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本州縦断コラム(3)~空想の町

※スペシャル2023大会中、眠気対策の一環としてFacebookに日々投稿を挙げていた。幸い時間だけは余る程有るので、普段思っていることを文章にまとめてみた。以下、Facebookより抜粋


1550kmにも及ぶ、気の遠くなるような道のりを辿る本州縦断ランナー。
幾多の試練を乗り越え辿り着く下関のゴールは勿論嬉しいが、それ以上に嬉しい場所がある。

下関・・、果たしてそんな町が本当に存在するのだろうか。
それはきっと主催者の思い込みによる、空想の町ではないのだろうか。
そう思えるほど、遠い存在に感じた下関。

そんな時、ふいに目の前に現れるのが、『下関286km』の道路標識。
前回初めて目にした時、全身鳥肌が立った。
ここまで来れば、もう終わったも同然だ。
後はその距離を詰めていくだけの単純作業となる。

そしてこの頃から、同時に湧き上がってくる不思議な感情がある。
死ぬ程辛かった、本州縦断の長い道のり。
寝ても覚めても、容赦ない地獄の日々が待っていた。
いっそのこと、ここでやめてしまおうか・・。
ギリギリの精神状態の中、選手は皆、絶望の淵に立たされている。

それなのに、これまで抱いていた感情とは全く異なる思いが心の奥底から湧き上がってくる。
もう終わってしまうのか・・。
大変だったけど、充実していた日々。
ともに闘ってきた仲間との別れ。
下関へのカウントダウンが始まり、僕は今その寂しさの中にいる。


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出雲市中心部に入り、初めて現れる下関の文字

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本州縦断コラム(2)~かけがえのない仲間達

※スペシャル2023大会中、眠気対策の一環としてFacebookに日々投稿を挙げていた。幸い時間だけは余る程有るので、普段思っていることを文章にまとめてみた。以下、Facebookより抜粋


本州縦断フットレース・スペシャル・・。
この大会で受ける試練には想像を絶するものがある。
連日3時間睡眠での、17時間行動。
夜には意識が朦朧とし、幻覚が現れることも多々。

そんな絶望の淵に立たされている時、ふと仲間の顔が脳裏に浮かぶ。
最後尾の僕ですらこんな状態なのだから、より追い込んでいる前の選手の壮絶さは想像もつかない。
僕は一人じゃないんだ!
気持ちを奮い立たせ、再び足を前へと踏み出す。

この大会で得られる最大の成果は、完走賞や完走盾など形有るものではなく、
命を賭けて共に闘った、かけがえのない仲間達との出会いだと思う。


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青森駅での開会式  ※競技説明をする舘山大会長(右)と11名の選手達

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本州縦断コラム(1)~何故俺は・・

※スペシャル2023大会中、眠気対策の一環としてFacebookに日々投稿を挙げていた。幸い時間だけは余る程有るので、普段思っていることを文章にまとめてみた。以下、Facebookより抜粋


何故俺はこんな辛いだけのことをしているのか・・
そもそも何の為に俺は生きているのか・・


前回大会、そしてその後の日々を通じ、自分なりの答えが見えてきた。
休日ロング走に出かけると、行く先々で様々な光景を目にする。
白い三角テントを立て、キャンプを楽しむ家族連れ。
ウェーダーを履き、深瀬で獲物を狙う釣り師。
仲良くタイヤ交換をする中年夫婦、脚立に乗り愛車を洗う青年。
川沿いでは三脚を立てた撮り鉄が、その一瞬の時を待っている。
街角は人混みで溢れ、誰もが束の間の休日ライフを楽しんでいるかのようだ。

人の数だけ趣味があり、人の数だけ様々な生き方がある。
何が正しいとか、何が凄いかなんて誰も決めることは出来ない。
例えば大雨や吹雪の中、僕が死に物狂いで外を走ってきたとしても、コタツに入りテレビを観ながらゲラゲラ笑っている人に対し、優越した感情を抱いてはならない。

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本州縦断フットレース2023スペシャル(1)~概要

Day1(4/22)
青森県青森市(青森駅)~秋田県大館市、81km

ついに本州縦断2023スペシャルが幕を開けた。全国から集まった12名の精鋭。うち8名は前回大会の完走者となる。これだけ過酷な大会にも関わらず、この驚異のリピ-タ-率(前回完走者12名)は一体何を意味するのだろうか。練習不足や脚力低下は著しく、初日から異様に脚が重い。碇ヶ関から5時間以上高品選手と一緒に進んだ。何と彼、5/12に宗谷岬(日本最北端)をスタ-トし、青森駅でスペシャルスタ-トに合流。下関駅ゴ-ル後は一人佐多岬(日本最南端)を目指すと言う。全行程2700kmを全野宿、それを1ヶ月の予定。その上、北海道からは青森港ではなく、わざわざ150km離れた最北の大間港に入ったらしい。更にはスペシャルで通行禁止となる親不知では、JRは使わず35km山道を遠回りすると言う。さすがは、謎多き最強キャンパ-。長い時間沢山話が出来たし、とても楽しい深夜の峠越えとなった。
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青森駅  ※間もなく10時、一斉スタ-トの号砲が鳴る
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目指す町が次々と変わってくるのが縦断の醍醐味
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深夜0時半、大館CP到着  ※僕のペ-スだといつも日付けを跨いでしまう


Day2(4/23)
大館市〜五城目町、66km(147km)

