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日本屈指の大絶景!~双六から望む槍ヶ岳

南米パタゴニアのフィッツロイ、イタリア・ドロミテの山塊群・・。世界には息を飲む程の山岳景観が幾つも存在する。そしてこれら大絶景の最大要素として、やはり非現実離れした刺々しさが外せない。そして飛騨山脈(北ア)南部に位置するのが、日本を代表する鋭鋒、槍ヶ岳(やりがたけ)。山が好きな者なら誰もが一度は登りたいと憧れ、登山をしない人でも名前くらいは聞いたことがあるはずだ。そしてその槍ヶ岳を望む絶好の場所が、この双六岳(岐阜県高山市、長野県大町市)なのだろうと思う。天を突き刺すかのような槍ヶ岳の見事な三角錐。その両翼には北鎌尾根と槍穂高稜線といった日本屈指の両尾根が、贅沢にも左右に備わっている。
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双六岳から望む槍ヶ岳  ※画像クリックで拡大

令和4年10月15日(土)。次男(第6子)大志と山に登るのは、小1時の焼岳以来3年ぶりとなる。その間僕は年に数回ロング山行を行っているが、普段はランニングシュ-ズばかりなので、こうして本格的登山靴を履くこと自体が実に3年ぶり。附随して重荷を背負っての登山も同様となる。闇夜の左俣林道を抜け、小池新道へと入る。やがて秩父沢手前で夜が明けた。暗闇は不安で心細いが、暗い時間帯にどれだけ進んでいるかが後々重要となってくる。鏡平へと早々と登り詰め、そこから少しの辛抱で弓折乗越。この稜線までがこの登山の核心で、後はご褒美みたいなもの。この先絶景を楽しみながらルンルン気分で縦走を楽しめるはずが、子供の大志からすれば別に景色はどうでもよく、一刻も早くこの苦行を終えたい一心のようだった。
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シシウドケ原  ※正面右手に焼岳や乗鞍岳が見える
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鏡池に映る槍穂稜線
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鏡平山荘の自販機(画像クリックで拡大)  ※ビ-ル600円、ペットボトル500円

稜線到着
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奥から手前に、槍穂高連峰、中崎尾根・奥丸山(右端)、鏡平山荘
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槍穂を常に右に従え

多少のアップダウンを繰り返した末、目差す双六岳が目の前に見えてきた。その鞍部には双六小屋が建ち、背後には威圧感を放す鷲羽岳、その奥には黒光りした水晶岳が見えている。双六小屋の水場で喉を潤し、いざ双六山頂へと向かう。しかしここで大志が初めて弱音を吐いた。ここから始まる登りが、大志の目には絶望的な登りに映ったようだ。重い腰を中々上げない大志を置き去りにし、僕一人先に登りへと取り付く。ただ実際ここの登りは全く大したことはなく、来週予定している笠新道の方が余程きつい。何度も励ましながら、何とか巻道分岐に辿り着く。しかしこの先、更に長い登りが待っている。そのことは敢えて伝えていないが、僕の内心を察したのかとうとう泣きが入り、大志は帰ると言い出した。
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双六岳(左)と鷲羽岳(右)
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双六小屋
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巻道分岐で終に限界か

しかし折角ここまで来て、やめることは絶対有り得ない。泣こうが、わめこうが僕は例え力付くでも山頂に連れていく。途中でやめて得られるものは、後悔以外何もない。座って動こうとしない大志を余所に、居合わせた登山者2人と少し山談議を交わす。1人は年配女性の単独行。そしてもう1人はこの後下山を共にすることになるベッカム君。僕ら3人の会話が余程楽しかったのか、大志は少しずつ元気を取り戻してくれた。先程までの泣きが嘘のように、颯爽と岩場を越え、先へ先へと進んでいく。体力の限界なんてものは、所詮気力さえあれば簡単に越えることが出来る。あそこでやめておかなくてホント良かった・・。結局はそこに行き着く。
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何とか気持ちを立て直し、岩場を越える
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まさに絶景、ここは天国か  ※左から、水晶岳、鷲羽岳、薬師岳
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夢の世界か  ※左から、槍ヶ岳、大キレット、穂高連峰
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ただこの絶景、そう長くは持たない  ※予感的中、下山時槍穂は雲に包まれた

