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日本屈指の大絶景!~双六から望む槍ヶ岳

南米パタゴニアのフィッツロイ、イタリア・ドロミテの山塊群・・。世界には息を飲む程の山岳景観が幾つも存在する。そしてこれら大絶景の最大要素として、やはり非現実離れした刺々しさが外せない。そして飛騨山脈(北ア)南部に位置するのが、日本を代表する鋭鋒、槍ヶ岳(やりがたけ)。山が好きな者なら誰もが一度は登りたいと憧れ、登山をしない人でも名前くらいは聞いたことがあるはずだ。そしてその槍ヶ岳を望む絶好の場所が、この双六岳(岐阜県高山市、長野県大町市)なのだろうと思う。天を突き刺すかのような槍ヶ岳の見事な三角錐。その両翼には北鎌尾根と槍穂高稜線といった日本屈指の両尾根が、贅沢にも左右に備わっている。
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双六岳から望む槍ヶ岳  ※画像クリックで拡大

令和4年10月15日(土)。次男(第6子)大志と山に登るのは、小1時の焼岳以来3年ぶりとなる。その間僕は年に数回ロング山行を行っているが、普段はランニングシュ-ズばかりなので、こうして本格的登山靴を履くこと自体が実に3年ぶり。附随して重荷を背負っての登山も同様となる。闇夜の左俣林道を抜け、小池新道へと入る。やがて秩父沢手前で夜が明けた。暗闇は不安で心細いが、暗い時間帯にどれだけ進んでいるかが後々重要となってくる。鏡平へと早々と登り詰め、そこから少しの辛抱で弓折乗越。この稜線までがこの登山の核心で、後はご褒美みたいなもの。この先絶景を楽しみながらルンルン気分で縦走を楽しめるはずが、子供の大志からすれば別に景色はどうでもよく、一刻も早くこの苦行を終えたい一心のようだった。
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シシウドケ原  ※正面右手に焼岳や乗鞍岳が見える
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鏡池に映る槍穂稜線
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鏡平山荘の自販機(画像クリックで拡大)  ※ビ-ル600円、ペットボトル500円

稜線到着
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奥から手前に、槍穂高連峰、中崎尾根・奥丸山(右端)、鏡平山荘
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槍穂を常に右に従え

多少のアップダウンを繰り返した末、目差す双六岳が目の前に見えてきた。その鞍部には双六小屋が建ち、背後には威圧感を放す鷲羽岳、その奥には黒光りした水晶岳が見えている。双六小屋の水場で喉を潤し、いざ双六山頂へと向かう。しかしここで大志が初めて弱音を吐いた。ここから始まる登りが、大志の目には絶望的な登りに映ったようだ。重い腰を中々上げない大志を置き去りにし、僕一人先に登りへと取り付く。ただ実際ここの登りは全く大したことはなく、来週予定している笠新道の方が余程きつい。何度も励ましながら、何とか巻道分岐に辿り着く。しかしこの先、更に長い登りが待っている。そのことは敢えて伝えていないが、僕の内心を察したのかとうとう泣きが入り、大志は帰ると言い出した。
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双六岳(左)と鷲羽岳(右)
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双六小屋
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巻道分岐で終に限界か

しかし折角ここまで来て、やめることは絶対有り得ない。泣こうが、わめこうが僕は例え力付くでも山頂に連れていく。途中でやめて得られるものは、後悔以外何もない。座って動こうとしない大志を余所に、居合わせた登山者2人と少し山談議を交わす。1人は年配女性の単独行。そしてもう1人はこの後下山を共にすることになるベッカム君。僕ら3人の会話が余程楽しかったのか、大志は少しずつ元気を取り戻してくれた。先程までの泣きが嘘のように、颯爽と岩場を越え、先へ先へと進んでいく。体力の限界なんてものは、所詮気力さえあれば簡単に越えることが出来る。あそこでやめておかなくてホント良かった・・。結局はそこに行き着く。
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何とか気持ちを立て直し、岩場を越える
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まさに絶景、ここは天国か  ※左から、水晶岳、鷲羽岳、薬師岳
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夢の世界か  ※左から、槍ヶ岳、大キレット、穂高連峰
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ただこの絶景、そう長くは持たない  ※予感的中、下山時槍穂は雲に包まれた