初日の大館泊は一応ベタ-だが、2日目の行程から一気に差が開いてきた。五城目に泊まるのは僕だけで他の選手は皆、秋田市(或いはその先)を目指すようだ。今回の他の選手はとにかく皆レベルが高く、スペシャルも2回目にしてついにスピ-ド化してきたなと肌で実感。そんな超人達のことは気に掛けず、計画通りマイペ-スで進む。コゴミの群生を見つけたが、ここは悲しきスル-。コゴミを横目に素通りするだなんて、普段だったら絶対に有り得ない。しかしその後見つけたタラノメは貪欲に採取。このタラノメは前回大会同様、小倉温泉旅館への手土産として持参する。前回道中採ったタラノメを手土産としてチェックインの際に贈ったら、素泊まりなのに豪華夕食になって返ってきた。そして今回も素泊まりで予約したが、部屋にはきりたんぽ鍋(団子Ver.)が用意され、その上ハイボ-ルやケ-キ、山吹まんじゅうまで頂いた。こうなることを望んだ訳ではないが、両者暗黙の意思疎通が成り立っていたようだ。
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コゴミ  ※歩きながら生で食べる。マヨネ-ズがあれば尚良し
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タラノメ  ※前回に続き、小倉温泉への手土産用に採取
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小倉温泉(五城目)  ※素泊まりなのに今回も豪華夕食を頂いた


Day3(4/24)
五城目町〜由利本荘市、72km(219km)

直近の練習では飛騨古川から富山まで2日間かけて往復するという実線練習を3週続けて行った。片道が70km弱なのでスペシャルの練習としては申し分なかった。しかし毎週末とは言えせいぜい土日の2連荘であり、3日続けてのロング練習は普段の練習では一度もしていない。その為出だしの3日間が最初の勝負だなと当初より考えていた。由利本荘市に入り、やがて日本海に湯が沈む。この辺り良い思い出はないが、やはり今回も終盤ボロボロになり、ホテル到着は23時を過ぎてしまった。道中見かけたタラノメは一度は素通りしたものの、結局気になって戻り、渡す宛てもなく取り敢えず採取。親切に対応してくれたホテルの受付男性に贈ったら、とても喜んでもらえた。全国旅行支援で秋田ポイントを2000円分貰ったので、明日県境を越える前に使い切らなければならない。予定通り最後尾をマイペ-スで進んでいるが、前を行く選手はガンガン飛ばし、とても同じ人間とは思えない。
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三浦酒店  ※前回も今回も店主のオバちゃんに良くしてもらった
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東北の夜は寒い  ※完全防寒の上、ホットコ-ヒ-で暖を取る
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最終行程の徹夜以外は全て宿を利用  ※だからこそ、野宿で進む選手の凄さが分かる


Day4(4/25)
由利本荘市〜山形県酒田市、62km(281km)

ル-トインの朝食バイキングを食べた後スタ-トを切る。今回の本州縦断は極力素泊まりとし、基本朝食バイキングは取らない方向で進めることにした。鳥海山を間近に望むこの区間は、R7ステ-ジのハイライトとも言えるだろう。白瀬南極探検隊記念館に思い切って寄り道してみる。南極の氷や石、南極点到達雪上車や道標など見所満載で、とても興味深く見学することが出来た。左に鳥海山を眺めながら、イタドリを摘み喰い。山形県境はタラノメの宝庫だった。今日も宿でのチェックインの際、受付女性に手土産としてタラノメを贈った。ここでも大変喜ばれたから、僕の山菜の知識も少しは人様の役に立ったという訳だ。観光での時間ロスが幸いし、その焦りから久々にランナ-らしく走れた。三度出ることはない本州縦断、だからこそ極力観光も盛り入れたいと思っている。
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白瀬南極探検隊記念館
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鳥海山
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靴下は一度も洗わなかった  ※穴が開き処分するまで3、4日履き続けた


Day5(4/26)
酒田市〜新潟県村上市勝木、61km(342km)

降水確率100%の雨予報。酒田以降延々と続く松林の区間が、単調過ぎて僕は好きではない。ようやく海へと抜け出し、またも寄り道した湯野浜温泉。源泉が45度もあるとはいざ知らず、勢いよく湯舟に脚を入れた瞬間、思わず悲鳴を上げ飛び跳ねてしまった。まるでダチョウ倶楽部や出川哲郎の熱湯風呂の罰ゲ-ム。水道の蛇口をひねり、その箇所でしか入れなかった。海沿いの景観に癒され、夜には新潟県入り。連日3時間半前後の睡眠で凌いでいるが、この日ついに睡魔がやってきた。雨、風、寒さ、脚の痛さも加わって、危うく心が折れそうになるとこだった。2年前、新潟県柏崎の地で僕はスペシャルを自ら諦めてしまう。再びその地に立つまでは、僕はまだスペシャルのスタ-ト地点にすら立っていない。諦めるのは一瞬、後悔は永遠・・。もうダメだと諦めそうになった時、この言葉を思い出したいと思う。明日香さん、武井選手、素敵な言葉を有難う!
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この松林区間が僕は大嫌い  ※単調過ぎて、店もない
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雨天時のコンビニは最大の避難所  ※雨対策としてはダブルカッパと折り畳み傘
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諦めるのは一瞬、後悔は永遠  ※早速この言葉に助けられた


Day6(4/27)
村上市勝木〜聖籠町、64km(406km)