無事本日の目的地、双六岳(標高2860m)に到着。この界隈大概毎年来ているし、僕の場合双六は序盤の通過点でしかない。その為双六くらいたいしたことないと安易に考えていたが、後で気付いたが、双六日帰りの標準CTは笠日帰りよりも長かった。通りで子供には辛い訳だ。だけどこれで来週の笠ヶ岳は余裕だなと大志に同調を求めたが、今回が余程辛かったのか、あっさりと断られた。ちなみに長男・岳登(がくと)の体力気力は相当なものだった。大人の健脚者以上のタフぶりで、名前負けしない山好き。彼が小学生の時は、海外旅に出ている冬以外は、ほぼ毎週土日山に通っていた。山頂での至福の一時。僕は缶コ-ヒ-で大志はコ-ラ。お菓子や高級マンゴ-プリンを食べながら、目の前の絶景に酔いしれる。最高に贅沢な瞬間だ。山頂標柱の傍らに立つベッカム君のもとに寄り、槍ヶ岳を眺めながらふと僕は彼に尋ねた。

間もなく登頂
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双六岳(標高2860m)
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至福の一時
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黒部五郎岳  ※何年か前、笠五郎を目指し、結局笠鷲羽で終わった
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右から、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳  ※脚力さえあれば、赤牛日帰りも容易い
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薬師岳
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最後の登りで一緒になった単独行  ※山が好き過ぎて松本に移住した女性とベッカム君

僕)ところで、どこから来たのですか?
ベ)飛騨市です!
僕)飛騨市のどこですか?
ベ)古川です!
僕)古川のどこですか?
ベ)駅の近くです?
僕)どの辺りですか?
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日本屈指の大絶景!
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笠ヶ岳(右)は見る角度によって山容が大きく変わる

ここまで矢継ぎ早に質問を浴びせると、普通、『なんだコイツ・・』と怪しく思われるだろう。しかし真面目に答えてくれた心優しきベッカム君。僕の事務所が古川駅前にある旨を告げると、その質問攻めの意味を理解してくれ、一気に意気投合。たまたま山頂で居合わせ、話しかけた相手が何とご近所さんだった。この景色はどうせ長くは続かない、そろそろ帰路に発つとする。下山は自ずとベッカム君との3人ですることになった。先頭に僕、少し遅れて大志、そして大志を見守るようにベッカム君が最後尾につけてくれる。
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薬師を背に双六山頂での僕ら
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サ-ビス精神旺盛なベッカム君は、気を利かし何ポ-ズも撮ってくれた

これがしたかった
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さらば双六

槍穂稜線はやがて雲に隠れ、僕がベッカム君に言っていた通り、弓折から下る頃には完全に見えなくなっていた。鏡平山荘での休憩時、テラスのベンチで話している時、ベッカム君が元バックパッカ-だと知った。南米の話で大いに盛り上がり、この辺りから更に親近感が増した。ここが外国の日本人宿やドミならまだしも、まさか山中のこんな所で、かなりマニアックな内容の情報交換のような話が出来るとは夢にも思わなかった。その先も隊列は崩さず、大志を挟んで海外の話で終始ハイテンション。下りは大志も好調で、頭上を飛び交う僕らの会話にも力を貰ったのか、弱音を吐くことなく下山完了。ほぼ予定通り、無事山行を終えた。ベッカム君、今日は本当に有難う!大志にとってもこの出会いが、とても良い思い出となったようです。
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復路は終始ベッカム君と一緒だった
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橋が傾いているので、自己責任で通ってね  ※by 飛騨森林管理署
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新穂高登山センタ-
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ベッカム君、色々と有難う!  ※飛騨に移住してきた彼のアパ-トは僕の事務所の直ぐ近く
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ひらゆの森

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| '22山行記録 | 15:50 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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焼岳を味わい尽くせ(2)~硫黄卵

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2006年夏、長女(当時小3)らと  ※よく卵パックで割れなかったなと今思う
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2008年秋、穂乃花(当時小1)と  ※6個の内5個は娘に食べられた