無事本日の目的地、双六岳(標高2860m)に到着。この界隈大概毎年来ているし、僕の場合双六は序盤の通過点でしかない。その為双六くらいたいしたことないと安易に考えていたが、後で気付いたが、双六日帰りの標準CTは笠日帰りよりも長かった。通りで子供には辛い訳だ。だけどこれで来週の笠ヶ岳は余裕だなと大志に同調を求めたが、今回が余程辛かったのか、あっさりと断られた。ちなみに長男・岳登(がくと)の体力気力は相当なものだった。大人の健脚者以上のタフぶりで、名前負けしない山好き。彼が小学生の時は、海外旅に出ている冬以外は、ほぼ毎週土日山に通っていた。山頂での至福の一時。僕は缶コ-ヒ-で大志はコ-ラ。お菓子や高級マンゴ-プリンを食べながら、目の前の絶景に酔いしれる。最高に贅沢な瞬間だ。山頂標柱の傍らに立つベッカム君のもとに寄り、槍ヶ岳を眺めながらふと僕は彼に尋ねた。

間もなく登頂
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双六岳(標高2860m)
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至福の一時
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黒部五郎岳  ※何年か前、笠五郎を目指し、結局笠鷲羽で終わった
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右から、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳  ※脚力さえあれば、赤牛日帰りも容易い
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薬師岳
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最後の登りで一緒になった単独行  ※山が好き過ぎて松本に移住した女性とベッカム君

僕)ところで、どこから来たのですか?
ベ)飛騨市です!
僕)飛騨市のどこですか?
ベ)古川です!
僕)古川のどこですか?
ベ)駅の近くです?
僕)どの辺りですか?
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日本屈指の大絶景!
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笠ヶ岳(右)は見る角度によって山容が大きく変わる

ここまで矢継ぎ早に質問を浴びせると、普通、『なんだコイツ・・』と怪しく思われるだろう。しかし真面目に答えてくれた心優しきベッカム君。僕の事務所が古川駅前にある旨を告げると、その質問攻めの意味を理解してくれ、一気に意気投合。たまたま山頂で居合わせ、話しかけた相手が何とご近所さんだった。この景色はどうせ長くは続かない、そろそろ帰路に発つとする。下山は自ずとベッカム君との3人ですることになった。先頭に僕、少し遅れて大志、そして大志を見守るようにベッカム君が最後尾につけてくれる。
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薬師を背に双六山頂での僕ら
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サ-ビス精神旺盛なベッカム君は、気を利かし何ポ-ズも撮ってくれた

これがしたかった
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さらば双六

槍穂稜線はやがて雲に隠れ、僕がベッカム君に言っていた通り、弓折から下る頃には完全に見えなくなっていた。鏡平山荘での休憩時、テラスのベンチで話している時、ベッカム君が元バックパッカ-だと知った。南米の話で大いに盛り上がり、この辺りから更に親近感が増した。ここが外国の日本人宿やドミならまだしも、まさか山中のこんな所で、かなりマニアックな内容の情報交換のような話が出来るとは夢にも思わなかった。その先も隊列は崩さず、大志を挟んで海外の話で終始ハイテンション。下りは大志も好調で、頭上を飛び交う僕らの会話にも力を貰ったのか、弱音を吐くことなく下山完了。ほぼ予定通り、無事山行を終えた。ベッカム君、今日は本当に有難う!大志にとってもこの出会いが、とても良い思い出となったようです。
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復路は終始ベッカム君と一緒だった
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橋が傾いているので、自己責任で通ってね  ※by 飛騨森林管理署
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新穂高登山センタ-
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ベッカム君、色々と有難う!  ※飛騨に移住してきた彼のアパ-トは僕の事務所の直ぐ近く
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ひらゆの森

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