笹川流れ。11km続く海岸に奇岩、岩礁や洞窟など、変化に富んだ風景が広がり、国の名勝天然記念物となっている。日本海側を辿るこの大会において晴れた日の海沿いは最高に心地良く、この区間の景観は特に素晴らしい。しかし猛烈な睡魔が徐々に僕を襲い、今大会で初めての仮眠を取ることに。仮眠とは言え時間のロスが痛いので、腕時計で5分タイマ-をかけ、最低限に留めている。旭橋CP手前のコンビニで前回大会を共に闘った川上(いちあし)選手の弟さんが出迎えてくれた。夜は新発田在住の友人が応援に駆け付けてくれ、交通量の多い車道に辟易しながらも、色々と話も出来たし楽しい道中となった。先程日没後に夜間装備に切り替えた際、J1クリ-ム(足裏、指の水膨れ予防)をどこかに置き忘れてきたことに気付く。前回大会が足の水膨れで散々苦しめられただけに、この先が心配になる。
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笹川流れ
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前回大会仲間の川上選手の弟が、兄の命を受け応援に来てくれた
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新発田在住の高澤さんも仕事後駆け付けてくれた  ※彼も数日後R8ステ-ジに参加


Day7(4/28)
聖籠町〜長岡市野積、69km(475km)

新潟駅にて先ずはR7ステ-ジ終了。この大会は本州縦断ステ-ジの他に、各区間毎に分けたR7(青森~新潟、433km)、R8(新潟~舞鶴、535km)、R9(舞鶴~下関、582km)の各ステ-ジがあり、更には本州縦断往復(青森~下関~青森、3100km)という極限のステ-ジまで用意されている。新潟と言えば、ご当地グルメの代表格”バスセンタ-のカレ-”が外せない。しかしここで満腹になったのがいけなかったのか、その後しばらく睡魔との闘いが続いた。やはりランニングに満腹は厳禁で、少し空腹位が丁度良い。午前と午後、比較的走れる時間帯があったことは今後に向けての好材料だった。しかしすんなり1日は終わらない。夜になり強烈極まる過去最高クラスの睡魔に襲われ、幻覚、意識朦朧、フラフラ蛇行歩きで生きている気がしなかった。ここまで前回大会と同じ行程で来ているが、この夜の試練を乗り越えたことで、ようやくリベンジの舞台に立つことが出来た。僕のスペシャルはここからが本番。今日の試練をも上回る幾多の苦難を乗り越え、決して諦めることなく、しぶとく喰らい付いていきたいと思う。これから始まる本当の地獄を乗り越える為だけに、僕は遥々ここへと戻ってきた。
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バスセンタ-のカレ-(大盛り650円)  ※早くて安くて美味い、その上多い
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意識朦朧とし、かなりヤバい状態だった
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お宿まつや  ※前回大会、僕はこの宿を最後にスペシャルを断念してしまった。1000円夕食が有り難い


Day8(4/29)
長岡市野積〜柏崎市鯨波、51km(526km)

心身を一度リセットする為、今日は最短距離の休養日とした。出雲崎で出会った台湾人自転車マンとの出会いも良い思い出となった。道の駅で”うに・ほたて入りいかめし(1520円)”とエチゴビ-ルを購入。普段こんな贅沢はしないが、宿で新潟ポイントを貰った為、使えるうちに使っておいた。昨夜泊まった宿の若女将は朝食用に愛情おにぎりを2つ握ってくれた。短い滞在だったが本当に良くしてもらい感謝しかない。レ-ス中は毎日フェイスブックの投稿を挙げており、これは僕の眠気対策の一環となっている。少なくても文章を考えている間は頭がフル回転で働き、脳が活性化し眠くならない。その証拠に投稿を終えると直ぐに睡魔に襲われ、敢え無くバス小屋での5分仮眠に至る。明日は因縁の糸魚川。2年前の前回大会、僕はその地でふくらはぎの肉離れを起こし、以降下関のゴ-ル迄歩き通す羽目に遭った。今日はゲストハウス泊なので共同キッチンくらいあるだろうと見込み、やや伸び気味だったが道中タラノメを採っていた。チェックイン後、早速キッチンでタラノメを調理し、ソテ-にして美味しく頂いた。
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台湾人の自転車マン  ※福岡から札幌を目指している60歳の男性
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ドミトリ-ル-ム(ハチの寝床)  ※他に客はおらず貸し切り
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道中採取したタラノメをソテ-にして食す(左下)


Day9(4/30)
柏崎市鯨波〜糸魚川市、74km(600km)

雨対策万全の装備で3時40分に宿を発つ。上越市街を抜けた先のカニ直販店では紅ズワイガニが1杯550円で売られていた。余程食べようかと思ったが、時間を惜しみここは泣く泣く断念。糸魚川まで続く自転車歩行者道は旧鉄道敷を利用したもの。午後からは強風となったが、19時間40分かけて何とか因縁の糸魚川に到着した。さすがは糸魚川、難易度が高い。とにかく僕はペ-スが遅く、宿到着はいつも深夜になり、睡眠時間は自ずと短くなってくる。早速負のスパイラル状態に陥っている訳だが、この夜の睡魔も中々の強者だった。昨日から右足のアキレス腱と足首付け根が痛むのが今一番の心配事。名古屋から古い友人が電車に乗って遥々応援に駆け付けてくれた。いよいよ日本一長い鬼ごっこが始まる。追われる者は僕、No.11中畑。追いかける者は日本最強ランナーNo.2倉井カトルス選手。その差は実に600km。普通なら絶対に追い着かれることなんて有り得ない距離差。そんな彼は専属カメラマン兼サポ-ト役のマ-君を引き連れ、5/1の0時に青森駅をスタ-トする。連日125kmのハイペ-スで猛追してくるらしいから、計算上島根県であっさり捕まってしまう。
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紅ズワイガニ(1杯550円より)  ※余程食べようかと思ったが、時間がかかりそうなので断念
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この日見た夕陽のことを僕は一生忘れないだろう
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名古屋から遥々駆け付けてくれた森君とシゲさん  ※二人とも、本当に有難う!