・・前回の続き


込み合う北峰山頂でしばしの休憩を取る。予定より早く着くことが出来たし、今日は行程自体が長くないので、時間には比較的余裕がある。飛騨側に開けた斜面の下部に座り、正面に槍穂高、左手に飛騨の名峰笠ヶ岳を眺めながら昼食におにぎりを食べる。最近海苔は食べる時に巻くようにしているので、パリパリ感がこれまた堪らない。昨夜シマヤで買ってきた半額の唐揚げやポテチをつまみ、子供と至福の一時を過ごす。今日は雲が多いながらも眺望は良く、北ア南部の峰々を存分に楽しむことが出来た。しかし悲しくも乗鞍と笠と槍以外、あの山が何という山なのか、ある程度目星はつくものの、この時点で完全に断言出来るには至らなかった。
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火口湖と南峰  ※昔は普通に火口湖に下りていたが、今では公衆的に宜しくない
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焼岳噴火口  ※昔は覘いたりしていたが、今では『奴は馬鹿か!』と軽蔑される
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込み合う北峰山頂
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乗鞍剣ヶ峰(左)
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槍穂を前に束の間の一時
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おそらくこの位置は岐阜県側(高山市)
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双六岳(左)、水晶岳(中央奥)、鷲羽岳(右)
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野口五郎岳
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飛騨の稜線を一望
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穂高連峰
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槍穂高

横になって寛ぐ登山者もいる中、僕らももう少しゆっくり休んでいたかったが、この後噴煙地でも時間を割くことになる為、山頂を程々に切り上げ下山にかかる。無事肩まで下り、ここで新中の湯コ-スとは道を分けることになる。中尾峠を目指し、岩と砂地主体のガレ場に入る。右手が崖となっており、幾分注意が必要だ。僕やナナにとってはたいしたことのない斜面ではあるが、小1の大志にとっては充分怖いらしく、その要因がこの急勾配なのか、滑り易い砂地なのか、切り立った崖なのかは定かではない。所々尻を付け、超安全に下る大志。附随して時間ばかりがかかってしまい、時間の割には全然進んでいない。ナナも完全に呆れていたが、この異常なまでの用心深さは、もしかしたら大志も僕と同じ極度の高所恐怖症なのかもしれない。
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下山者多数
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立つんだ大志!  ※転んでるのではなく、怖いらしい

同じくペ-スの遅い男女ペアと何度か前後しながら、何とか噴煙地まで下りてきた。ザックを岩肌に下ろし、先程セットしておいた卵を回収する。やはり噴気は確実に弱くなっており、木の棒を使わなくても、素手で網を回収出来た。”噴気が弱い”ということは”火力に乏しい”ということになり、茹で上がり具合が心配だった。しかし大志のノロノロペ-スが幸いしたのか、いつものような完全なゆで卵に仕上がっていた。往路時にセットし、山頂を経てここまで2時間半。ここでの仕上がりは”ゆで卵”しか記憶にないが、果たして何分で取り上げればこの噴煙地で”温泉卵(白身とろり黄身半熟)”が出来るのだろうか。通りかかる登山者は誰しも僕らの卵が気になっていたようだ。子供二人はたいそう喜んで食べてくれたが、2つはあえて残し、まだ食べたことのない妻らの土産とした。以前はソ-セ-ジやキャベツなんかも茹でていたが、卵の殻のようなガ-ドがない為、これらはやらない方が無難だろう。
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どれどれ出来たかな
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噴気が弱いので心配だったが
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中々の茹で具合  ※昔はソ-セ-ジや野菜も茹でていたが、お勧め出来ない
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無事中尾峠まで下り、ここで上高地コ-スともお別れとなる。この中尾峠以降大志の脚取りは復活し、ようやく通常ペ-スで歩けるようになり、先程まで呆れ果てていたナナもここに来て安堵した表情を見せた。秀綱神社まで快調に下り、ここで休憩。休むにはまだ早いが、ここを逃すと休憩に適した場所がしばらくない。焼岳の余韻にふけりながらしばしの休憩を終え、いよいよラスト前の行程に入る。往路時は林道終点広場からここまで一気に来れたので、次の目的地は必然的に林道終点広場となる。”鍋助横手”や”ヒカリゴケ”、”白水の滝”と順に要所を通過。白水の滝まで来たら、目指す広場は直ぐだった。
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秀綱神社のイスとテ-ブルは
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快調な二人  ※子供の無駄話が面白かった
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サワラ  ※樹木名を記した看板がとても勉強になる

