になるんだ、コノヤロ-。今日ここまで見てきた景色は、全て高山市(旧上宝村)。山に登らない飛騨人は絶対に損をしている。山荘からやけに遠く感じたが、何とか稜線に登り出た。ナナも重荷を担ぎ、根性で稜線到着。お前、たいしたもんだな。凄いぞナナ!
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飽きない景色は全部、高山市  ※稜線の反対側は長野県
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最後の登りに耐える娘  ※荷物10㌔超
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親父(僕)も頑張る  ※荷物30㌔超
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あっぱれ、槍ヶ岳
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稜線到着  ※ナナもあっぱれ!


新穂高 5:08
笠新道入口 6:18、6:43
わさび平小屋 7:00
秩父沢 8:24、8:54
シシウドガ原 10:29、10:45
鏡平 11:41、11:57
弓折乗越 13:04、13:26
弓折岳 13:35
大ノマ乗越 14:13
大ノマ岳 15:22、15:35
秩父平 16:30


平成27年11月21日 天候晴れ ナナ(小2)、僕


つづく・・


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雪の燕岳(3)~さらば、燕


・・前回の続き


北の方角を見る限り、ここは”神の領域”と言っても過言ではない。ここまで歩いてきた南の方角も深いガスに覆われ、何とも神妙な趣だ。完全装備のアベックが到着したのと入れ替わり、僕等は山頂を後にする。雲の上に広がるこの雪の稜線は、全くもって異次元の世界だ。燕の肩まで下りてきて、ふと後ろを振り返ってみた。するとそこには、何かで見たことがあるような、これまた引っ掛かる景色が。そうか、南米パタゴニアだ・・。来月から旅する南米のガイドブックに、これに似たような景色が載っていた。切り立った岩峰群のシルエットには白い雪がよく似合う。
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北燕岳方面
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燕山荘方面
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さらば山頂
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パタゴニアみたい

気温上昇が先か、青空が先かは分からないけれど、天候は完全に回復傾向にある。とても気分がいいのは僕等だけではないようだ。こうなるのを待っていたのか、山頂に向ってくる登山者がぼちぼち増え始めた。確かに青空の下を歩いていた方が安全だし、気持ちもいい。しかし、あの暗黒の空でなければ、間違いなくエベレストの発想は出てこなかった。続くこの稜線の果て槍ヶ岳は、勿体ぶって簡単にはその穂先を見せてはくれない。脚にカメラを載せたカメラマンが数人、大天井と槍を構図に入れ、雲が流れるのを待っていた。さらば燕(つばくろ)、又会う日まで。
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ようやく天候も回復
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メガネ岩
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槍は雄姿を見せない
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さらば燕

雪にまみれた燕山荘。ベンチの雪を払い、少し休ませてもらう。先程歩いた燕に至るル-トが、肉眼でもよく確認出来た。なんと贅沢な景色なんだろう。表銀座の縦走路に目を移す。目の前には、槍ヶ岳。一瞬だけ、その穂先が露わになった。他の登山者もその稀の瞬間を見逃さず、歓喜の声が響いた。ここぞとばかりに誰もがシャッタ-を切っている。これは今日のご褒美だな。テ-ブルの上に作った雪だるまに別れを告げ、下山の準備に入った。
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燕山荘の案内板
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絶景テラス
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表銀座
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記念に
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一瞬の槍ヶ岳
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飛騨山脈

予想していた通り、急な雪面は下るには恐ろしい。足の向きを意識的に変え、ナナは上手いこと下っていた。次第に雪は減り、上昇した気温に溶けた雪が水となり、足元を困らせた。ナナは下りには滅法強く、急な勾配は全く意に介していない。疲れ知らずもさることながら、そのスピ-ドには面食らった。僕は左脚が痛み出したこともあるが、颯爽と駆け下りるナナについていくのに必死だった。ほとんどトレランレベルで、走っているような感覚。休憩も一切求めてこず、第二ベンチで休もうと言ったのは実は僕の方だ。ナナよ、今日は楽しかったな。きっとそれは雪があったからだな。僕にとっても良き思い出となった。
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下山開始                             軽快に飛ばすナナ
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早過ぎて僕も必死                        中房温泉
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舗装道                              第一駐車場


おわり

| '15山行記録 | 09:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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