Day10(5/1)
糸魚川市〜富山県富山市、63km(665km)

3時間睡眠で宿を発ち、急ぎ脚で青海駅へ。発車2分前の便に間に合い、待ち時間無しで市振駅へとワ-プ出来た。親不知を挟むこの区間は走行が危険な為、ル-ル上通行が禁止され、乗り物移動が強いられている。飛騨人にとっての富山は半分地元のようなもの。地元に帰って来たなと自ずと気分も高まり、この日は終始快調に走れた。入善で友人の応援を受け、J1クリ-ムを頂く。その後魚津で再びその友人と合流し、結局富山中心部の宿近くまで僕を導いてくれた。この友人とは昨年の本州横断ゼロフジゼロ(日本海~富士山頂~太平洋、317km)で知り合った間柄。彼は富士山頂マラニックを連覇した健脚の持ち主でもある。色々と話が出来たし、引っ張ってもらえたし、おかげで予定よりかなり早く宿に着くことが出来た。豚道場(二郎系)では登場したラ-メンに今大会一番の衝撃を受け、上に載っている野菜だけで力尽きた。店主に厳しく叱られ、逃げるように外へ。友人に奢って貰ったのにホント申し訳ない。今日はほぼ走れたし、とても楽しい一日だった。風が強く、首の日除けを知らぬ間にどこかに落としてしまった。
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青海駅  ※ここから市振駅間は走行禁止につき、乗り物移動がル-ル上の規定
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ランニング風景  ※暑くなったり、肌寒かったり体温調整が難しい
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麺屋豚道場の小豚ラ-メン(1100円)  ※『全増し、野菜だけ増し増し』とコ-ル。その量に驚く阪田さん


Day11(5/2)
富山市〜石川県白山市、75km(740km)

ここ毎週通っていた富山城を通過し、石川県境を目指す。今日はとにかく暑い一日で、ガリガリ君が最高に美味しかった。丁度時を同じくして関東の友人が川の道フットレ-ス513kmに初参戦しており、互いにメッセ-ジを交わし励まし合っていた。甲斐あってその友人は初挑戦で難易度の高いこのレ-スを見事完走。本当に良く頑張った、おめでとう!と是非伝えたい。日中は睡魔との闘いだったが、5分仮眠二度で凌げた。ここまで計画通り進んでおり、確実に時間内完走出来るように亀の如く進んでいる。ようやく身体はこの過酷な生活サイクルに順応してきたようで、疲れは当初ほど感じなくなってきた。前回大会で倉井選手が僕に軽く放った一言が未だに心に深く刻まれている。疲れは想定していないが、睡魔だけが厄介だ・・。この言葉を初めて聞いた時の衝撃は鮮烈だったが、今となれば実に的を得た表現だと思えるし、何なら僕の言葉としてパクリたい。石川県境の天田峠は山ウドの宝庫だった。
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日本一たい焼き 富山高岡店
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バス小屋で仮眠  ※目が完全に死んでいる
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前田利家公之像  ※夜の金沢城は綺麗だった


Day12(5/3)
白山市〜福井県福井市、70km(810km)

朝食バイキングを腹一杯食べ宿を発つ。霊峰白山をバックに北陸新幹線が颯爽と通過する。No.8小島選手とは頻繁にメッセ-ジを送り合っており、ここで僕お気に入りの津軽海峡冬景色(アンジェラ・アキ)の歌を白山の風景と共に送った。少し寄り道して、松井秀喜ベ-スボ-ルミュ-ジアムに向かう。ここが訪れて正解だった。氏が受賞した栄光の数々の品々も大変貴重だが、僕はここで心に残る名言を得ることになる。悔しさはそれに耐えられる人間にしか与えられない・・by松井秀喜。前回僕は自分に負けて悔しい思いをした。そして薔薇の道と知りながら、自らの意思で再びこの地獄の舞台に戻ってきた。だからこそ絶対に全ての困難を耐え抜き、前回の自分を越えたいと思う。館内では松井秀喜氏より僕の方が目立ってたことは言うまでもない。日中の睡眠地獄に耐え、明るいうちに何とか牛ノ谷峠を越え福井県入り。夜が深まるにつれ過去最大級の睡魔に襲われ、意識朦朧、幻覚の嵐で、進む速度は時速2〜3km。目の前で楽しそうに向かい合うカップル。何度も幻覚を疑うも本物と確信。しかし近付いてみると、やはり幻覚で電柱2本だった。至る所で5分仮眠を繰り返すも、全く効果なし。4時間以上、睡魔に苦しめられた。ホテル迄は後数kmだが、最悪朝を迎える覚悟もした。この日の宿着は深夜2時前。今大会一の試練だった。
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松井秀喜ベ-スボ-ルミュ-ジアム
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寄り道してでも行く価値はある  ※心に響く名言に勇気付けられた
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宿までの数kmが遠い  ※睡魔限界、意識朦朧、立ち尽くし茫然、幻覚・・。今大会最大の修羅場だった


Day13(5/4)
福井市〜敦賀市、62km(872km)