林道終点からは舗装された林道を下ろうかと当初思っていたが、かなり遠回りのような気もしたので、そのまま山道を直進。ここには”近道”と書かれた道標もある。大志とナナは中尾峠以降、二人でくだらない話ばかりしている。僕は最後尾でその話をニヤニヤ聞いている訳だが、話の内容はゲ-ムやアニメがほとんどで、いかにも子供らしいと思った。これが子供にとっての世間話なのだろう。2週間前の常念の時は僕と大志だけだった為、実に静かなものだったが、今日は大志に話相手がいた為か、下山時大志の口から弱音は一切出なかった。沢の音が聞こえ、やがて沢に出会う。冷たい沢水で顔を洗い、喉を潤す。ここはほぼ登山口なので、道中の水場としては頼れない。ゴ-ルとなる登山者駐車場に着くと、満杯とまではいかないが、そこそこの車が停まっていた。
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唯一の水場はほぼゴ-ル
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登山者駐車場

活火山焼岳を象徴する、硫黄臭。山頂に近付くにつれ、先ず匂いが鼻に入ってくる。やがて荒々しい噴煙が目に留まり、耳で蒸気の濁音を聞く。その蒸気で茹でた硫黄卵を口に入れ、その後、平湯温泉街で改めて本物の温泉卵を食す。そして締めは、ひらゆの森。この温泉には出来た当時から足しげく通っているが、何せこの温泉の匂いは、焼岳登山で味わう硫黄臭と全く同じだ。体全体で硫黄臭を徹底的に浴び、ようやくこれにて焼岳山行は完結。先程下山の際、擦れ違った軽トラの地元男性に登山道の状況を訊かれた。こういう地元の方々が登山道の草刈りなど手入れをしてくれるおかげで、僕ら登山者は気分良く山行を終えることが出来る。
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平湯温泉街で温泉卵  ※ナナは何故か黄身が嫌いらしい

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| '19山行記録 | 15:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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焼岳を味わい尽くせ(1)~絶景!

焼岳。これ程お手軽に登れて、且つ非現実的な気分に浸れる場所は他にないだろう。何よりあの強烈な硫黄臭が登山者の脳や感覚を麻痺させ、温泉好きには堪らなく応える。その上、眺望も抜群に良いときた。焼岳はおそらく僕がこれまで一番多く登った山であり、これまで20年以上で数え切れないほど登ってきた。我が子の初アルプスは大概この山だし、最近では僕は奥穂焼槍焼など北ア周回でこの山を帰路の峠として使っている。そんな使い勝手の良い”道”としての機能も有する焼岳ではあるが、焼岳登山の醍醐味は何と言っても、『嗅ぐ、食べる、浸かる』の三要素を全て堪能することだろう。そのうちどれか一つ欠けても焼岳を味わい尽くした気にはなれないし、そうなると必然的に中尾発着でないと目的は達成出来ない。硫黄臭を目、鼻、耳、口、そして体全体で浴びることこそが、本来の焼岳登山なんだと僕はいつも思っている。
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第2子岳登(当時小1)と第1子長女(当時小3)  ※2006年夏、中尾より
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第4子嶺花(当時年長)と第3子穂乃花(当時小2)  ※2009年秋、新中の湯より


【山域】焼岳北峰(2444m)
【日時】令和元年7月6日
【天候】晴れ
【岳人】大志(小1)、ナナ(小6)、僕


先週に続き、再び焼岳にやって来た。何せ登山口の中尾は同じ高山市内なので、市内のちょっと遠い所に行くような気軽な感覚ではある。本来ならランをからめた50㌔程度のロング山行をしたいところだが、未だ脚の調子が戻らない為、仕方なく子供連れのリハビリ山行とした。朝5時前に家を出て、1時間で中尾登山口に到着。準備を済ませ、予定通り6時にはスタ-トを切る。今回僕の相手をしてくれる大志(小1)とナナ(小6)はともに保育園年中の時に新中の湯登山口から日帰り山行しており、今回の山行の目的は登頂とは別にある。
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登山届を提出  ※第5子ナナ(小6)と第6子大志(小1)
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林道ゲ-ト  ※昔はこの手前に停めていた
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焼岳登山口
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白水の滝  ※落差45m

林道終点との合流広場で一度朝食休憩を取り、2限目に入る。そして火山標識の辺りで、ふいに僕の右脚が悲鳴を上げた。先月の飛騨高山で終えたウルトラ3連戦の故障(右脚ふくらはぎ肉離れ)がこの場に及んで再発したのだ。今日は大志のペ-スに合わせた緩々登山の予定だっただけに、全く予想外の事態だった。しかしここまでの子供の頑張りを思うと、引き返そうとは到底思えなかった。僕の脚はこの先どうなるのだろうか・・。痛む右脚を引きずるように歩く。スキ-ストック(山ストックはコスパが悪過ぎる為、僕は一切持たなくなった)がある分、脚の負担を幾分腕に分担させられてはいる。気のせいかもしれないが、右脚を意識した瞬間にいつも再発しているような感覚が若干気がかりだ。子供を二人連れてくると山行的には効率が良く、ナナの後ろを追うように大志はヘボなりにも頑張っている。休む適当な場所もなく、結局一気に秀綱神社へ。ここまで来ればもう峠は近い。
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焼岳は噴火警戒レベル1の活火山
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ヒカリゴケ  ※看板とは別の岩下で見つけた
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秀綱神社

意外とすんなりと峠まで来れた。これはナナが一緒に来てくれたことが一番の要因だ。当初第7子の一花を背負子で背負って連れて来ようと思っていたが、荷物の負担がナナ一人にかかる為、仕方なく一花は家に置いてきた。中尾峠まで登ると、正面に笠ヶ岳が望める。どの方角も雲がたなびいているが、雲は山頂部より下で流れている為、より神秘的な情景となっていた。焼岳と言えば、僕は真っ先にノアザミを思い出す。眺望がなくなることを恐れ、峠での休憩は程々に直ぐに山頂へと向かう。霞む行く手に北峰乏しき山頂部が見えた。ゴ-ルが見えている分ナナはポジティブに捉えることが出来るが、小1の大志にとってはまだその発想がない。まだあんなにも・・と言うネガティブな感情は、2週間前の常念乗越の時と重なる。
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中尾峠、焼岳小屋分岐
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ノアザミ
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中尾峠
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霞む山頂部
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笠の稜線
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中尾峠(手前)から中尾への下山路が左に延びている
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休み休み
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雲上の穂高連峰
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西穂~奥穂間は国内最難関の一般路  ※好き好んで行きたくはない
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北峰と火口

今日は大志の相手役がいるおかげで、僕は意外と自由にさせてもらっている。荷物を持たない身軽な子供二人に対して、水3.5㍑、おにぎり12個を含む結構な重さを背負った僕は、出だしから一人大汗を掻いている。高度を上げるにつれ槍穂の眺望は一層迫力を増す反面、いつ隠れてしまうか分からないという不安もあり、僕は写真撮影に余念がない。そして今日の目的地とも言える”噴煙地”に到着。僕は海外放浪時代(22~23歳)のネパ-ル(ポカラ)で山を知り、その後24歳で子供を授かったことを機に飛騨へと戻り、山登りを始めた。旅人が山にはまることは必然的なことであり、康介も確か同じ理由だ。地元(飛騨)にもこんなに山があったのか・・。一度飛騨を離れたからこそ知り得た衝撃の事実だった。その頃は中尾ばかりから登っていたので(たぶん新中の湯コ-スはなかった)、その都度この噴煙地で硫黄卵を作り楽しんでいた。しかしここ最近では新中の湯コ-スを使うことが多く、おそらく11年ぶりくらいの硫黄卵となる。早速噴煙口に卵をセットし、引き続き山頂を目指す。山頂を経て戻って来た頃が丁度食べ時、茹で上がった頃となる。
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噴煙地にて
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11年ぶりの登場
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卵セット完了  ※焼岳の蒸気は年々確実に弱まっている
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左から、槍ヶ岳、大喰岳、中岳
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笠ヶ岳(左)、抜戸岳(右)
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穂高連峰