メインル-トを外れたような脇道で日本一周中の自転車マンに出会った。きっと彼もグ-グル経路を頼りに進んでいる為、こんな場所で遭遇するに至ったのだろう。今日も適度な睡魔に襲われたが、質の良い二度の5分仮眠で凌ぐことが出来た。河川敷の大きな木の下での仮眠は、まるで1時間寝たかのような上等なものだった。やはり睡眠は時間より質の方が大事なのだと痛感。小島選手から、高品選手に追い付かれたとのメッセ-ジが写真とともに届いた。2人とも凄く良い表情をしており、スペシャルはこの一体感こそが何よりも魅力だなと感じた。これまでスペシャルに対して僕は『地獄』だとかネガティブな言葉しか思い浮かばなかったが、この写真を見て僕は感じた。スペシャルこそが極上の大人の遊びなんだと。敦賀へは推奨コ-スを離れ国道8号の最短コ-スで向かうことにした。海を望む絶景に心躍らせるも、核心は峠を下り海に出てからだった。歩道がない上に交通量が異様に多い。ここは素直に推奨コ-スの内陸部を通った方が確実に安全だろう。
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トンネル通過後の手は泥まみれ
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久々の海に心高ぶるも、下り切ってからが核心だった  ※敦賀への最短ル-トはお勧め出来ない
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夕食は大概カップ麺とサラダチキン、それとビ-ル


Day14(5/5)
敦賀市〜若狭高浜町、68km(940km)

敦賀から小浜へも推奨コ-スを外れる選択をした。とにかく距離を少しでも縮めたい一心だった。CPさえ繋いでいれば、走行禁止区間を除き、基本どこを通っても選手の自由。このR8区間ではル-トの取り方によってかなりの距離短縮が可能となる。ただグ-グル経路の示すル-トは高低差や安全性が考慮されておらず、初日の思わぬ峠など失敗したなと後悔する場面も多々あるので、そのへんの覚悟は必要だ。今日はスタ-ト直後から既に眠く、あまりにもフラフラして危ない為、苦し紛れに杖作戦(落ちていた木を杖代わりにする)を採り、多少は効果があった。5分仮眠も3度取ったが、草むらに仰向けになり1分、目の前に白い割烹着姿の御婦人が現れ、優しく微笑んできた。僕は堪え切れず涙を流し、次の瞬間それが夢だと気付いた。明日から始まる最終のR9ステ-ジは終始睡魔との闘いになりそうだ。
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秋に左腕を痛め、大会前接骨院の先生にテ-ピングでガチガチに固めてもらった  ※結局ゴ-ルまでそのまま
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棚田
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食費が嵩張るので、値引き品は迷わず購入  ※食べたい物を買うのではなく、安い物を買う


Day15(5/6)
高浜町〜京都府福知山市、69km(1009km)

今日は今後の展開を左右する大きな一日となった。松尾寺の激坂に大汗をかき、睡魔は午前、午後、夜間とほぼ一日を通して律儀に現れてくれた。西舞鶴駅にてR8ステ-ジを終了し、そのままR9ステ-ジへと突入。ここ西舞鶴駅で仲間一人が敢え無くリタイアとなった。僕の中で途中からずっと思い描いていたことがある。それは参加者12人全員の時間内完走。距離、制限時間においてこれだけ厳しい大会で、完走率が100%となればこれは語り継がれるべき偉業だろうと感じた。そしてこの偉業達成の鍵を握るのが最後尾を行く僕であることを自覚し、奮起の材料ともしていた。しかし予想もしない結末に。リタイアした選手には是非次回大会でリベンジしてほしい。今日は福知山駅前に宿を取った為、下夜久野駅をゴ-ルとし宿まではJR移動とした。日中の睡魔地獄が響き、終電に間に合うか危うかったが、仲間のFB投稿を見てスイッチオン。奇跡の快走の結果、終電の一本前にも間に合うことが出来た。先日来、下唇のひび割れが深刻で、唇は常に血まみれになっている。前回大会ではビタミン不足が原因だったので、以降それを教訓にビタミンの錠剤は摂るようにしている。でも出来てしまうこの症状。小島選手に相談したところ、どうやら日焼けらしい。そこで早速昨夜、閉店間際のドラッグストアに飛び込み塗り薬を購入した。
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青葉山  ※迫り来る青葉山がカッコいいが、この後山麗(松尾寺)への上りで地獄をみる
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スニッカ-ズ  ※小島選手に教わった眠気対策の一環。噛まずに舐める
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宿までJR利用  ※元の場所に戻れば乗り物利用は可。宿の無い区間では必須の戦略だが、ロス時間が響く


Day16(5/7)
福知山市〜兵庫県新温泉町(湯村温泉)、66km(1075km)

今日も降水確率100%の雨予報。昨夜ゴ-ルした夜久野駅までJRで戻りスタ-トを切る。JR利用は出来れば使いたくない手段ではある。JR利用だと先ず数少ない運行時刻に縛られる。それに伴う待ち時間、乗車しての移動時間、これらが意外と嵩張り、列車内で寝過ごしてしまったものなら致命傷となる。一瞬で寝落ち出来るこの状況下、充分有り得るだけにここは最大限の注意が必要だ。雨の睡魔ほど厄介なものはなく、晴天時のように草むらや道路に寝転がる訳にはいかない。更には夜の睡魔が強力で、この夜も時速2kmのゾンビ歩行を強いられた。対向車からしたら、危うくて仕方ないだろう。これまでがあまりにも走らなかったせいか、脚の温存効果が働き、昨日から不思議と走れている。それに筋肉疲労はほとんど感じなくなった。今日を無事乗り越えたことは、時間内完走に向けての大きな自信となった。宿到着は24時。都会のビジネスホテルならともかく、田舎の民宿や旅館のこの時間帯の到着は本当に申し訳ない。普通では絶対有り得ないチェックイン時刻であるはずが、どの宿も進み具合を気に掛けてくれ、深夜にも関わらず温かく迎え入れてくれる。深夜24時半、民宿の温泉に浸かりながら、ビ-ルとサラダチキンを味わい、浜省のナンバ-に黄昏た。
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雨の日のトンネルは天国だなと思っていたら、出口に本物の天使が現れた  ※山田さんチ-ムの皆さん
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夜の雨はかなり堪える  ※この日も中々の修羅場だった
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至福の一時  ※どれだけ疲れていても、湯舟に浸かって布団で寝れば翌朝完全復活


Day17(5/8)
新温泉町〜鳥取県鳥取市(浜村温泉)、57km(1132km)

朝スマホが充電出来ていないことに気付き、コネクタの警告表示を見て青ざめた。前回大会はガラケ-と未契約スマホのアナログ・デジタル半々体勢だったが、今回は完全なデジタル頼み。その為焦りも大きかったが、幸い昼前には復活したので救われた。予備の未契約機種も持ってきてはいるが、スマホの防水機能について見直す良い教訓となった。朝方雨がパラつくも、やがて快晴に。睡魔は確実にやってくるが、下手に逆らわず、眠くなったら早めの仮眠を心がけるようにした。本州縦断コ-ス上、唯一の観光名所とも言えるのが、鳥取砂丘。時間もないので奥までは行けないが、それでも充分観光した気には浸れた。今日の宿泊地となる浜村温泉を通過し、この日はその先の青谷駅で終了。JRで湯村温泉へと戻る。宿は前回と同じ1軒しかない大型ホテル。連日3時間~4時間睡眠で17時間行動をしている為、疲労は確実に蓄積し、深夜椅子に座りペヤングのカップ焼きそばを食べていた際、容器を持ったまま寝てしまい、焼きそばを落としてしまう始末。食べながら寝てしまったのは初めてのことで、これが今の体の状態を示している。しかし睡眠不足以外はまだまだ元気で、脚は日に日に調子良くなっている。
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鳥取砂丘  ※観光名所でここだけがCP(チェックポイント)となっている
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コナン列車  ※全面にコナンが描かれ存在感抜群
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食べながら寝落ち  ※腕時計のアラ-ム設定中に寝落ちなど、寝落ちVer.は多様


Day18(5/9)
鳥取市(浜村温泉)〜米子市、70km(1202km)

毎日必ず睡魔のピ-クが数度来るが、睡魔との付き合い方が少しずつ分かってきた気がする。ただ最近タイマ-の音に気付かないことが何度かあり、これはヤバいなと今日の仮眠は腕時計タイマ-の他、予備にスマホのアラ-ムもかけて万全の仮眠とした。しかしそれでも結局10分寝過ごしてしまった訳だから、睡眠不足もいよいよ深刻だ。今日のゴ-ルデンタイムは太陽が強い陽射しを放す15時から日が暮れる19時迄。前回大会では気が沈むネガティブタイムしかなかったが、今回は気持ち的にも少し余裕が出来たからか、たまにふと絶好調のゴ-ルデンタイムが訪れる。左に中国地方最高峰の大山(だいせん)、右に日本海を眺めながらの気持ち良いランニング。昨夜宿で貰った鳥取ク-ポン2000円分で、あごカツカレ-バ-ガ-、あごちくわ、大山カフェオレ、大山牛乳モナカを買った。その先しばらく使える店がなくて焦ったが、宿近くの居酒屋が使え、夕食に牛骨ラ-メン(及び替え玉)を食べ無事消費。その後宿にチェックインしたら、ここでも鳥取ク-ポン2000円分を貰った。明日は早々に鳥取県を出てしまう為、ク-ポンは今使い切ってしまわなければ紙屑となる。再度居酒屋に出向き、お好み焼き、鶏なんこつ唐揚げ、生ビ-ル2杯で無事消費。今日こそは早く寝れると思ったのに、嬉しい誤算だった。
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琴浦あごカツカレ-バ-ガ-  ※『あご』とは『トビウオ』のこと。全国第4位のバ-ガ-
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大山  ※前回は全く見えなかっただけに感激
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水田に映るプロペラと夕陽
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宿近くの居酒屋でク-ポン消費  ※次回以降はこんな特典はないだろう


Day19(5/10)
米子市〜島根県出雲市、62km(1264km)

昨夜泊まった米子のユニバ-サルホテルはかなりお勧めだ。宿泊料が安い上に、夕食(20時迄なので食べれなかった)と朝食バイキングが付き、今回は鳥取ク-ポン2000円分まで貰えたので、実質宿泊代はかかっていないに等しい。今日は早々に島根県入りしたものの、その後のル-トミスにより数km遠回りしてしまう失態。今日も終日睡魔との闘いで、夜半は時速2kmのゾンビ状態だった。出雲市中心部に入り『下関』を記した道路標識が初めて現れ、ゴ-ルを確信。ここまで来ればもう終わったも同然で、後はその距離を詰めていくだけの単純作業となる。前回大会で初めて下関の文字を見た時は全身鳥肌が立ったが、さすがに2回目となる今回は平常心でこの場面を迎えた。ゴ-ルが現実味を帯びてきたこの辺りから、これまで抱いていた感情とは全く異なる思いが、心の奥底から湧き上がってくる。もう終わってしまうのか・・。大変だったけど充実していた日々、ともに闘ってきた仲間との別れ・・。下関へのカウントダウンが始まり、切なさにも似た寂しさが心の中に宿ってくる。
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ホテルの朝食バイキング  ※宿スタ-トが遅くなる為、今回は極力避けていた
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島根・鳥取県境碑  ※前回は見落としたが、国道沿い(進行方向右歩道)にあった
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下関が初めて現れる  ※ここまで来れば、もう終わったも同然だ


Day20(5/11)
出雲市〜江津市、72km(1336km)