前日までの天気予報は今一不安なものだったが、今朝自宅を出る前の予報では雨の心配は完全になくなっていた。僕のような地元民はその日の気分や天候次第で気軽にサクッと来れるので、わざわざ雨の日に登る必要など全くない。都会の人が休みを取り、高い交通費をかけてまでやって来る登山者あこがれの聖地に、僕ら飛騨人は全くお金を掛けずに来ることが出来る。この特権があるが故、僕は事前に日程を固めてしまうことはせず、天候ありきで山行を考えている。その為、融通の利く単独行か子供としか基本山に入らない。
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中尾コ-スは新中の湯コ-スに比べ行程は長いが、眺望は抜群
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滑落注意
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ガレ場が続く
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槍穂高を一望
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岩場
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イワカガミ
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稜線直下のお花畑

そしてようやく焼岳の北峰に立った。大志は2回目、ナナは3回目の登頂となる。中尾からの登山者は数人しかいなかったが、山頂は驚くほどの登山者で溢れかえっていた。焼岳は元々人気がある山だったが、年々登山者の数は確実に増えている気がする。先週は韓国人グル-プがいたが、今日は上高地からのガイドツア-だろうか欧米系の外国人パ-ティ-の姿があった。旅行ついでに登る山としては確かにこれ以上適した山はないだろうし、これに温泉でも絡めれば思い出作りとしては完璧だ。火山には不思議と魅力めいたものを感じるが、以前岳登と旅したフィリピン・レガスピのマヨン火山も僕の中では思い出深い。
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最後の岩場を越えたら
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焼岳北峰(標高2444m)  ※以前の標柱には確か”標高2393m”と書かれていたが・・


つづく・・

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常念岳(3)~お猿さんに迎えられ

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やったね、常念岳登頂だ!


・・前回の続き


ほぼ貸し切りの山頂に腰を下ろし、しばし休憩とする。昼食におにぎりを食べ、お菓子をつまむ。他に登頂者は入れ替わりに数人いる程度だった。アンテナを立て、FMラジオを流す。山の上で聴く音楽は贅沢な気分に浸れて好きだ(昔はよく山頂でハ-モニカを吹いていた)。先程まで残っていた槍穂高の眺望は、いつしか雲に隠れ既にない。今日は雨が降らないだけでも良しとしたいが、折角の常念でパノラマが望めないのは多少残念ではある。時間を管理する僕的には、山頂で1時間くらいゆっくり過ごしてもいいと思っていたが、大志の希望により、休憩も程々に早速下山へと向かった。
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山頂で昼食
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蝶ヶ岳方面  ※稜線で堰き止められる積雲

山頂直下の岩場は確かに急で、小さな子供には難しいようだった。大志は怖がり、直ぐに泣き出した。幸い泣きは直ぐに治まったが、尻を付け両手を駆使しないと安全には下りれなかった。その後は僕が先行することなく、大志の直ぐ後ろに付け、アドバイスを送りながらゆっくりと下らせた。結局山頂での早発ちも、大志が自ら便通を感じたからだったようだ。さすがにこんな植物の無い場所でキジ撃ちする訳にもいかず、漏れそうだとキバリながらも何とか堪え、無事テント場のトイレにて大志用を足す。相変らず誰一人いない寂しい乗越に別れを告げ、稜線を後に。
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下山開始
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常念山頂への稜線も境雲   ※山でよく見かける現象だが正式名は不明
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乗越を後に

もう登らなくてもいいんだ・・という安堵感からか、大志の足取りは実に軽かった。急な階段や岩場は子供の短い脚では、かなりの危険がつきまとう。転倒してハシゴの鉄柱や針金にぶつかったものなら、出血を伴う大怪我は免れない。ただ実際はそういう箇所では余程注意しているので意外と事故は起こらない。逆に一見何のことはないただの下りで転倒し、どこか痛めることが多いように思う。実際大志はこの山行中、幾度となく転び、全身痣だらけになっていた。
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ベンチでお菓子
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原生林
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イワカガミ