今日も確実に睡魔はきたが、早めの仮眠で上手く凌げた。毎日睡魔のことしか書いていないが、この大会はそれ程睡魔の占める割合が高く、『本州縦断スペシャル=睡魔との闘い』の構図は経験者なら誰もが納得するだろう。夜暗闇の峠道で、青森に向けて北上中の中村選手(スペシャル優勝後、引き続き往復ステ-ジに突入)に遭遇。彼のFBからそろそろ会えるかなと、この日一番の楽しみとしていただけに、会えた時はとても嬉しかった。未だに走り続けようとするその姿に心から感動し、お陰で江津駅までの残り8kmは無難に走り切ることが出来た。毎夜睡魔に苦しんでいる夜の時間帯だが、やはり極力走り、睡魔に付け入る隙を与えないことが重要だと気付かされた。前回大会より3日早く江津駅CPに到着。既に目標は最終日5/15早朝のゴ-ルに定めている。
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秘儀、食べ歩き  ※行儀は悪いが、食べている間は眠くならず、苦せずして距離が稼げている
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世界遺産も悲しきスル-  ※とても寄り道している時間はない
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スペシャルを制し、引き続き往復ステ-ジに挑戦中の中村選手


Day21(5/12)
江津市〜益田市、60km(1396km)

今日は終日睡魔との闘いだった。本州縦断スペシャルはとにかく睡魔との闘いであり、脚の筋肉疲労などは既に問題視していない。この日撮った写真は寝ている写真が多いが、おそらく今大会で最も仮眠の回数が多かったのだと思う。歩道のない道路を進むに際し、右側通行だけにこだわってはいないが、護身上右車線を進むことが多い。夜間など睡魔の酷い時は真っ直ぐ歩くことが困難で、対面から迫り来る車を見る余裕すらなく、ただ白線だけに視線を落とし、白線から外れないことだけに集中する。白線上を進んだ上で対向車に轢かれたものなら、それまでの人生だと割り切っている。とにかく前に進むことが最優先で、とても命乞いなどしてられない。本日小島選手が下関駅にゴ-ルしたので、コ-ス上には倉井選手(5/1スタ-ト)を除き、実質僕一人となった。前回大会、僕はこの益田CP到達をもって、スペシャルをタイムアップとなってしまった。それに比べ今回はまだ3日残っているが、制限時間を丸々使おうとするつもりはなく、先行した仲間に少しでも近付けるよう、1分でもタイムを縮めれるよう、最後まで全力を尽くそうと思っている。
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国府小学校5年生の作品  ※さすが国府小学校
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TRロケットの胸ポケットは伸縮自在で利用価値大
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晴れの日はどこでも寝れる  ※通報されないよう、一応場所は選ぶ


Day22(5/13)
益田市〜山口県山口市(渡川駅)、59km(1455km)

降水確率100%の雨予報。昨夜宿で貰った島根ポイント2000円分を、朝一のコンビニで全消費。今日は山口県に抜けてしまう為紙屑になる可能性も高かったが、宿近くのコンビニが運良く使えたので助かった。道の駅のやきとり屋台でしし肉やネギ間を味わいつつ、店主らと雑談。日中はほぼ睡魔との格闘だったが、津和野を経て無事山口県へと最後の県境越え。雨の日は仮眠出来る場所が限られるので、バス小屋を見つけたら早めの仮眠を心がけた。坂道を下り切りしばらく進んだ先で、ふと思わぬ声援を受けた。そこに待ち構えていたのは、前日ゴ-ルを果たした最強ランナ-倉井選手。自身だけ5/1スタ-トと、一斉スタ-トより9日遅れてのスタ-トながら、初日160km、2日目以降連日125kmと異次元の激走で300時間を切り、自らの持つコ-スレコ-ドを更新。引き続き太平洋周りで青森を目指す。そんなお疲れの道中での応援は涙が出る程嬉しかった。最終列車の時刻を意識しながら進み、結局この日は渡川駅で終了。JRで津和野へと戻り、宿泊。いよいよラスト100kmを切った。
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島根ポイントで爆買い  ※大変有り難い全国旅行支援のポイントだが、貰えない宿も多かった
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しし肉(道の駅シルクウェイにちはら)  ※歯応えがあって美味しかった
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城下町 津和野  ※町を囲う川の形、町の色合いがトレド(スペイン)に似ていると思った
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自身が持つコ-スレコ-ドを更新したス-パ-ランナ-倉井選手


Day23(5/14)、24(5/15)
山口市(渡川駅)〜下関駅、95km(1550km)

夜を徹しての最終行程が始まった。先にゴ-ルした選手達は、このオ-バ-ナイトという荒業を当たり前のようにこなしている。山口市内手前で見かけた100円温泉に立ち寄ってみたが、中々良い温泉だった。夜半思うように進めなかったが、前回のように雨が降っていないだけ恵まれている。明け方下関市に入るも、そこからが遠い。目標の23日切りとなる10時迄のゴ-ルを目指す。前回はこの区間、睡魔でほぼ身動きが取れなかったが、今回は別にもう一つ目標を定めていたおかげか、アドレナリンは終始全開だった。当初から狙っていた、関門海峡越え。下関を背にし、あえて九州の地に足を落とす。そこでのナレ-ションも頭の中で練りながら、実際口に出したりして練習した。時間に追われながらも無事九州到達も果たし、何とか9時半には下関駅にゴ~ル!早朝のゴ-ルを予定していたが、それだと人道トンネルは閉まっていたから結果オ-ライということで。誰かにゴ-ル写真を撮ってもらおうと声を掛けた相手が、偶然雨宮選手(前日往復をゴ-ル)だったのも何かの運命だろう。本州縦断スペシャル・・。これ以上辛い大会は他にないと思うが、これ以上挑戦し甲斐がある大会もないだろうと思う。
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宮野温泉(山口ふれあい館)  ※ヌルヌルした泉質も良く、100円で入れるのが嬉しい
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CP35長谷交差点(1489km)先のコスモスにて  ※行動中ビ-ルを飲んだのはこの時だけ
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ラスト、フル1本


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下関市  ※ここからが遠く、まだ21kmある。しかし別事情によりアドレナリン全開で眠気はなし

九州の地より贈るメッセ-ジ

本州縦断フィナ-レ
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ゴ-ルの下関駅に到着!  ※目標の23日を30分切ることが出来た


本州縦断中、アンジェラ・アキの歌をほぼ一日中聴いていた。もともと彼女が好きだった訳ではないが、テンションを高める為石川さゆりの『津軽海峡冬景色』を聴いているうちに、いつしかアンジェラ・アキの『津軽海峡冬景色』に移っていた。大会前日は最果て青森の地で小島選手と津軽海峡冬景色記念碑の前で合流し、大会中はアンジェラ・アキのこの『津軽海峡冬景色』の歌を、どの町でも大音響で流し、酔いしれるように聴いていた(少し恥ずかしかったが)。その曲を聴けば、あの時の情景が思い浮かぶ。僕の本州縦断2023はアンジェラ・アキの楽曲とともにあった。





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| 本州縦断レ-ス2023 | 21:50 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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地獄再び

いよいよ出発前夜を迎えた。何故高いお金をかけてまで、わざわざそんな辛い思いをするのか・・。それは自分でもよく分からない。しかしスペシャル2023年大会が開催されると発表されてから、僕の中では参加する以外選択肢はなかった。前回の2021年大会。言葉では到底言い表せないくらい、散々たる辛い思いをした。逃げ場のない生き地獄。この大会を形容するに、これ以上適した表現はないだろう。期間中毎日が地獄の連続で、例え今日を凌いだとしても、明日も明後日も、その先も延々とこの地獄が待っている。そう思うと、体力以上に精神状態が限界まで追いやられた。何があっても自分からは絶対にやめない覚悟でいたので、『誰か俺を轢き殺してくれ!』と、不可抗力によるジエンドを弱い心が望んでいた。しかし僅かに残っていた強い意思だけが、僕を前へと突き動かした。距離が長い為、ケガや故障は当たり前で、誰もが致命的な故障を抱えつつも必死に前だけを向いている。

前回大会には全国から集まった14名の精鋭が参加した。僕以外皆実績のある選りすぐりの選手ばかりだったが、そんな彼らからしても、相当な覚悟でこの大会に挑んでいた。そして今回の大会に参加する選手は12名。そしてその中で、前回参加者が8名を占める。これはかなりのリピ-ト率だと言える。前回大会の完走者には、ゴ-ル順に永久ナンバ-が与えられた。国内最強を誇る子連れバキ-マン、No.2倉井選手。ディズニ-好きの心優しきメリ-さん、No.3濱田選手。無限の可能性を秘めた優勝候補筆頭の男娘、No.5中村選手。謎多きさすらいの最強キャンパ-、No.6高品選手。情熱は誰にも負けないサウナ番長こと熱波師の、No.7武井選手。カニの被り物で全国に笑いと勇気を届ける、No.8小島選手。いぶし銀の魂で再びこの地へと戻ってきた、No.9松本選手。そして僕(No.11)中畑は、旅人代表として今回も参加する。以上永久ナンバ-取得者に加え、新たな4名の勇者を交え、2023スペシャルは2日後に開幕する。
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参加者名簿  ※画像クリックで拡大

とは言え、体調は前回大会にも増して宜しくない。秋までは順調に練習も重ねていたが、10月末に左脚を痛め、これが長引き2月まではほとんど走れなかった。時を同じくして左腕がじわじわと痛み出し、今ではこれが一番の悩みの種となっている。秋以降、接骨院には事あるごとに通っているが、先週金曜日に某新聞社の取材を受けていた際、雑談の中で記者の方に鍼灸(しんきゅう)院を紹介してもらった。今週に入り早速月曜日に鍼(はり)治療を始め、火曜日は接骨院と歯科医院、水曜日は再び鍼灸院、そして本日木曜日は最後に接骨院に通い、いよいよ明日の飛行機に乗る。鍼灸院の先生曰く、背骨がかなり曲がっていたとの事で、昨日は首筋を中心に頭から足首まで全身くまなく鍼を打ってもらった。長らくお世話になっている接骨院の先生は今日の帰り際、コ-ルドスプレ-と痛み止めのクリ-ムゲル剤を餞別代りに持たせてくれた。
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岐阜新聞(2023.4.20)  ※画像クリックで拡大

大会が近付くにつれ、猛烈な恐怖心が日に日に増していた。自ら申し込んだとは言え、再びあの地獄の舞台に戻るのかと思うと、毎日が憂鬱でしかなかった。しかし大会が数日後に迫り、今では完全に開き直っている。何より仲間に会えるのがとても楽しみで、再び最高の舞台で一緒に闘えることをとても光栄に思う。前回から計画は大幅に見直し、制限時間(23日半)内でゴ-ル出来るよう、亀戦法で一歩一歩着実に進む。毎日やめたいと思うだろうし、毎日死にたいと思うだろう。しかしそんな時、ともに闘っている11名の仲間の顔を思い出したい。僕は一人じゃないんだ・・。何があっても絶対に最後まで諦めない。這ってでも必ずゴ-ルに辿り着く。僕が大切にしているその精神を胸に、今回もまた命を懸けて挑んでくる。
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ゼッケン(裏)

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| 本州縦断レ-ス2023 | 19:40 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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