最終水場の先、先ず一つ目の雪渓下りが始まった。この雪渓二つが帰路の要所と身構えていたが、思った程危うくなく、大志一人でも問題なく下ることが出来た。胸突八丁を終え、再び雪渓に出る。こちらの方が急勾配な為、ここは大志の手を握り、隣で何度も転びかける大志の支えとなった。後にソリを持った下山者と擦れ違ったが、仮にソリで勢いよく滑れたとして、止まりたい場所で制止は効くのかなと疑問に思った。
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最終水場から雪渓を下る

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滑落注意の危険箇所  ※もちろん手を繋いで歩く
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胸突八丁を終え、再び雪渓

さすがは子供。登りは弱いが、下りは強い。この法則に大志もピタリ当てはまった。意外と弱音は吐かず、休憩もほとんど取らないまま、ひたすら下り続けた。その為僕のザックのお菓子はほとんど減っておらず、折角なので沢辺に荷物を下ろし、しばしお菓子タイム。こういう何気ない休憩の一コマも、後に大切なシ-ンとなって心に刻まれていくのだろう。ゴ-ルも差し迫った頃、大志が野生の猿を見つけた。猿は目がいいようで、僕がカメラを向けた瞬間、どこかへ飛び去ってしまった。プロトレックが示す標高のアップダウンは+100mを切り、ゴ-ルも間もなくと思われた。しかしここからが意外と遠く感じ、+-0に戻っても山行は尚も続いていた。DSC00873_convert_20190625170436.jpg
笠原沢
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猿の群れが現れた
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山の神様、今日一日有難うございました

後何分だ!と大志を励まし続け、終にヒエ平に到着。予想通り15時半には山行を終えることが出来た。よく頑張ったな大志、これはとても凄いことだぞ!姉のナナ(年長児)の時と比べ、1年大きいこともあり、時間にして3時間は早かった。車中泊宴会、山行、移動・・。その全てが大志にとってはとても新鮮で、終わってみれば全てが楽しかったようだ。次回はおそらく八ヶ岳にしようと思う。その際には是非、僕お勧めのシャトレ-ゼにも寄るつもりだ。
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日帰り完結

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常念岳(2)~遠かった山頂


・・前回の続き


ようやく登り上げた常念乗越の稜線だったが、写真を数枚撮っただけで、休むことなくそのまま山頂へと向かう。目の前に大きく立ちはだかる常念の山容に大志の闘志は失せかけているが、必死に最後の力を振り絞る。僕らの前後に登山者の姿はなく、朝からほぼ貸し切りの状態が続いている。右手に従えた槍穂高の稜線に励まされながら、しばらく頑張って登る。小屋から山頂までの標準コ-スタイムは1時間だが、実際そこまではかからないだろう。振り返ると小屋はもうあんなにも小さく見えている。途中、山頂からの下山者が点々と数人下りてきた。
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いざ山頂へ
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右手に槍穂高を従え
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振り返れば、常念小屋と横通岳
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尚も奮闘は続く
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大喰岳(左)、槍ヶ岳(右)
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鷲羽岳(左)、水晶岳(右)

先程まで調子よく登っていた大志だったが、僕が先行するといつしか後ろですすり泣いていた。後何mだ!と励ますが、一向に辿り着かない山頂に嫌気が差しているようだ。そして、終に山頂らしきシルエットを確認。人が立っているようにも見えるから、おそらく山頂で間違いないだろう。さぁラストだ!と最後の頑張りを促すが、子供の目にはこの距離さえも遠く感じていたようだ。後何分で山頂だ!と言葉を送り続け、ようやく最後の岩場へと張り付く。小さな両手を駆使しその岩場をよじ登り、その先で終に山頂を捉えた。大志、よく頑張ったな!ここが常念岳の山頂だ。もう登らなくていいんだ・・。大志にとっての登頂の感想はきっとそんなとこだろう。
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頑張れ、大志!
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頂上が見えたぞ
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岩場の先が
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常念岳(標高2857m)


つづく・・


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